更新:2023/06/20
真空管とトランジスタ
今から60年くらいまえのラジオというのは、真空管を使っていましたが、今は、そんなものは電気店では売っていません。売っているのは、トランジスタラジオだけです。最初の頃のコンピューターはやはり真空管を使っていたそうです。軍だとか研究所みたいなところで使っていただけです。今は、半導体を使ったコンピューターは、パソコンやタブレットやスマホのように広く普及しています。
超電導リニアの技術について評価している国交省の「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」は、今年3月10日の第21回会合で、「高温超電導磁石の長期耐久性の検証」という開発課題について、今年の3月末までに終える予定だったものを、2026年度までに延長することにしました。
「検証」というのですから、「高温超伝導磁石」を全面的に使用した試験列車で走行試験をしたというようなニュースが何度もあって当然と思うのです。しかし、2005年11月に試験を始めたというのですが、それ以後、そういうニュースってほとんどというか、まったく流れてきません。
(参考) JR東海のこのページには、「2005# マイナス253°Cという高温:11月、従来のマイナス269℃より16℃高い状態で超電導状態を維持できる、高温超電導磁石を搭載した車両の走行試験を実施。試験期間中に約4,111kmを走行し、最高速度時速553.9kmを達成するなど、極めて高い完成度を持つことが確認されました。」といっているのに、いまだに液体ヘリウムが必要な低温超電導磁石を使っています。
(参考) 2015年7月の「リニア新幹線を考える麻生・多摩の会」のJR東海にたいする質問と、JR東海の回答をまとめた文書の4~6ページにかけて「高温超電導磁石」の開発についてのやり取りがあります。2005年11月から12月以降に走行試験がどれぐらい行われてきたかという点、ニュースとして出てこないのは、上手くいっていないという印象を世間に与えることは間違いないですね。
会議の資料のなかに、現在の超電導磁石と高温超電導磁石の図解があります。
この図解では、楕円形の超電導磁石が四角の真空の容器の中に入っていることが分かると思います。その点は、現在使われている「低温超電導磁石」も「検討中」の「高温超電導磁石」も同じです。
名古屋のリニモ(HHST)とか上海のリニアモーターカー(トランスラピッド)などが浮上に使っている電磁石は、鉄の芯に銅線を巻きつけたもので、外気の温度の空気にさらされています。電磁石に流す電流をコントロールして鉄のガイドウェイとの隙間を一定に保っています。どうやってコントロールするかというと、センサーや半導体を使った電子回路(ソリッドステート)でやっています。トランジスタの子孫を駆使している。
電気回路に使っているわけじゃないけれど、超電導リニアでは「真空」を保つ仕組みが、今後しばらくは必要なわけです。超電導磁石は、鉄道でいえば鉄の車輪です。そういう重要で、また酷使されるのに「真空管や魔法瓶(*)のようなもの」を使っていて大丈夫なのかなという気がしますね。
* ガラス製の魔法瓶は衝撃で割れちゃいますが、丈夫なはずのステンレス製の魔法瓶だって、長年使うと保温力が弱くなる場合もありますね(参考:TIGER > よくあるご質問 > "内容物がすぐ冷める原因は何ですか。")。