更新:2025/02/02、訂正と補足 2025/02/15

続・長野県がJR東海に助言

「長野県」はJR東海の主張を丸のみ

 長野県は、1月27日に、JR東海に土曽川橋りょう工事を含む駅建設工事の保全計画に県知事の助言を送付しました。環境影響評価技術委員会が、人の住むところに置くべきでないと強く主張したにも関わらず、「長野県」は要対策土の使用を認める姿勢です。新聞報道で知った方のほとんどは、要対策土の使用を容認した「助言」と受け取ったと思います。

 助言を送付したことを知らせる長野県のページには、送付した「助言」そのものと、ほかに、プレスリリース資料というものがあります。「助言」を改めて読むと、新聞報道となにか違うなと思うはずです。

 プレスリリース資料のなかで、要対策土と普通の残土を区分する重金属などの含まれる基準について、「基準は、『一生涯(70 年)、体重 50kg の人が、重金属等が含まれた水を、1 日2L 毎日飲用しても健康に対する有害な影響がない濃度』として安全側に立って堅めに設定されています。」と説明しています。この説明は、JR東海がヒジキにもヒ素が含まれるけれど食べてもなんともないでしょうという説明といっしょに、住民説明会で行った内容と同じものです。ヒジキなどヒ素を含む食品については、なるべく量を少なくするべきといわれ、ヨーロッパではガンとの関連から食用を禁止しているところもあります。有害なものを摂取する場合は、病気の予防、治療など、摂取することによって当人に利益がある場合に許されるという、「許容量」という考え方があります。利益がないのに、70年間、1日2L飲んでも大丈夫という説明は乱暴と言うべきものです。橋りょうから漏れ汚染が広がることについて周辺の住民に何の利益があるわけではありません。リニアが開通するという利益の代償として我慢すべきと言えるでしょうか?

 ヒ素入りのヒジキは食べても大丈夫なんていう説明を聞いたけれど、どうにも心配だというのが、そもそもの住民の立場でした。だから、署名運動なんかをして、JR東海に使用の中止を求めたり、飯田市からも中止をもとめるよう要請したり、長野県にも中止を求めるよう要請しました。環境影響評価制度の一環として、長野県環境影響評価技術委員会がJR東海の提出した環境保全計画について審議をしました。委員の意見も重要な点で住民の考えと重なるものでした。なので、今になって、70年間毎日2リットル飲み続けてもみたいな説明をだして来るのは、議論を振り出しに戻すものだと思いますね。

技術委員会の意見を無視

 また、プレスリリースは、「橋脚基礎部は、構造的に十二分な対策がとられていることを県においてもチェックしています。」としています。

 技術委員会では、土曽川で発生する恐れのある土石流災害で基礎部の構造が損傷するのではないかとか、コンクリートを流し込む段階で生じるつなぎ目の強度を心配する指摘もありました。助言でも、漏れだしたときの、基礎部分の修繕方法とか、汚染防止の方法について検討するようにといっています。そもそも、水密性の高い(*)1.5mの厚さのコンクリートで囲って内側に防水シートや樹脂のコーティングをするという基礎部分の構造は、不完全な部分をカバーするような仕組みになっているわけで、良いように見えるのですが、実はこの手の対策というのは意外に上手くいかない。最悪の例は原子力発電所。また、JR東海は、2回目の審議で、漏れだしたときの対策として、遮水壁を下流側に建設するという案を示しました。つまり、基礎の構造は誰が見ても完全なのもじゃない。

* 「水密性の高い」。基本的にコンクリートは水を通しますが、水を通しにくいコンクリ-トもあるようです。

 だから、人が住むところに置くべきでない。原発は、核物質を閉じ込めるために、燃料棒、圧力容器、格納容器、建屋、広大な敷地と、いくえにも「とじこめる」構造になっていて、さらに、都市周辺には建設しません(人の住むところから距離をはなす)。重金属類を含む要対策土についても、人が住むところに置くべきでないという技術委員会の指摘は安全を考えるうえで重要な点です。「橋脚基礎部は、構造的に十二分な対策がとられていることを県においてもチェックしています」という部分は、環境技術委員会の受け取り方とくいちがっています。

 助言は、土曽川橋りょうに関する部分の最初の部分、憲法でいえば前文にあたるところで「当初計画どおり現地発生土の使用が好ましい」と述べています。また、2024年11月14日の技術委員会のあとで委員長が取材に答え「人が住んでいる所に要対策土を置くべきでないというのが(委員会の)総意」(『信濃毎日』2024年11月15日)と答えています。それが技術委員会の専門家の結論でしょう。

 また、助言では、技術委員会が2回の審議でくりかえし指摘した、土曽川橋りょう工事で使うようになった経緯について理解できる説明ができていないという点について、改めて説明するように求めています。つまり、石破茂さんがいうように「『何とかなるさと』と始めた」リニア計画は工事の上での困難を計画的にではなく場当たり的に解決していこうとしているので、JR東海は、土曽川橋りょうのケーソン基礎に要対策土を詰め込む理由がきちんと説明できないのです。JR東海が要対策土の処分先として安全な場所を本当に真面目に探したのかという点に疑念が残っているのです。

建設部が環境保全の観点からコメント!?

