更新:2024/06/13
積水ハウスをみならえば?
積水ハウスが東京都国立市内で建設したマンションを、引き渡し直前に解体すると決定しました。
- 『信毎』11日29面 "住民「富士山見えない」 都内のマンション 完成直前に解体へ 積水ハウス 計画変更→再調査 「景観への影響 検討不十分」"
- 『日経』 "積水ハウス、国立のマンション解体「富士山の眺望を優先」"
- 『朝日』12日29面 "「富士山が見えない」波紋 新築マンション解体へ 東京・国立 眺望検討不足で「経営判断」"
- ⇒ 積水ハウス > 分譲マンション「グランドメゾン国立富士見通り」の事業中止について
『日経』のコメント欄の政治学者の原武司さんは「一つの理念に基づいてつくられた都市は、その都市にふさわしい環境を守るための住民運動を不断に生み出す…住民は町の景観に対して敏感で…今回のマンション解体は、そうした国立ならではの歴史の延長線上にとらえることもできる」と述べています。
また、みずほ証券の上野泰也さんは、「憲法論で出てくる新たな権利の主張に、『景観権』(あるいは「眺望権」)というものがある…2004年に制定された『景観法』は、良好な景観は国民共通の資産であるという基本理念を述べた上で、その整備・保全を義務付けている。事業者は『土地の利用等の事業活動に関し、良好な景観の形成に自ら努め』『良好な景観の形成に関する施策に協力』する義務がある。」と指摘しています。
もちろん、計画の段階での十分な調査や、周辺の住民の意見をきちんと受け止めておればこうはならなかったわけですが、この段階になってからでも工事を止め解体するという決断は、このマンションの建築については法令上や手続き上の問題はなかったということなので、大した決断だと思います。
法令上や手続き上はかなり疑問点が多いリニア計画をやってるJR東海はみならうべきですが、そこがそれ、一般の民間企業と違って、「最後の帝国官僚」(*)、葛西敬之さんが君臨・支配した「組織」。そういう組織で育った現在のJR東海の幹部に、積水ハウスのような決断ができるのか、大日本帝国時代の日本の軍部や政府のように破滅するまで突っ走るのか。
* 『Zaiten』2020年2月号、"山縣有朋に憧れる“最後の帝国官僚”の正体 葛西敬之「傲岸不遜のトンデモ言行録」(特集 JR東海・葛西敬之「リニアの暴走」)"、p24、p27 (記事のタイトルで検索すると読めるかも?)
「景観」なんてどうでもいいんじゃないのという意見がまだまだ多いと思うんですが、積水ハウスはこういうことをやっている。JR東海が沿線各地で住民にかける迷惑は、農業や生活に必要な水の枯渇や、騒音・振動、日照、残土置場の崩壊の危険など、もっとシビアな問題です。立ち退きで集落が壊されたところもありますね。