更新:2024/08/30

長野県が意見募集 壬生沢川から阿島北のリニア工事

 8月9日にJR東海が「中央新幹線阿島北高架橋ほか新設工事における環境保全について」を公表しました。工事にあたって環境影響を少なくするための保全計画です。長野県知事は、県の環境影響評価技術委員会の審議内容や、環境に関心のある方からの意見を参考にして、JR東海に助言をします。

 長野県は、8月23日に、環境に関心のある方からの意見の募集を始めました。意見の提出先は、「長野県環境部環境政策課環境審査係」。提出期限は9月24日です。提出方法は、郵送、持参、ファックス又は ながの電子申請サービス。書式の参考例など、詳しい点は以下のページを見てください。

郵送の場合の提出先は、「〒380-8570」、「環境部環境政策課環境審査係」。郵便番号の記載があれば住所は省略可能。

ファックス:026-235-7491

ながの電子申請サービス: https://apply.e-tumo.jp/pref-nagano-u/offer/offerList_detail?tempSeq=47151(外部サイト)

ひとつの問題点

 保全計画を読んで、環境保全の見地から問題と思われることを指摘していただければと思うのですが、今回の「阿島北高架橋ほか新設工事」の保全計画の中で、一つの、注目すべき点は以下のようなことです。

 今回の「阿島北高架橋ほか新設工事」の中には、ケーソン工法でつくる橋脚の基礎があります。

 ケーソン工法は、基礎をまず地上でつくって、基礎の下側を掘って基礎を地中に沈めていきます。はしょって説明すると、掘った土は基礎の内部の空洞に詰めます。つまり基礎と土を入れ替えるようなイメージです。

 リニアの中間駅の工事の保全計画が出されたは2022年10月でした。こちらも駅の東の外れで、ケーソン工法で橋脚の基礎をつくります。2022年10月の計画では、JR東海は、ケーソン工事で出てくる土はケーソン内部に詰め込むと説明しました。

 今年2月28日の地元説明会では、ケーソンの内部に、大鹿村内で保管している基準を超えるヒ素などの重金属類を含む要対策土を詰めると言い出しました。

 要対策土を遠くから運ぶので、運搬するダンプカーの排出する温暖化ガスが増えます。

 現場にあった土をケーソン内部に移動する場合と、有害物を含んだ土を詰めるのとでは、当然周囲の環境への配慮は違って来ます。

 よって、新たに環境保全計画を修正しなくてはなりません。現時点で、JR東海はまだ修正した保全計画を出していません。7月末時点で公表までに数カ月かかるといっていました。

 2月28日の説明会以降、地元では要対策土の活用に反対する住民の声が上がり、6千筆以上の署名とともに、JR東海に要対策土の持ち込みをやめるよう要請をしています。また、飯田市と長野県にも持ち込ませないよう求めています。

 さて、今回の「阿島北高架橋ほか新設工事」の保全計画では、ケーソン工事について、現場で出た残土をどうするのか、内部へどんな土を詰め込むのかという点についてなんにも説明がしてありません。保全計画の出る前にあった、地元説明会では要対策土を詰め込むのではないのかとの質問が出ています。それに、JR東海は、今のところ考えていないと答えていました。

 一人前の大人なら、経験に学ぶはずです。

 中間駅の工事のケーソン工事について、住民から批判をうけました。そして、「阿島北高架橋ほか新設工事」の地元説明会では住民からの要対策土の活用のあるなしについて確認の質問があったのに、「阿島北高架橋ほか新設工事」の保全計画では、ケーソン工事で出る残土や内部へ詰める土について何にも説明していないのです。

 JR東海に一般の民間企業の感覚があれば、こんなバカげたことをするはずはないと思います。

 中間駅と同じような住民とのトラブルを再度繰り返すつもりなのでしょうか。

 手続きを速やかに済まして工事を進める考えが無いようにも見えます。

要対策土の総量が確定できなければ活用も処分も不可

 JR東海は、現在、長野県内に、合計8000㎥の要対策土があるといっています。一方、今後どれだけ出てくるのかは分からないといっています。

 この8000㎥は基準値を超える重金属類を含むものなのですが、蛇紋岩という岩石には、粉じんを吸い込むと中皮腫の原因となる鉱物が含まれます。それ自体に問題がある蛇紋岩がまだトンネル坑内に保管してある部分があり、蛇紋岩も今後どれだけ出るのか分からないのです。なお、工事も難しいようです。

 活用先、処分先といっても、安全と考えられる条件を満たす場所や工事は限られるはずです。つまり処分、活用できる量に限りがあるのですから、まず今後出てくる量を確定すべきでしょう。

 ということは、簡単にいえば、今後出てくる量が確定できないなら、トンネル工事はもう止めるべきだという結論になるはずです。

 人間の生活しているのは、宇宙と地中の中間のほんの薄皮の部分で、宇宙は放射線に満ち溢れる環境で人間は生活できないし、地中には有害物質が豊富に含まれるので、必要もないのに、多額の費用をかけてトンネルなんか掘ってはマズイのです。

 和歌山では、要対策土がたくさん出ることを理由にトンネル工事を途中でやめた例がありました。

『朝日』2023年11月2日 "残土から基準値超える有害物質 新宮のトンネル工事を打ち切りへ"

 まず、全ての原発を廃炉にしなければ、使用済み核燃料の貯蔵先や処分先は決まらない。それと同じです。

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