更新:2024/11/19
小渋川非常口そばの要対策土の保管場所
11月14日、県環境影響評価技術委員会から
11月14日の長野県環境影響評価技術委員会の審議のなかで、ある委員が、下に示した資料について、左の写真は要対策土をトラックに積んだところだと思うが、積むところは覆われた場所なのか、もともと要対策土を保管している場所は風雨を避けて保管されているのか、降雨の時には運搬車両を出発しないと書かれているけれど、風で粉じんがまき散らされることはないのかと質問しました。
左の写真はまさに積み込み時の写真で、要対策土の仮置き場は雨にぬれないように遮水シートで覆った構造で仮置きをしているので、積み込みは晴れた日にシートをはがして積み込むことを考えている。仮置き場については周囲に「仮囲い」等を設置して防塵対策をしている、というのがJR東海側の回答。
委員は、左の写真に写っている壁のようなものがそれなのかと聞いています。
JR東海は、この壁のようなものは土砂ピットといって、「一般土を貯める施設」で、「仮囲い」はまた「別の仕様」になっていると答えました。
委員は、仮囲いがあって、土があって、その上に防水シートがかけてあるという状態なのですねと念を押しています。
JR東海は、そういうことですと答えたのですが、委員は風の時に粉じんがまき散らされる心配はないのかと聞いているのですから、JR東海側の回答はちょっと外れているような気がします。
資料の写真は、ダンプトラックに積むとき(左)と走行時(右)の荷台のカバーの状態を示しただけのもので、積み込み作業の場所ややり方を示したものじゃありません。
土曽川橋りょうの中詰めに使う要対策土は、大鹿村の小渋川非常口そばの残土の仮置き場に保管しているものを運ぶ予定です。保管場所は実際どんな場所か:
大鹿村上蔵の小渋川非常口(右の焦げ茶色の建物のあるところ)と残土の仮置き場(白い塀で囲われたところ)。白い塀を、JR東海は「仮囲い」といっています。
緑色のシートで覆われているのが要対策土。「仮囲い」より高く積まれています。シートをはがせば、風の強い日には粉じんが周囲にまき散らされる可能性は十分にあると思います。
「仮囲い」は「別の仕様」と説明しているんですが、まさに、写真でみるとおり、「仮囲い」(約3m)と「土砂ピット」で囲いの高さがぜんぜん違います。また土砂ピットは、ここの場合は屋根がありますが、要対策土の置場には屋根がありません。
大鹿発電所側から見た要対策土。最初のうちはシートがめくれている部分もありました。右奥が土砂ピット。「一般土を貯める施設」とJR東海は説明しましたが、トンネルから掘り出した土砂(ズリ)をここにいったん置いて、重金属類が基準値以上含まれていないか検査するための施設です。ここで、「一般土」と「要対策土」を区別しているはずです。
左は大鹿発電所。右に土砂ピット。画面を横切るパイプの中にベルトコンベアがあって、左のほうにある非常口(斜坑口)から、掘削した残土を土砂ピットに運んでいます。
土砂ピットの発電所側の側面。
説明の言葉だけでは、納得できるかもしれないですが、実際にはどんな場所なのか、写真や図で示せば、委員はより適切な意見がいえたはずでしょう。
11月14日には、JR東海は、長野県担当部長をはじめ、約20人が出席していました。それぞれパソコンを持参していたようですが、写真など使ってもっと具体的な説明ができなかったのでしょうか?
説明をしたJR東海の比較的若い社員さんは、悪気があってやってるわけじゃないと思いますよ。そりゃ。でもね、なんか、気が利かないというか、彼らの説明は、よくよく聞くとなにかおかしい。だから、なっとく行くまで突っ込まないと、静岡県の専門家の委員会のように、なかなか実際のところは分からないと思いますね。
この問題であれば、風速がこれぐらいなら、どれぐらい粉じんが飛散するとか、風速何メートル以上であれば積み込みはしないとか、仮囲いの高さがこれぐらい(約3m)だから、空気の流れと粉じんの大きさから、これだけの距離があれば、仮囲いの外には飛散しないとか、そういった検討が必要になるはずです。
2020年11月撮影
上の写真の左のシートのめくれている部分を別の角度から。
以下、しようもない話です
2024/11/21 追記
JR東海は「仕様」という言葉を使っています。「もの」がその使用目的に十分にこたえることができるようにするために、どんな材料を使うかとか、サイズであるとか、仕組みであるとか、そういったいろいろな細かいことが求められるわけです。そういうこと、またはその一覧を仕様というはず。であれば、「別の仕様」という意味は、「土砂ピット」と「要対策土の仮置き場」では、そもそも目的が違うというわけです。積み込み時に粉じんが飛散するかどうかについての質問については、積み込みの場所を、写真とか図面で示して説明するべきなのです。
JR東海は「要対策土」を「要対土」と縮めていうときがあります。中間駅周辺に住んでる方の中には「要対策土」では意味がわからないという方がいます。「ようたいど」と言われては、もっと分からなくなるはずです。JR東海や飯田市や長野県が説明会で使う言葉のかなりの部分が意味が分からないという人もいます。道路の名前を市道303号線とか1013号線といわれても、机の上の図面をみて説明内容を組み立てる説明者と、その地域に住んでいる人たちのあいだでは、道路の名前だって、だれだれさんの前の道だとかそういうレベルなんですから、話の内容がほとんど伝わらないのは無理もない話です。土曽川橋りょうのケーソン基礎の中詰め材に要対策土を活用する計画に対する住民の反対運動のなかでは「有害残土」というコトバをつかっています。JR東海は「発生土」というコトバを使いますが、住民は以前から、最近ではマスコミも「残土」といっています。国交大臣がJR東海に求めている丁寧な説明とは分かりやすい説明でもあるわけです。であれば、住民が使っているコトバで説明すべきであるはずです。自治体の職員の中にはひとにぎりだとは思いますが、住民が「残土」という言葉を使ったことについて「残土ではなく発生土である」と訂正を迫るような言動をする人もいました。これでは説明会で住民がリニア計画や関連事業について「理解」できるはずはありません。