 プレスリリース資料では「構造的に十二分な対策がとられていることを県においてもチェック」と「県において」と書いています。

「住民の会」が抗議

 「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」は、「長野県」が助言の送付のときにとった「態度」について問題がある考えました。そこで長野市までいって、長野県に対して抗議文を提出することにしました。抗議文を提出するので、提出する時に懇談の時間をとってほしいと事前に環境政策課に申しいれましたが、「『助言』はJR東海に対して出したものなので」(意味不明)懇談はできないとのこと。助言の送付を知らせる県のページの「プレスリリース資料」の内容が納得できないので、その点についての懇談ならどうかと聞くと、数時間後に、おそらくリニア整備推進局などリニアに関係する部署と相談をしたのでしょう、数時間後に、返答があって、それについてもダメとのことでした。

 2月14日に長野県庁にいって、抗議文の提出後、環境政策課の担当者に、この「県において」の部分について質問しました。県の建設部の見解とのことでした。

 制度としては、環境保全計画に対する助言は環境保全の観点から、環境影響評価技術委員会の審議や、環境の観点からのパブリックコメントを参考に長野県知事がするものです。実際には助言の文章は環境政策課の担当職員が作成するのだろうと思います。建設部から環境政策課に、どういういきさつで「構造的に十二分な対策がとられている」という意見が伝えられたのかその点について明確なことは、抗議文を手渡すときの立ち話のなかではっきりしたことはわかりませんでした。

 環境保全計画に対するパブリックコメントは、環境政策課が、全ての人を対象に環境保全の立場からの意見を募集することになっています。県の関連部署から意見を求める制度になっているのかどうか、それは分かりません。しかし、そもそも、環境影響評価制度については県の環境部の環境政策課が担当しているわけで、リニア推進については第三者的な立場のはずです。県の建設部は「環境政策」を主な業務内容とする部署じゃないでしょう。であれば、自主的に「環境保全」の立場から意見を述べることはまずない。もちろん推測ですが、おそらく、このケーソン基礎の構造の安全性について、環境政策課がついうっかり建設部に確かめてしまったんじゃないかと思います。構造の安全性については、JR東海がすでに嘉門京大名誉教授などにアドバイスを受けて設計していると、住民説明会や技術委員会で説明していますから、環境政策課は、技術委員会が心配だといっているにもかかわらず、JR東海の説明について、改めて建設部に大丈夫だろうかと確認したんじゃないかと思います。これも、議論をもとに戻すことになってしまいます。また、環境政策課の建設部への問い合わせは、技術委員会の見識は信用できないといっているようなものです。

 助言本体の内容からは、長野県の環境保全軽視の姿勢に対する技術委員会の環境の専門家としての最大限の抵抗が見て取れます。

 今後の説明会で、JR東海は、「『長野県』さんのほうから、ケーソン基礎は『構造的に十二分な対策がとられている』と認めていただいております」と説明する可能性を残してしまったと思います。だから、「助言は要対策土の使用を容認するもの」とだけ解釈したのでは不十分です。

ケーソン工事への要対策土の使用のさきがけ

 土曽川橋りょう工事への要対策土の使用は、リニア工事のケーソン基礎での使用のさきがけとなるだけでなく、このようなケーソン工事での広範な使用のさきがけともなります。このような非常識な工事は中止すべきです。

 「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」はあくまで有害残土の使用の中止を求めています。Change.org のオンライン署名は継続中です。まだ、署名されていない方は、ぜひとも署名をお願いします。

オンライン署名:リニアの玄関口に有害残土を持ち込まないで!

