更新:2024/05/07
在来線で十分、高速バスでもいいけど
リニア中央新幹線の認可取り消しを求める裁判の控訴審の第1回口頭弁論が4月25日にありました。傍聴してきました。裁判所の場所は東京の霞ヶ関。バスタ新宿行きの高速バスは、4月からバスタに8時33分着の便がなくなりました。一番早い便でも9時15分着で、首都高速の渋滞で40以上遅れる場合が多いので、10時10分からの裁判所前集会に間に合うように中央東線の「あずさ4号」を岡谷駅から利用しました。飯田線の駅が自宅のそばにあるんですが、前日の夜の列車にのらないと間に合いません。岡谷駅まで約70㎞は車で行きました。「あずさ」に乗るのは25年ぶりくらいです。
普通乗車券と「あずさ」の座席指定特急券。発券機で販売していたので、操作がさっぱり分かりません。駅員さんの指導のもとやっと買えました。片道、合計6290円で、岡谷まで行くには高速道路を使うので、その料金1030円も必要です。4200~4400円の高速バス利用の約2倍です。券売機の使い方はけっこう難しくて、覚えたつもりだったのですが、新宿駅で帰りも、結局自分で買えなくて駅員さんに教えてもらいながら買いました。
10時前に裁判所につくことが出来ました。これは裁判所前集会のようす。画面の左に裁判所があります。裁判は平日の開廷なので、それだけが理由じゃないですが、あつまった人たちは高齢者がほとんです。裁判の様子については「リニア中央新幹線沿線住民ネットワーク」から訴訟ニュースがでるはずです。
これは帰りの「あずさ41号」をまつ間に、駅のホームから、新宿駅東口の「飛び出す猫」(『クロス新宿ビジョン』)が見えました。
中央線とネコ。
「あずさ」に使われている「E353系」電車。
シートの背もたれに、いろいろ案内が書いてあります。右上は座席指定の表示ランプの説明。赤は指定済み、緑は指定済み区間を走行中、黄色は指定済み区間が近いという表示。検札の車掌さんから見て赤ランプのシートにいる人の切符だけ確かめればよいという仕組みのようです。
座席の上のランプのようす。
これは帰りの「あずさ41号」から。リニア実験線が見えるのではと窓側の席をとりました。この写真は、山梨県大月市初狩町中初狩付近を走行中に撮影。右奥に実験線の防音防災フードが見えています。
甲府盆地の夕暮れ。
リニアのように一瞬じゃなくて、しばらくのあいだ富士山がみえました。リニアはほとんど風景など見えません。上の上のような風景は絶対に見れません。あたっり前ですが。
韮崎観音。親戚の葬儀でこの観音様の近くにある韮崎市営火葬場に行ったことがありました。じつはこの観音様のある場所の地形はちょっと不思議なものです。
久しぶりに乗車した中央東線の特急。昔の新宿行のディーゼル急行や165系に比べると快適でしたね。ただし、岡谷からでないと利用できないこと、運賃がバスより高いので、特に急ぎでなければ高速バスの方が、自宅近くのバス停から利用できるので、今後も主にバスを使うと思います。
「あずさ4号」は松本駅始発でした。岡谷で乗車したとき車内は予約済み席がほとんどなのにガラガラでした。乗客がたくさん乗り込んできたのは八王子駅と立川駅で、ここらでやっと座席が埋まった感じでした。始発が松本なのに、仕事で東京に出かける用事のある人はそんなにはいないのでしょうね。松本市の人口は飯田市の約2.5倍、リニアの駅が飯田にできたとしても、結局利用する人は、少なくとも地元ではすごく少ないはずで、地元にとっては必要ないことは明らかです。長野県はリニアについてBルートを主張しました。Bルートは諏訪湖付近を通過します。「あずさ」は、諏訪湖周辺の岡谷駅、下諏訪駅、上諏訪駅、茅野駅のあいだは各駅停車です。利用客がある程度あるということです。路線をひくとすれば、経営上はBルートのほうが理屈にあっている。しかし、災害時のバイパスという意味であれば、もう中央東線と中央西線があるので、社会全体からみればリニア新幹線を建設する意味はないでしょう。
岡谷駅の東西を跨ぐ跨線橋から、特急に接続する飯田線の普通列車が発車するのが見えました。この列車では駒ヶ根駅までしか行けないので、自宅へは帰れません。
岡谷までは、車といっても軽四輪です。軽四輪の幅は約1m50㎝で車輪は一番外側についています。在来線の軌道の幅(レールの幅)は1067mmで軽四輪の車輪の間隔(トレッド)より狭いのに、車体の幅は約3mあります。軽四輪に比べると不安定なはずなんですが、それで、12両編成で時速120~130㎞だしても、乗っていて不安感はありません。それだけ鉄道の技術というのは安全性が高いのだろうと思います。こういう鉄道網が地方まで広がっている方が、リニアのような速いだけが取柄の路線を無理して建設するより、将来的に役に立つと思いますね。
ちなみに、新幹線は軌道の幅が1m43㎝5㎜で車体の幅が3m36㎝(N700系)。超電導リニアの場合は軌道の幅が3m30㎝で車体の幅が約3m。速く走るからより安定性を求めてそうなっているのか、F-1レーサーのように。磁石による磁気ばねと車体の重さや、遠心力などとの自然なつり合いだけで、制御することなく浮かせている仕組みに問題があるのか? 自動車以上に不安定だということかもしれない。
南アルプスのどこに水があるのか
