更新:2024/07/15

JR東海と行政は共犯だったはず

 14日の紙面で、『中日』と『信毎』が岐阜県瑞浪市大湫町のリニアのトンネル工事による、井戸の水位低下や水枯れ問題について、大きな記事を載せました。

 『信毎』の記事は、リニア沿線の『岐阜新聞』、『静岡新聞』、『山梨日日新聞』、『神奈川新聞』、『信濃毎日新聞(信毎)』が連携してリニア計画の課題を探る連載の1回目。

 『中日』の記事で注目すべき点は:

 日吉トンネルの環境保全計画(*)の3-19から3-20に、「水環境に関する工事実施時の環境保全措置」についてまとめた表があります。

* 中央新幹線日吉トンネル(武並工区)ほか新設工事における環境保全について(2023年5月)

 最後の3項目が、井戸水の水位低下なんかに関係する部分。

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 住民としては、トンネルを掘っても現在の水の利用が「いつまでも」変化のないことを考えるはずで、それが環境影響評価の目的だと思い込んでいるわけです。それが当たり前のことであるし、あるべきなんです。

 しかし、この「保全」計画を見ると、「地下水等の監視」はするんですが、変化の兆候がでたら、応急の水源を準備してのあとは、そのまま代替水源の確保といってしまうわけです。代替水源については、30年間はJR東海が維持管理について費用は負担するけれど、それからあとは地域なり住民が個人でやってねということで「いつまでも」今のままじゃない。

 制度上はこうやって適正にやってきたんだから、リニア計画のやり方について行政はある程度は合意がある、県や市は地域振興のためにリニア推進という立場できた共犯でもあるし、県や市への説明は、あからさまに「もう手遅れだよ、工事を進めるしかないじゃん」といって、直接かかわる住民も「工事を止めても好転しない」と、殺しておいて、犯人が死んだ人は生き返らないといっているのと同じようないいかたをしたりするわけで、本当にけしからんことだといえるわけです。が、しかし、環境保全の計画や影響評価にそう書いている。

 静岡県の大井川の場合は、毎秒2トンの減水が予測されるけれど、それはなにも対策をしなかった場合で対策をすれば問題はないというようなものでした。

 瑞浪の事件をみれば、静岡県が工事の着工を認めてこなかったことは正しかった。影響評価にそう書いているんだから、評価書だか準備書の時点でこれは危ないと思った。

 山梨・静岡県境付近の破砕帯の透水係数が「事前の慎重な調査」の結果で正確にわかったとき、または、「わからなままのとき」 が「『工事をしない』という対策」を決断するタイミングだろうと思います。

 川勝知事が辞任にあたってリニア問題についてはメドがついたという発言は「あたって」しまったといえるんじゃないかと思います。工事をすすめるなら、これからも「あたり」がどんどん出てくると思います。

 小河内沢の水が減るという予測がされているんですが、長野県はどうするんでしょう。県企業局の発電所の1つの取水口が影響を受けます。現在、予測地点の近くで掘削が行われているはずです。また、長野県内では、すでに、大鹿村と豊丘村でリニアのトンネル工事で井戸の水位の低下、水量の低下が起きています。今後は、南木曽町、喬木村、飯田市などでも水資源への影響が起きる可能性があります。

 これは日本の環境影響評価が事業段階評価であることの欠点なんだろうと思います。計画変更や建設中止の選択肢もある、世界では一般的になっている計画段階評価にならないと、なんといっても狭い日本なんですから。

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