更新:2024/05/23 8:41
静岡県知事選2024・リニアを争点にする公開質問状の回答
以下は、フェースブックの「大井川の水を守る62万人運動」のコピー。
大井川の水を守る62万人運動さんがライブ配信をしました。
2024年5月22日水曜日 14:00
知事選も中盤になってからの公開質問状であるにもかかわらず、4人の方が期日内に回答してくださいましたことに御礼申し上げます。
はまなかさとみ氏、もり大介氏、鈴木やすとも氏、大村しんいち氏(回答順)にご回答いただきました。横山まさふみ氏は回答頂けませんでした。村上猛氏は連絡が取れず、公開質問状をお渡しできませんでした。
はまなかさとみ氏は、一括での回答でした。
この公開質問状が有権者の皆様の投票の判断の一助となれば幸いです。
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💧質問と回答
私たちは、川勝前知事の辞職に際して、私たち県民の日常生活の基盤への甚大な影響が避けられないリニア中央新幹線建設問題に正面から取り組み、数々の功績を挙げてきた静岡県の環境政策の継続を求めて再出馬を要請しました。
残念ながら、その願いは叶いませんでしたが、これまで環境政策を導いてきた、「県民にとって自然と水は何よりも大事」と言う信念と、政策の推進に当たってきた静岡県中央新幹線環境保全連絡会議とその専門部会、JR東海との間で積み重ねられた対話の実績は、これからの、この問題への対応の礎とすべきものと多くの県民が認めています。
そこで私たちは有権者として、新たに県政を導く立場に就くことを目指す県知事選立候補者各位に、南アルプスの自然と大井川の水を守るお立場について、公開の場でお訊ねします。
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⚫︎はまなかさとみ氏(一括回答)
立候補時点での方針は「もし被害が発生した場合は、完全な補償と原状復帰を行う確約の上で工事再開を容認する」という姿勢でした。
しかしその後、岐阜県瑞浪市での水位低下など、現実に被害が発生する可能性を示唆する事象が起きていることを考えると、より慎重な姿勢が望ましいと考えるようになりました。
その意味で、前知事の川勝平太氏の慎重な対応は先見性のある見方だったと思います。
利権等からフリーハンドな私としては、過去の経緯にとらわれることなく、その時点での最新の科学的知見と予測によって判断していくつもりです。
そこで、私も川勝知事の行ってきた環境政策を高く評価し、方針を引き継いでいきたいと思います。
また、私が県知事になった場合には、特別顧問として川勝平太氏を迎えリニア問題をいままでどおり継続していただく要請をしていきたいと考えています。
利権に対して屈しない前知事の対応は大変立派だと思います。
それこそ、私の目指す「県民一人ひとりの要望に応える県政へ」に重なるものがあります。
質問に一つひとつ答えていませんが、リニア工事の着工は反対です。
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「1」川勝知事は、2018年JR東海がリニア工事により流出する大井川の水の全量を戻すとの発表に基づき47項目の公開質問状を提出しました。そのための客観的環境影響評価を行うために静岡県中央新幹線環境保全連絡会議を設置し、地質構造・水資源専門部会、生物多様性専門部会の全会議を県民に公開しJR東海の「掘ってみなければわからない」という姿勢を転換させ科学的工学的観点に基づき県民に寄り添う環境政策をJR東海の合意のもとに推進してきました。県民に選ばれた県知事としての政治姿勢を打ち出すにあたって、この静岡県中央新幹線環境保全連絡会議及び二つの専門部会の審査に介入することなく、それらの議論を尊重しながら県政を進めてきました。
1) 候補者の皆様は、自らの政治姿勢の信念を進める際にこうした客観的科学的工学的観点に基づく環境影響評価をどのように受け入れ、この連絡会議及び二つの専門部会を継続させることをどのようにお考えですか。
⚫︎もり大介氏
