更新:2023/06/03

豊丘村のリニア対策員会、5月30日

6月1日(a) 5月30日夜、豊丘村のリニア対策員会が開かれ、JR東海は、豊丘村と喬木村にまたがる壬生沢川を渡る橋梁(長さ約470m、新聞は高架橋と書いています)や阿島トンネル(長さ約170m)や喬木村の阿島北地区の高架部分(長さ約430m)の工事の概要について説明したそうです。

 新聞によれば、JR東海の説明は:

(1)壬生沢川橋梁からの1070mの区間の着工時期については「『工事計画をまとめている段階。着工時期は未定』」(『南信州』)。地元への説明や、協議が続いているからとJR東海は説明しているようです(『信毎』)。

(2)豊丘村内のトンネル工事の進ちょくについては、戸中斜坑の先の本坑部分の掘削(2022年11月開始)は坂島方向に延長2.7㎞の約1割を掘削、坂島斜坑(2021年7月掘削開始)は延長1440mの5割と報告(『南信州』)。戸中から伊那山地トンネルの出口(西側)まで2.2㎞を掘る計画を、戸中からは1.5㎞とし、本坑口から0.7㎞掘削するよう計画を変更(『南信州』)。伊那山地トンネルの一番名古屋よりの2.2㎞は、最初はトンネル出口(名古屋方面の本坑口)から掘削の予定が、戸中側から本坑口まで2.2㎞を掘り下げる計画に変更。さらに、本坑口から0.7㎞、戸中側から1.5㎞に変更されました。壬生沢川や伊那山地トンネルの坑口付近の隣の谷に約52万㎥の残土処分地するという計画を、住民の反対運動で、JR東海が撤回せざるを得なかったということがありました。壬生沢川については、流路を変えるという工事もあり、土砂災害の危険性が高い地域での計画。地元の住民の理解を得るには格段の努力が必要なはずなのに江戸時代の殿様のような対応しかできないJR東海がこのあたりで工事を順調に進めることは絶望的に無理だろうと思います。

(3)豊丘村大柏の電力変換所(豊丘変電所、5.6ヘクタール、造成には14万㎥の残土使用)は9月から工事用道路の整備に着手、2026年9月末の完成を目指し、残土の搬入は2025年上半期からの予定(『中日』)。この電力変換所は傾斜地で盛り土造成をしますが、盛土の材料として要対策土が使われる可能性があります。計画地の下には農地があるので、住民のかなりの反発を受けるのは必至だと思います。

 さて、参考に環境影響評価書(資料編)の工事工程によれば、豊丘変電所は造成開始から完成まで11年、壬生沢川橋梁(高架橋)は基礎工事から完成まで6年かかることになっています。どちらも、それぞれ、2038年完成と、2029年以降に完成なので、2027年開業には間に合わないですね。もちろん、11年目まで「かかる」という意味ではなく、11年目も工事を「する可能性」があるという意味だと言われればそれまでです。

 しかし、南アルプストンネルの除山斜坑からの約7㎞(斜坑1870m+先進坑4940m=6810m)の区間は工事工程では掘削開始から11年目まで掘削が続き、11年目と12年目に電気工事なっていますが、2017年11月に掘削を始めたトンネル掘削だけでも、掘削のペースの実績(平均で1カ月に35~40m程度)からは2032年ころまでは掘削が続くと予想できますから、工事工程というのは「かかる」と考えて良いのではと思います。

 脱線しますが、2020年6月に、当時の金子慎社長が川勝知事に、最近の技術なら1カ月に100mは掘り進めるので、静岡工区で一番距離の長い西俣斜坑口からの6.5キロを5年5カ月で掘削できるので、ガイドウェイの設置や試運転期間に2年必要としても、静岡工区は7年5カ月でできるので、今(2020年6月時点)で着工を認めていただければ2027年開業に間に合うと説明しました。川勝知事はもちろん「うん」とはいいませんでした。

 除山斜坑口からの6810mを11年で掘るとすれば、1カ月に約51m。これが当初の見込みのはず。では静岡工区はどうか。環境影響評価書(静岡県)の資料編によれば、トンネルの掘削は1年目から10年目まで、電気工事やガイドウェイの設置は7年目から11年目まで行われることになっていました。つまり6.5㎞を10年で掘るという計画は1か月当りでは約54m。

 JR東海は、1カ月で100m掘削できるなんてそもそも予想していなかったわけですから、金子社長の説明がいかにいい加減なものだったか。よほどトロイ政治家であっても、そのいい加減さには気づくはず。川勝さんは、まあ、トロイといえる人物じゃないことは明らか。リニア新幹線ではそんなたぐいの与太な説明がときどき行われているように思います。「国策」ではたいてい国民が痛い目に合うんですが、後で考えれば与太なスローガンや説明がまかり通るのが「国策」。リニアがまともな計画でない(※)ことは明らか。

※ つまり、合理的な建設目的などない。国の認可が必要な事業なんですから、社会的に合理性がないなら認可すべきでなかった。認可した国交省の罪は重いと思います。

 蛇足。2008年ころ、3㎞幅のルートが公表されましたが、その中心線は壬生沢川も渡らないし、喬木村の阿島地区も通過しません。壬生沢川をわたったり、阿島地区を通るようになったのは、「飯田市民」の「悲願」によってルートが南にずらされたからだと思います。