これは、裁判のあと衆議院議員第1議員会館であった報告集会で、塩坂邦雄さんが講演でホワイトボードに書いた図解。話の要点は、南アルプスというのは非常に特殊な場所で、南アルプスのどこに水があるのかきちんと理解していないと、JR東海が出して来るデータに振り回されるよということでした。
塩坂さんの講演の動画が Youtube で見れます。
20240425 UPLAN ストップ!リニア訴訟 高裁審理
JR東海は点線のところに地下水面があると説明しているんだけれど、山が雨水で削れてできた川(右側の谷)の斜面に水が出てくるはずなのに、実際には水は出ていない、だから南アルプスの山中に地下水面があるという想定は間違っているという話です。つまり、環境影響評価書の大井川の水が毎秒2トン減るという予測や、長野県側の小河内沢で50~80%減水するという予測も、地下水面があるという前提で予測したのだからあてにならない。もっと多い可能性がある。
海側のプレートに積み重なった地層が、陸側のプレートにはぎとられのっかるときに水平方向に圧縮する力が加わるので盛り上がる、曲がるとき一番ストレスがかかるのが曲がった部分で亀裂ができてきて、まあそういうもので出来上がったのが南アルプスなんだという話。
そのうちに曲がりの中心の軸に沿って断層ができる。
(黄色の文字、青い矢印は「南信リニア」通信が画像に記入)
かなり書き込んだ後で分かりにくいんですが、中央の図は、今、静岡で一番問題になっている部分、南アルプスの地質の構造を示したものです。馬の背のようになっているてっぺんが少し凹んでいます。これは二重山稜で断層があることを示すもので、右上から左下に垂直に近い断層があって破砕帯ができています。断層がずれるとき粘土層ができるので、青い矢印のように亀裂から入ってきた水(雨水)は破砕帯に入り貯まる。
下の方にリニアが通るのですが、JR東海はルートに沿って高速長尺ボーリングをしてきて、現在は中断しています。丸印は、破砕帯のあるこの位置で透水係数を調べるべきだという塩坂さんが測定の方法を説明したものです。ここの透水係数は10のマイナス4乗程度と推定できるのだけれど、JR東海は10マイナス6乗という数字を使っている。100倍違えば、工事中に山梨県側に流れ出る水500万㎥は5億㎥となるはずで、田代ダムの取水制限や貯水用では間に合わない、田代ダム案は役に立たないだろうということでした。
次の図は、JR東海が唯一行ったボーリング調査の結果を示す図。上のホワイトボードの図とドンピシャです。赤い丸は、ボーリング調査のとき湧水があった場所。ボーリングのコア(掘り出した岩石の標本)を調べると、691mから700mの間で標本が採れなかった(*)ので、ここに岩が砕けた破砕帯があるはずで、そうすれば水が出たはずなのに、この図では出なかったことになっている。ボーリングでは日報を毎日記録するので、湧水について記録があるはず。それで日報を出すようにJR東海に求めると、なくしてしまったという回答だったそうです。図中の断層と書かれている凹んだ部分に大井川が流れています。
(図は、第12回リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議 配布資料 の 「資料2」の 「10 山梨県境付近並びに長野県境付近等の地形及び地質等調査結果に係る資料」の7ページにあるものと同じ。「*」については、同じ資料の 13ページにある。)
もう一枚、講演で印象に残ったスライドが次の画像です。
(赤い文字は「南信リニア通信」が記入)
島田市長の染谷さんなんかは、田代ダム案は科学的に納得できる内容だと思っているように思えてならないのですが、この図で明らかなように、リニアトンネルの工事現場と田代ダムの位置関係をみると、田代ダムのほうが下流にあります。水が抜ける場所が上流にあって、いって見れば上流から水が来ないのに、下流のダムで取水制限をしてより下流の水を確保することができるのかどうかって、わざわざ「科学的」を引っ張り出さなくても、ちょっと無理があるんじゃないかと思いますね。
同じように、重い列車を持ち上げて走らせることにも、そうとうな無理があるだろうということも、「科学的」を持ち出さなくても分かるわけで、逆に、われわれは「科学的」というコトバにだまされているのかも知れませんよ。オウム真理教の教祖は修行の結果、空中浮揚ができるといわれました。オウムの幹部には優秀な理系の人たちがいましたね。浮くということ(*)、カッコ付きの「科学的」ということから、リニアとオウムについて、私たちの受け取り方の問題として共通点がけっこうあるんじゃないかと思いますね。
そうそう、この地図よりは南、田代ダムより約2㎞南に千枚沢という沢があって崩壊した土砂が大井川を埋めて天然ダムをつくる可能性があって、JR東海はそのシミュレーションをしたそうです。ダムの高さが32mで上流に水が貯まるんですが、大井川沿いにある千石非常口まで水没するようなものだったそうです。塩坂さんが、千石非常口が水没すると指摘して、JR東海はやっとそのことに気が付いたそうです(*)。千石非常口は斜坑を下り勾配で掘削するので、水がリニアの本線にまで流れ込むはず。細かく見ると計画そのものが杜撰そのものという印象です。
* 関連資料:、6、発生土置き場の計画(1)燕沢付近の発生土置き場(通常土)における設計の考え方
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