2013年9月にJR東海の大井川の流量毎秒2トン減の示されたことを受けて、川勝知事が2014年3月に、いわゆる「全量戻し」を知事意見として挙げたことを高く評価する。不十分な国の環境影響評価制度の中で、県の環境影響評価条例を使ってJR東海との対話を行ってきた。その中軸となったのは、環境保全連絡会議の2つの部会が全量戻しを軸に科学的工学的な議論を通じてであると認識しており、その功績は大きい。県内は、土被りが大きい地下トンネル工事であることから、47の残りの課題だけでなく、水の問題にも立ち返って科学的見地・データに基づく検討が必要である。専門部会を継続させ、きちんと議論を進めるべきである。
⚫︎鈴木やすとも氏
これまでのように最大限に参考にしていく所存。構成メンバーの意見を聞いて会議は継続し尊重していくべきと考える。
⚫︎大村しんいち氏
・対話と実行が私の政治姿勢です。利害関係者との科学的な対話を前提として取り組みます。
・連絡会議や2つの専門部会については、これまでの課題整理に一定の役割を果たしてきましたが、国モニタリング会議や静岡市の協議会等様々な議論の場があり、県民から見たときにこれらの関係が分かりにくいという指摘もあります。就任後に評価し、判断します。"
2) 47項目の公開質問状のうち残りの28項目についての回答を求めていくことについてどのようにお考えですか。
⚫︎もり大介氏
47項目のうち水資源関係は議論が進んでいるが、生物多様性、トンネル発生土に関しては、ほとんど進んでいない。引き続き回答を求め議論を進めていく。
⚫︎鈴木やすとも氏
当然求めていく。
⚫︎大村しんいち氏
事業実施主体であるJR東海との対話の中で、現在の28項目に限らず、懸念される課題について解決を求めていきます。
3) 国においてリニア中央新幹線の今後に向けてモニタリング会議が設置されました。このモニタリング会議に対して静岡県の立場を示すために静岡県中央新幹線環境保全連絡会議と二つの専門部会は継続が必要と考えられますがお考えをお聞かせください。
⚫︎もり大介氏
モニタリング会議は、「隔たりを埋めない限り、リニア事業は一歩も進まない」として、県とJRのギャップを埋めるために設置されたものであり、リニア建設推進を前提としている。
県はオブザーバー参加にすぎないが、大井川上流部の沢の生物調査不足などJRのモニタリング計画には課題があり、JRと県専門部会の対話の状況をモニタリング会議で議論してもらうことは有意義であり継続が必要である。"
⚫︎鈴木やすとも氏
モニタリング会議の設置については大いに評価しており、その会議との並立が必要であると認識できれば当然継続が必要であると思われる。
⚫︎大村しんいち氏
県専門部会については、県とJR東海の科学的な対話に必要と考えられますが、今後の議論の状況に応じて判断します。
「2」地質構造・水資源専門部会が5月13日に開催されました。山梨県と静岡県の県境における静岡県と地下深くつながっている断層の高速長尺先進ボーリングを巡り議論されました。突発湧水が起きた場合には静岡県側の水を引っ張る危険性に対して、県境手前300mからは慎重に掘削する旨と新たなリスク管理体制の確認がされました。県境手前にある2つの断層のうち1つの地質構造が明らかにされ、このJR東海の調査とリスク管理姿勢を評価し高速長尺先進ボーリング・および湧水圧試験の実施を合意しました。
1) この調査とリスク管理の流れは静岡工区の西俣直下の断層の透水係数を含めた調査においても継続する必要がありますが、この調査手法・リスク管理をどのように考えますか。
⚫︎もり大介氏
静岡工区の調査手法やリスク管理はまだ詳細に議論されていないように考える。西俣直下の断層についてはまずJR東海がデータの公開、県の専門部会の質問に答えることが必要である。断層の規模、性質によってこの調査手法・リスク管理で行くのかどうかを専門部会の意見を踏まえて決めていく。
⚫︎鈴木やすとも氏
今後、県、JR等で協議することは認識しているが、詳細不明のため十分な回答はできない。
⚫︎大村しんいち氏
"今後各種の調査が進めば、実測値が蓄積され、水収支解析等の推計精度が向上する
ことも期待されます。専門家の助言を得て、最も適切な調査手法・リスク管理を選択するべきと考えます。"
2) 山梨県境における高速長尺先進ボーリングと湧水圧調査により新たな透水係数が出た場合には、水収支解析の見直しが始まります。東京電力の田代ダム改修工事が終了する2025年11月に高速長尺先進ボーリングによる調査が終了しない場合はどうすべきと考えますか。
⚫︎もり大介氏
流域市町の首長が田代ダムの取水停止期間中であれば、ボーリング湧水返還の方策を求めないとする考えを表明したことが今回のボーリング調査を認めた大きな要因である。ボーリング調査が終わらなければ、田代ダムの取水停止の継続を求める。