こちらに、「助言」の項目を引用しながら説明しました。

◆       ◆       ◆

 以下、オンライン署名の説明文から引用します。

○これまでの経過について報告します。

image
写真説明:2025年1月11日撮影。青いネットで囲まれた部分が、橋りょうのケーソン基礎で、これを地中に沈めます。JR東海は2024年2月末に、有害残土の持ち込みは「早ければ9月ころから」と説明していましたが、ケーソンはまだ完成しておらず、当然、有害残土の搬入も始まっていません。反対の声とは関係なく、工事が遅れています。リニアの工事計画が沿線全体で遅れていることは明らかです。

◆       ◆       ◆

 2024年4月末に、土曽川橋りょうのケーソンにヒ素を含む有害残土を用いる計画の中止をもとめる署名活動をはじめ、7月10日までに集まった、オンライン署名4914筆、署名用紙による賛同1522筆を添えて、JR東海に、有害残土の使用しないように、飯田市には使用させないよう求める要望書を提出しました。

(参考)「要対策土使用反対の署名の結果とJR東海と飯田市への要請」

http://www.nolineariida.sakura.ne.jp/2024-07/2024-0728.html

 8月27日には、長野県リニア整備推進局長が土曽川橋りょう工事の現地を訪れ、「沿線住民の会」と意見交換をしました。

 9月27日に長野県環境影響評価技術委員会が開かれ、土曽川橋りょう工事に有害残土を使う計画を含む駅建設に関する保全計画の修正版について審議が行われました。技術委員会の鈴木委員長による、「(人が住んでいる場所に)それは危険ですよということが言われている土にもかかわらず、要対策土を持ってくるというのは、環境保全的には考えにくい行為と言わざるを得ないんですけれども。ですので、今言ったことを何遍繰り返されても、まさに基本から言えば、許されないのではないかと私は思うのです」など、厳しい指摘が相次ぎ、結論がでず、継続審議となりました。

(参考)「長野県環境影響評価技術委員会、9月27日」

http://www.nolineariida.sakura.ne.jp/2024-09/2024-0929.html

 「沿線住民の会」は9月27日の長野県環境影響評価技術委員会でだされた委員の意見を受けて、11月6日にJR東海と飯田市に再度、有害残土の使用の中止を求める申し入れを行いました。

(参考)「「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」がJR東海と飯田市に申し入れ、11月6日」

http://www.nolineariida.sakura.ne.jp/2024-11/2024-1107.html

 11月14日に長野県環境影響評価技術委員会で土曽川橋りょう基礎部へ有害残土を中詰め材として使用計画について、再度審議が行われました。「沿線住民の会」から5名が長野市に行き委員会を傍聴しました。委員会では、JR東海の再度の説明に対して、委員長は、なぜ人の住む場所におかなければならないのかという点についての説明ができていないと指摘しました。また、会合終了後の取材に、人の住む場所に置くべきでないというのが委員全員の合意とコメントしました。

 「沿線住民の会」は、11月14日の技術委員会の審議で専門家の委員の意見には、住民の主張と、重なる部分が多いことに力づけられ、保全計画への助言を出す長野県知事に対して、助言として有害残土の使用の中止を求めることを求める要望書を、メンバー8名が長野県庁に出向き、長野県リニア推進整備局長に手渡しました。

(参考)「土曽川橋りょう工事に要対策土を使うな、県知事助言に要望」

http://www.nolineariida.sakura.ne.jp/2024-12/2024-1219.html

 1月16日に、「沿線住民の会」は、飯田商工会議所の原勉会頭とリニア問題について懇談を行いました。「沿線住民の会」から申し込んで実現したものです。リニア計画全体について、いろいろなテーマについて意見交換をしましたが、有害残土の問題について、会頭は、市議会での討論がほとんどされていなかったのではないかと指摘しました。会議所としては会議所の会員から声があれば対処すべきことと思うとも言っていました。なお、開業時期が2034年以降になったことは、工事が約束の期限まで出来ないということは約束違反なので、市民はもっと怒るべきではないかとの指摘もありました。

 1月22日に、毎年行われている、JR東海と長野県と沿線市町村の意見交換会が開かれました。この会合は、もともとは2017年夏に豊丘村の残土置場の計画を、住民の反対で、JR東海が撤回をせざるを得なかったことをきっかけに始まったもので、残土や有害残土(要対策土)の処分の問題は中心的な課題です。有害残土を含む、大量のトンネル残土の問題は、環境影響評価の段階で各方面から指摘のあったことであり、リニア計画の大きなボトルネックなのです。残土は有用な建設資材とJR東海は説明しますが、リニア建設計画において、基本的に残土は廃棄物なのです。原発はトイレのないマンションと言われますが、リニアもいわばトイレのない列車なのです。JR東海は、この会合で要対策土を使用する意向を示しました。


長野県のJR東海への「助言」送付(1月27日)の問題点

(1) 「助言」の「Ⅱ 土曽川橋りょう橋脚での要対策土の使用」の冒頭で「事業者が、実行可能な範囲内でできる限り環境への影響を回避・低減するという環境影響評価のベスト追求型の視点に立てば、土曽川橋りょう周辺は、住居が多く存在し、地下水位が高く水利用もあることを踏まえ、本来は、当初計画どおり現地発生土の使用が好ましいと考えられる。」と指摘している点は、技術委員会の意見と同じで評価できる。