JR東海は説明会のあとの取材に対して、住民の理解を得たとコメントしますが、じつは、住民の側では、少なくとも説明が何をいってるのかを理解できたひとだって非常に少ないはずなんです。そんな説明会で理解を得たというのは非常識です。まして、技術委員会では専門家である委員が、JR東海さんの説明では、人の住んでいる場所に要対策土をおかなくてはならない理由が理解できない、いや理由になっていない、人の住んでいる場所に置くべきでないといっているのですから、説明内容について説明し直して理解を得られたにしても、置くことについては「理解」は得られていないんですが、誤解を招くので「理解」という言葉は使うべきじゃなかったと思いますね。
なお、「要対策土」については「ヒ素入り残土」とか「有毒残土」とか「毒入り残土」のほうが分かりやすいんじゃないかという声もでています。
11月14日の技術委員会では委員長が人が住んでいる場所に要対策土を置くべきでないというのが委員の総意だといいきっていたわけです。重金属類の漏出が起きた後の対策をどうするかなどを、やや詳しく説明しても、委員はその内容は付け刃だとの理解したということでしょうね。
漏出した時の対策として、遮水壁を設置するという案を、大成建設のホームページから借用した図を示していました。なんか今風のやりかたで、ちょっと、あれっと思いましたね。瑞浪の大湫の水位低下問題では、南薩トンネルの湧水対策にならって対策を始めたんですが、その途中で、本家本元の南薩トンネルで崩落事故がおきて、対策を中断して、トンネル掘削は全く進んでいないし、今度は地盤沈下まで引き起こしている。東海北陸縦貫道の飛騨トンネルの完成をみて、南アルプストンネルを貫く工事について決心したという話も、なんか、それでだいじょうぶなのといいたくなるような話ですね。
遮水壁については、いったいどこに設置するの? 周囲は自社用地ではないわけですから、新たに用地取得とか一時立ち退き、調布の陥没事故のような、そういう事態だって想定しなくてはならないはず。これまでに発生した残土は長野県内全体で約200万㎥で、その約1%にあたる2万3千㎥の要対策土があるそうです。予想される残土の総量は974万㎥ですから、約10万㎥の要対策土が出てくる可能性があるかも知れない。ケーソンを沈めて出てくる現場の残土を使えば簡単にすむのに、将来に渡って面倒くさいことをしなくてはならないほどに、要対策土の発生が頭痛のタネならいっそトンネル掘削をやめた方がよいはず。
これまでに発生した残土が約200万㎥という話なんですが、全体の発生予想の974万㎥に対して約2割。着工から約9年で。雑な見方ですが、あと8割残土が出てくるのに約35年もかかるといってはいい過ぎでしょうか?
超電導リニアの走行方式の技術そのものがもともと筋の良い技術とはいえないところがあって、無理に無理を重ねているという指摘があります。JR東海の主張するリニアの最大の建設目的、東海道新幹線のバイパス路線ということなら、品川-名古屋間を1時間50分~2時間15分程度で行ければ良いはずです。何も約40分で結ぶ必要性はないはず。南アルプスを避けてクネクネ曲がったルートでも良かったはず。なにも超電導リニアである必要はないはず。いや、超電導リニアではダメですね。
まっすぐしか走れないからトンネルが多くなって要対策土も多くなる。しかし、その処分先がないから、非常識といわざるを得ないやりかたなんですが、人が住んでいる地域の真ん中で要対策土を処分しなくてはならない。本当にバカげた話だと思いますね。こんなところでも無理に無理を重ねている。
アメリカやドイツが1970年代中に超電導リニアに見切りを付けたのは、このあたりまで見通してのことだったのかもしれませんね。1990年ころにアメリカで超電導磁石を用いて高く浮上させるアイデア(常電導+超電導)をノースロップ・グラマン社が公表したんですが、後に上海のリニアモーターカーを完成させたトランスラピッド・インターナショナル社の当時の社長は、磁気浮上方式としてはトランスラピッドの方式が正しいと批判していました。常電導方式は、高速走行は上海で、低速のものは、北京、長沙、唐山、名古屋、仁川(2023年廃止)で営業運転をしています。磁気浮上方式としては常電導方式が最適であることは明らか。しかし、従来の鉄道の方が鉄道としてはもっと優れているのは明らかで、上海のリニアモータカー以降に整備された中国の高速鉄道網もすべて「鉄道」です。
忘れないうちに、ちょと関係ないかもしれないですが:飯田市の北隣の高森町で最近聞いた話。高森町は町内のある地区で、以前から要望のあった道路改良工事について、「地権者」に、工事にリニア工事で発生する要対策土が使えるかどうかJR東海で検討することについてよいかと聞いたそうです。「地権者」はダメと答えたそうで、この話は終わりました。道路改良は地元の要望だそうです。ふつうは、道路の計画を立てて、用地を地権者から買い取って、工事を始めるはずです。その場合は、地権者は町ですから、要対策土を使っていいよといいだすのはより簡単なはずです。なんで、用地取得の段取りもできていない状況でそういう話を始めたのか疑問に思いますね。ひょっとすると、道路改良全体を費用も含めてJR東海にやってもらうつもりだったのではと…。お金がないから…。地元がこういう話で不安を感じることになれば、道路改良の事業もなかなか上手くは進まないでしょうね。
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