⚫︎鈴木やすとも氏
工事終了までに間に合いそうにないときは、協議がもたれて2025年11月までに合意をすることとなっていると認識している。この協議はしっかりとなされなければならないと考えている。
⚫︎大村しんいち氏
地質構造の調査をしっかり進めることが、科学的な対話を進め、流域の不安解消につながることから、ボーリング実施計画が生物多様性の観点からも妥当性が得られるか、後で返水するなど水の総量調整をすることで流域の理解が得られるか、等を踏まえて、JR東海とその取り扱いを協議します。
3) すでに西俣直下についてはJR東海が斜めボーリングを実施しています。しかし、調査結果の公表の約束が果たされていません。今後の西俣直下の地質構造、水資源の評価において重要な資料になりますが、JR東海が公表しないことについてどのように考えますか。
⚫︎もり大介氏
約束を守ることは当然のこと、JRの不遜な態度・対応はきりがない。公表を求め、公表しないなら次のステップに進まないことも検討の1つ。
⚫︎鈴木やすとも氏
一部の内容は専門部会に資料がでてきたと認識いているが、当然ながら核心となるエリアなのでわかりやすく公表されるべきである。
⚫︎大村しんいち氏
国は、水資源の有識者会議中間報告において、「大井川の水利用をめぐる歴史的な経緯や地域の方々のこれまでの取組みを踏まえ、利水者等の水資源に対する不安や懸念を再認識し、今後、静岡県や流域市町等の地域の方々との双方向のコミュニケーションを十分に行うなど、トンネル工事に伴う水資源利用に関しての地域の不安や懸念が払拭されるよう、真摯な対応を継続すべきである。」と指導しています。これに叶う対応をとるべきと考えます。
「3」現在JR東海と静岡市との間ではリニア中央新幹線工事影響評価協議会において、南アルプスの生態系に関する審議が行われています。国の有識者会議において順応的管理の手法を使うと方向性が示されました。
1) これについて静岡市は協議会において2月16日、4月9日の二度に渡り不十分であるとしています。不十分であるとする理由は、事前調査が足りないことが指摘されています。このことについてどのように考えますか。
⚫︎もり大介氏
不十分という指摘は正しい。環境影響評価書(平成6年8月)に対し、環境大臣や県知事から様々な問題点や調査不足を指摘されながら、今日まで改善の見られないJRの対応は県民無視しも甚だしい。一方市の指摘も、まだ正式ではないがドローンの活用や解析によるものと聞いている。やはり現場に行って調査することが求められるのではないか。
⚫︎鈴木やすとも氏
詳細については今後しっかり勉強していくが、静岡市が不十分とする以上、不十分であるのだと感じている。順応的管理は多様な視座が必要であると考えている。
⚫︎大村しんいち氏
一般論として、順応的管理の手法が正しく機能するためには、事前の状態を把握する必要があると考えますが、市の協議会が行った科学的知見に基づく判断を、詳細な情報がないまま評価することは控えます。
2) この調査については、複数年の季節変動の調査が必要になりますがどう考えますか。
⚫︎もり大介氏
順応的管理手法をうたうならば、複数年をかけた調査が必要。
鈴木やすとも氏
ここは特に精査をしたいところである。最善の策を常に求めていく。
⚫︎大村しんいち氏
現在の県専門部会の専門家が行った科学的な知見に基づく意見等について十分な情報がないまま評価することは、もっぱら科学的な知見に基づく専門部会を維持するとした場合の支障となることも否定できませんので、現段階では控えます。
3) 静岡県生物多様性専門部会ではトンネル湧水対策として薬液注入以外の方策の提示をJR東海に求めていますが、それについてのお考えをお聞かせください。
⚫︎もり大介氏
もともと残土の処分も決めていないようなアセスが不十分な事業。各地で問題を起こし遅れるのは当たり前のこと。これからも工事の困難が考えられる。「経営上問題がない」というのは様々なデータを公表してこそ説得力を持つ。まず円安・物価高騰、残土処分などさまざまな要因による工事費用の増をまず公表すべき。
鈴木やすとも氏
⚫︎もともと難工事が予想されたことであり、静岡県として、流域住民の立場に立って水や環境問題を訴えてきたことも含めて、仕方ないことであると考える。他県でも同様の理由で遅れている個所もある。開発行為には安全の担保と水や環境の保全、地域の理解が必須であるので、ていねいな作業をしていくことが望ましい。企業の経営に関してのコメントは差し控えます。
