更新:2024/10/02
飯田市議会・古川市議の一般質問
9月4日、飯田市議会9月定例会の一般質問で、共産党の古川仁議員は、土曽川橋りょうの基礎工事に要対策土を使う計画について質問をしました。録画が「Youtube」にあります。
古川市議の質問通告書は以下。
マスコミによる説明会の自由な取材が必要
質問通告書に「④市として市民・住民に理解するための周知は」とあって、古川市議は、隣組に加入していない家庭へ回覧文書や未加入世帯への配布だけ(*)で説明会の案内は不十分ではないかと質問しました。飯田市のリニア推進部長は、不十分な部分があることは認識していると答えています。
* 古川市議によれば、回覧文書がまわる隣組合の加入率は、上郷地区全体で44%(風越山トンネル上部の下黒田東が35%、駅ができる北条が53%)、飯田市がお知らせ文書の配布をしている世帯は上郷地区全体で71%(下黒田東で90%以上、北条で86%)。
また、説明会の出席者はほとんどが世帯主で男性であり、若者や女性に対して情報が伝わっていないのではないかという指摘に、飯田市は、世帯主が家庭に戻って家族に話すので情報共有はできていると考えるとしています。そんなことはあり得ないはずなんですが。だいたいどこの自治体も同じですが、世帯ごとの扱いになっています。
また、出席しても説明内容やコトバが難しくて、ほとんど理解できないという声もあり、世帯主とか家族の代表者が家に戻って説明できるという考えは、実態がわかっていないといえます。
「ラーメン」とか「RCボックスカルバート」とか「2径間連続PC箱桁」など…。それから、「県道市場桜町」といったって、「桜町」も「市場」も駅のできる上郷地区の地名じゃないのでどの道路だかピンと来ない地元の住民もいるはず。まして「市道106号線」とかいわれたらさっぱり分からないわけです。スライドで地図を見せたとしても。今は知りませんが、ちょっと昔の高校の授業が、家で参考書で事前に勉強していないと、といっても内実は丸暗記していないと、すんなり理解できないのと同じ感じですね。説明に立つJR東海の職員さんたちや市や県の職員は、慣れていても、一般住民はそういう説明方法や理解の仕方についていけないと思います。とうこともあるし、説明している担当者さんが本当に理解できているのかというあたりについてもあれと思う場面がないわけじゃない。
だから、JR東海がなにを説明したのか知るためには、すべての説明会について、報道機関への全面公開が必要なのです。全体的に公開したことは少なく、取材は冒頭の挨拶部分だけで、以後は報道は退室して、閉会後に会場の外か中で取材することがほとんどでした。
JR東海は質疑を報道公開すると住民が「忌憚なく」発言できないからと、遠慮せずという意味だろうと思うんですが、これだって難しい言葉ですね。JR東海に確かめたところ、そういうことがあるという根拠はないとしています。JR東海は、該当する地区の役員と説明会の運営について事前に相談するといっています。取材が入ることの重要性や必要性について認識していて、報道陣の取材を自由にしてほしいという役員は実際にはいないということでしょう。結局、JR東海のペースで説明会は行われているということなのです。
これだけの大事業を国民全体が納得の上で行うには、相当長い年月をかけた議論が必要だったはずです。「ローマは一日にしてならず」なんてことがいえるわけなんですが、ところが、この大事業の肝心の走行方式は、1970年代に、先進国(アメリカ、西ドイツ)では見込みのない技術と評価され捨てられた歴史がありました。
説明を尽くせばボロが出るのがリニア。だから、きちんとした説明はしたくない。
要対策土の仮置き場なしに工事する無謀
古川市議は質問のなかで、JR東海がJR飯田線の川路駅付近の自社用地に要対策土の仮置きを行う計画があることを明らかにしました(録画の13分14秒~)。地域住民に対して一昨年秋に調査をしたいと説明会があったそうです(*)。
* 2023年2月と2024年8月に行われたという話もほかで聞いていますが…
リニア推進部長の経緯の説明:飯田市内には要対策土の仮置き場がないので、昨年、中央アルプストンネルの松川工区で要対策土が出た時には、ヤード内の土砂ピットに一時仮置きしたために、トンネルの掘削を停止したことがあったと聞く。そのため、JR飯田線川路駅の周辺の自社用地に仮置きすることを検討している。現在、川路・竜丘地区にたいして仮置きの目的など説明しながら仮置きできるか検討するための、測量、地質調査、環境関係調査、設計作業をしている状況。トンネルのスムーズな掘削のためには要対策土の仮置き場が必要と考えている(えっ!飯田市が?)。
『信毎』2022年8月31日 "松川工区 本坑の掘削開始 JR東海 要対策土は県外に運搬" によれば、「自然由来の重金属などを含む要対策土は、3月に県外の汚染土壌処理施設に運び出した」。「松川工区の斜坑掘削では、事前の地質調査では想定していなかったヒ素を基準値以上に含む残土を『ごく少量』(JR東海)排出。ヤード内の土砂ピットで一時保管していたが、県外の処理施設と受入れの調整ができたという」。
土砂ピットというのは、たとえば、同じ中央アルプストンネルの黒田工区の土砂ピットは全体で3300㎥の容量を3つに区分けして使っています。ある日掘削した分は1つの区画に保管して検査します。検査結果がでてOKなら、残土置場、具体的には飯田市下久堅小林の残土置き場に運びます。1日分の最大の保管できる量は1000㎥ちょいありますが、平均的には200㎥まででしょう。しかし、1日にでる残土量に関係なく、検査結果が出るまでにたとえば3日かかるとすれば、3日連続して要対策土が出たら掘削はできなくなる。『信毎』は、何を思って『ごく少量』とJR東海の説明を強調したのでしょうか? JR東海のいうことはなにか胡散臭いと思ったのかも知れません。リニア推進部長の答弁は、具体的かどうかという部分では、つまり言葉の上ですんなり理解できる人は良いと思うのですが、話を頭の中で絵として組みたてて理解しようとする効率の悪い人にとっては、まだ足りない部分があると思いますね。
大鹿村と豊丘村には残土の仮置き場があって、その一角に要対策土を保管しています。飯田市内のトンネル掘削工事(NATMの斜坑2つ、シールド1カ所)については、残土の仮置き場も要対策土の仮置き場もいらないと判断した理由はなんだったのでしょうか。
予防原則にたたなければ住民の安全は守れない
古川市議は、住民の命と暮らしを守る立場であれば、リニア駅の地下に要対策土を埋めることは、市民の安全につながることなのかとただしています。少なくともJR東海となんらかの協定を結ぶべきではないかと、市長は、責任の所在の明確化などについて書面を交わすことを検討していると答えています。
しかし、予防原則にたてば、要対策土は使わせない、現場の発生土を中詰めに使わせるというのが、正しい判断でしょう。
9月27日にJR東海が公表した修正版の保全計画が長野県環境影響評価技術委員会で審議されました。その中で、委員長も、「『人が住んでいる所に要対策土を持ってくるのは、環境保全的に考えにくい行為。基本から言えば許されない』と批判」(『信毎』9月28日)しました。
工法の変更で工期がのびる
今後、保全計画の修正版の公表、県の環境影響、県知事の助言という段階をふむので、2022年10月に説明した通り現場の残土を中詰めに使うならもっと早く工事を進めることができたはずと指摘しています。
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