更新:2024/10/16
不透明、資料が残っていない テキサス新幹線
アメリカも日本も資本主義国です。アメリカのテキサス新幹線は安全基準やアセスは通過できたのに資金がなくて着工できないのに、日本のリニア計画は、安全性の問題を残し、不十分なアセスにも関わらず、なぜか資金があって着工できて、沿線各地でいろいろと問題を起こしています。
官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」(JOIN)が、米テキサス州のダラスとヒューストンを結ぶ高速鉄道計画について、ルールを無視した出資をして、417億円の損失を出したそうです。安全基準を曲げさせて、アセスメントも済んだのに、この計画はまだ着工できていません。
・『朝日』12日7面 "膨張予算:米新幹線 政府丸抱え 国交省官民ファンド 損失417億円 例外新設 日本企業の参画なし 事実上の損失補償 公表遅れ"(web版)
記事は日本の企業の参画がないと書いています。アメリカの事業主体の「テキサス・セントラル」の「セントラル」ってのは「JR東海」(*)のことじゃないかと思いますが、それでも日本企業の参画がないというのはなんなんだろうかなと思いませんか? リニアに必死のJR東海が出資できる可能性があるんでしょうか? リニアはJR東海が自分の金でやるといったのに財投を受けました。ワシントン・ボルチモア間のリニア計画(**)では国は、アセスの費用として約8億円を負担したはず。
* 「JR東海」を英語で書けば Central(セントラル) Japan Railway Company 。ホームページのアドレスは https://jr-central.co.jp/。故葛西名誉会長が嫌いだった中国の「中国中社」の「中」みたいな感じでもありますが…
** ボルチモア市-ワシントンDC間の超電導リニア計画は、アセスは草稿段階まで進みましたが、おそらくは環境影響について批判が大きかったため、2021年8月25日に連邦鉄道局がアセスの手続きの一時停止を発表後進展がありません。
記事は、「海外交通・都市開発事業支援機構」が「テキサス・セントラル」への支援を決めた経緯に不透明さがあって、機構が最大の出資者にならないという基準があったのに、単独で出資をしたとしています。なぜそうなったのかについて、「国交省の担当者は『資料が残っておらず、当時の経緯がわからない』としている」(『朝日』)と書いています。
ほかにも、国際協力銀行の資金支援について「機構」が損失補償をした点が異例と。また、「テキサス・セントラル」は2022年1月に債務不履行になっていたようです。
記事は「この事業は、安倍晋三元首相が日米首脳会談で取り上げるなど、熱心だった」と書いています。JR東海と国や国交省のあいだになにか特別のチョメチョメがあったと思うのが自然でしょう。
『朝日』は6月26日にも、「海外交通・都市開発事業支援機構」の巨額の累積赤字について報道していました。この記事では、ミャンマーの都市開発事業、ブラジルの鉄道事業とテキサス新幹線の名前が出ています。「官民ファンド」は安部政権の成長戦略の一つ。「主要15ファンドのうち九つが昨年3月末時点で累積赤字を抱えていた」そうです。
5月24日には、『Bloomberg』が "米大陸に新幹線の夢、テキサス高速鉄道の計画復活で現実に一歩近づく" で、見出しとちがって、要点は、「アムトラックは最近、テキサス州のダラスとヒューストンを高速鉄道で結ぶ長期計画を復活させた」けれど、「この構想は『300億ドル(約4兆7000億円)を超える』プロジェクトであり、依然そのハードルは極めて高い」ということらしいです。2022年に「テキサスセントラル」は取締役会を解散したなんて書いています。
5月29日には、『中日』は "テキサス新幹線 開業大幅遅れへ 米公社、資金難理由に" という記事で、アムトラックの上席副社長がテキサス新幹線の開業が目標の2026年から大幅に遅れることを明らかにしたと書いていました。
2023年8月12日の『朝日』は、アムトラック(全米鉄道旅客公社)がテキサス新幹線計画に参画すると発表したと伝えていますが、「事業費は約2.8兆円とされ、公的資金に頼らず、民間資金でまかなうとしている。資金調達のめどが立つことが着工のカギ」としていました。
高速鉄道ができれば…みたいなことがアメリカでもいわれてはいるらしいのですが、民間資金が集まらないということは、投資しても儲からないと考えられているということでしょう。どうしても社会的に必要なら、公的資金で建設するしかないけれど、実際には、アメリカでは、「新幹線」のような「高速鉄道の必要性」が「経済的には」切実なものではないということだと思いますね。日本の「新幹線」も実はそうだと思います。鉄道の利点は高速性や速達性だけじゃないはずです。高速鉄道は発達していないけれど、貨物輸送を中心に、アメリカの鉄道の路線の長さは約29万kmで世界一です。
国交省の "「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会」について" というページの「第3回 海外交通…(令和6年10月3日(木))」の資料4 「検証➀(テキサス高速鉄道事業)」に年表「主な流れ」があって、「2009年、主にJR東海が費用を負担する形で事業化(プロモーション)開始」となっています。「プロモーション」についてJR東海がお金を出したという意味なんでしょうね。たしかに、「テキサスセントラル(TC)」が債務不履行になったということは「主な流れ」にはのっていません。都合の悪いことはのせてません。
「総括」では、「本事業の政策的意義は高い一方で、需要予測の不確実性、巨額の建設コスト等のリスクが当初より事業委員会等の議論を通じ十分に認識されていた」としています。えっ、はじめからわかっていたんですか!
「取り組みの成果」として:
米国では前例のない専用軌道高速鉄道事業での新幹線技術の適用を認める許認可(特例技術認証(RPA)と環境影響評価(EIS))取得には、政府として首脳閣僚レベルを含む米国連邦政府への働きかけを行い、操業段階で必要となるRPA及びEISという許認可取得に成功したことは大きな成果であると考える。
これにより、日本の新幹線技術を採用するプロジェクトとして下地ができ、日本の新幹線技術の優位性が明確となった他、厳しい米国の許認可(RPAとEIS)を取得することで、他国における新幹線技術を活用した高速鉄道事業の展開につながる重要な一歩となった。また、事業に必要なプロセスが進み事業の確度を上げたことで、のちにアムトラックが事業参入を検討することにつながった。
としているんですが、5月29日の『中日』によれば、アムトラックが参加したけれど資金が集まらないので、アムトラックの上席副社長が「連邦政府と民間企業、外国からの投資なくして前進するとは思えない」という状況だということ。資金が集まらない以上は前進はしません。
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