大村しんいち氏
⚫︎工事完成の時期等経営方針に関わることは、事業者が判断することであり、私が考えを述べること適切ではないと考えます。
「4」JR東海は、リニア中央新幹線の完成は2024年4月から静岡工区の工事が始まったとしても10年かかります。静岡県以外でも工事の遅れは報道されています。JR東海は静岡県のせいで工事が遅れていると主張してきましたが工事の遅れは静岡県だけでないことが明らかになりました。
1) この工事完成までの期間がここまで伸びることについてどのように考えますか。またJR東海は工事の延期は経営上、何の問題もないということを公表していますがどのように考えますか。
⚫︎もり大介氏
もともと残土の処分も決めていないようなアセスが不十分な事業。各地で問題を起こし遅れるのは当たり前のこと。これからも工事の困難が考えられる。「経営上問題がない」というのは様々なデータを公表してこそ説得力を持つ。まず円安・物価高騰、残土処分などさまざまな要因による工事費用の増をまず公表すべき。
⚫︎鈴木やすとも氏
もともと難工事が予想されたことであり、静岡県として、流域住民の立場に立って水や環境問題を訴えてきたことも含めて、仕方ないことであると考える。他県でも同様の理由で遅れている個所もある。開発行為には安全の担保と水や環境の保全、地域の理解が必須であるので、ていねいな作業をしていくことが望ましい。企業の経営に関してのコメントは差し控えます。
⚫︎大村しんいち氏
工事完成の時期等経営方針に関わることは、事業者が判断することであり、私が考えを述べること適切ではないと考えます。
2) また、これだけの工事期間があるのであれば、部分開業も十分な選択肢になりえます。山梨県知事もそのように表明されていることをどのように考えますか。
⚫︎もり大介氏
故葛西氏が提唱した部分開業については、後に工事期間に余裕がないという理由で取りやめになったことは承知している。しかしリニアは問題点が多く、採算も見込めないなど建設そのものの中止を急ぐべき。全線開業を前提とした部分開業は検討に値しない。
⚫︎鈴木やすとも氏
現時点では言及すべきではなくコメントは控えます。
⚫︎大村しんいち氏
・山梨県知事は、リニアは、全線開通により初めて効果が最大化されるという認識・前提の下、山梨県までの部分開通も歓迎・期待したい旨、昨年12月の記者会見で述べられたと承知しています。
・部分開業等経営方針に関わることは、事業者が自ら判断することであり、私が考えを述べ ること適切ではないと考えます。 "
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💧あとがき(リニアを争点にする会)
私たちは、これまでの静岡県の環境政策を高く評価し、その継続を求める立場から、川勝平太前知事に知事選への再出馬を要請しました。この要請に賛同する署名の数は、2週間という短い期間で約2000筆を数え、リニア中央新幹線にかかわる環境問題に対する県民の関心の高さを示す結果となりました。
署名は、リニア中央新幹線工事の南アルプスの自然環境と大井川の水への影響を心配する、「大井川の水を守る62万人運動」「南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク静岡」の2つの市民団体と、「川勝平太応援団・勝手連」のネットワークと、Change Org.のウェブ署名を通じて呼びかけられました。
川勝氏の再出馬は叶いませんでしたが、次善の策として、環境影響評価を着実に進める礎となったこれまでの環境政策をどのように引継ぐかという観点から、今後の県政を託すべき候補者を見極めることとしました。
有権者の皆さんが大切な一票を投じるのにふさわしい候補者を選ぶ助けになることを願って、項目ごとに取りまとめた一覧として示しました。
リニアを争点にする会の目標は、いまの環境政策を引継いでくれる知事を選ぶことで、この発表をもって一区切りとするものですが、南アルプスの自然と大井川の水を健全な形で後世に伝えるための活動は、引続きそれぞれの団体が継続して参ります。
↓回答の一覧表はこちらからダウンロードできます。
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