更新:2023/08/27
リニアのトンネル工事の進捗状況は?
~『週刊エコノミスト』(2023年8月15・22日合併号) "リニアのトンネル工事 本当の進捗状況を検証する"~
『週刊エコノミスト』(2023年8月15・22日合併号、p76~78) に鉄道ジャーナリスト・梅原淳さんの "リニアのトンネル工事 本当の進捗状況を検証する" という記事がのっていました。記事の前半、都市部のシールド工事区間については、web版 "リニア中央新幹線 本当の進捗状況を検証する 梅原淳" で読めます。
後半の山岳部トンネルについては、あまり明確なことは書かれていない印象。
特に南アルプストンネルの長野工区については、最難関といわれる部分なのに、説明が非常に少ないと思いました。
しかし、一番最後の「リニア中央新幹線の工事は他の場所でも難工事ゆえに、なかなかはかどっていない。静岡県内の区間は最後に完成する場所とはならない可能性もある」という指摘は納得できますね。だからこそ、後半の記述が貧弱すぎると思います。
南アルプストンネル長野工区については、一番掘削距離の長い除山非常口からの掘削状況に注目すれば、工期の予測はできるはずです(参考:「静岡工区の議論に活かせることは?」)。
除山非常口の斜坑の先の先進坑(4940m)について、JR東海は2026年11月までに掘削を終えたいといっています。その場合1か月当り約93mを掘り進めなければなりません。
2023年初めころのこの先進坑の掘削ペースは1か月約54m(*)でしたから、現実的には残り約4.5㎞は7~8年程度かかると予想できますから、2030年~2031年まで掘削が行われてその後先進坑を後追いで掘り進む本坑が順調に進んで先進坑の掘削終了と同時ぐらいに完成してから、約2年でガイドウェイの設置と電気工事と試運転をしてから開業ですから、2032年~2033年にならないと開業とならない可能性は高いです。
* 「除山非常口は(2022年)3月14日に斜坑掘削が完了し、先進坑(品川方)の掘削をしています」(リニア中央新幹線情報 No.53) と3月23日の大鹿村リニア連絡協議会でJR東海は説明。2022年12月22日の連絡協議会で「除山から品川方への先進坑は 5,000mのうち1割程度の掘削が終わっています」(第26回 大鹿村リニア連絡協議会質疑応答概要)と説明。先進坑の掘削開始を仮に3月22日、第26回の報告は12月21日時点とすると、この間の日数は274日、JR東海は5000mの1割としていますが、4940m(※)なので、4940m×0.1÷274日×30日=54 で1か月あたり約54mとなります。(※ 9月2日の除山先進坑切羽の報道公開のようすを伝えた『南信州』2022年9月3日によれば)
が、そういうことを梅原さんは書いていない。また、伊那山地トンネルの青木川工区は、中央構造線をまたいで外帯(中央構造線の東側=海側)を掘るので、事実上は南アルプスを掘る工事で、まず中央構造線、そして蛇紋岩が存在する清田山(せいだやま)を掘る約3.6㎞の工区ですが、現在は中央構造線部分で調査トンネルを掘削中で、ほとんど工事は進んでいません。
そして、小渋川橋りょうというのが、伊那山地トンネルの品川方面の坑口と南アルプストンネルの名古屋方面の坑口との間に架ける橋で、現場は鳶ヶ巣峡と呼ばれる険しい渓谷で工事用車両がアクセスできる道路がないので、どちらかのトンネルの坑口があくまでは、話は始まらないと思います。7年の工期なのですが、いまだ未契約(2022年11月30日現在)。
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