(2) 「プレスリリース資料」のPDFの1ページ目は、「助言」を送付したということ、参考として「計画書とは」、「県の助言とは」というように語句説明をしているが、これは、HPと同じ内容であるが、2ページ目は「別紙」として、「助言の概要」では「今回、要対策土を使用する計画が示されたため、工事の実施に当たっては」と、要対策土の使用を前提としている。

(3) さらに、「要対策土とは」では、「基準は、『一生涯(70 年)、体重 50kg の人が、重金属等が含まれた水を、1 日2L 毎日飲用しても健康に対する有害な影響がない濃度』として安全側に立って堅めに設定されています。」と、JR東海とほぼ同様に、重金属類のる土壌溶出量基準についての安全性を強調する記述となっている。「助言のポイント」には「、重金属等が含有土から溶出した時は、河川、地下水で希釈されます」とか「ヒ素は、岩石・土壌や温泉に広く含まれており、地域によっては河川や地下水での濃度が環境基準値(土壌溶出量基準値と同じ値)を上回ることもあります」と説明している。地下水や河川水に漏出したヒ素は、イネそのほかの農作物、魚、海藻などを通じて人が摂取する。「意図せず食品に含まれる有害化学物質については、『生産から消費の段階で適切な措置を講じて合理的に可能な範囲で食品に含まれる量を減らすべき』というのが、国際的に合意された考え方」(農林水産省)としている。そもそも発生土(残土)を健全土と要対策土とに分けるのか。基準を設けて制限を加え危険性を減らそうしてきたの社会的な努力の方向に反するものである。

(4) さらに、「助言のポイント」では「橋脚基礎部は、構造的に十二分な対策がとられていることを県においてもチェックしています」としているが、技術委員会では委員から土石流災害による損傷の可能性の指摘があったし、2度目の審議でJR東海が漏出があった場合の対策として遮水壁の提案をしていることなどから、「構造的に十二分な対策がとられていること」は技術委員会の審議の中で「確認」されているとは言い難い。また、「<水質調査>」の「キ」で「…橋脚基礎部の破損箇所の修復や原因物質の除去等の汚染源への対策も予め検討しておくこと」との記述の存在も委員会の構造への懸念を示すものである。また、「<その他>」の「ケ」において「周辺の地形・地質や活断層の状況を的確に把握するとともに、その内容を踏まえて土石流や断層変位による重金属等の漏洩のリスクを予め想定」との記述も技術委員会の懸念を示している。「県において」という部分、また「チェック」という部分は、意味内容があいまいである。専門的な知識を持たない「県の職員」が、対策が十二分かどうかについて判断はできないけれど、構造について書いてあることは「チェック」したよという意味にもとれる。「構造の安全性が確認できた」と誤解して記事を書いたマスコミが悪いと逃げ口上が言えるような書き方である。新聞読者が、県境影響評価技術委員会が「構造の安全性が確認できた」といっていると受け取る可能があるではないか。

(5) 「<水質調査>」の「ウ」で、「地下水の流向は、重金属等の漏洩による地下水への影響の有無を把握する上で非常に重要な情報であることから、現時点で想定される橋脚基礎部付近の地下水の流向とその根拠を環境保全計画書に追記すること」は、保全計画が、流向の調査が不十分であるという委員会での指摘をそのまま踏襲している。JR東海による事前の調査が不十分なのに、長野県の態度として使用を容認するものである。

(6) 「<その他>」の「ク」で、「橋脚基礎部において要対策土を使用するに至った経緯、使用する要対策土に含まれる物質の種類や濃度、及び要対策土の運搬車両の運行計画台数を環境保全計画書に追記すること。」は、人が住むところに置くべきでないという基本的な考え方に基づけば、いわば最悪の選択をせざるを得なかった事情や経緯について納得できる説明ができていないという技術委員会の指摘にたいして、JR東海が適切な回答がまったく示されていなかった事実を示している。

(7) JR東海は、航空機の利用者が超電導リニアに移転することで、排出ガスを減らすことができると主張している。「<その他>」の「サ」は、要対策土と、現場の発生土を遠方に運搬することで新たに排出ガスを発生させるJR東海の「マヌケ」について、「頭隠して尻隠さず」を嘲笑するものと言える。

(8) 2回に及んだ技術委員会の会議内容から、要対策土使用について住民が抱いている心配と、技術委員会の専門家の科学的な見地に基づく指摘には共通する部分が多いことがわかる。「プレスリリース資料」の2ページ目の「別紙」の説明内容は、技術委員会の専門家と、住民を愚弄するものといわざるをえない。

(9) 報道(『信毎』1月28日)によれば、「県は『かなり深い検討をした』(環境政策課)と自負した」としているが、「助言」本体の内容からは、「人の住むところに置くべきでない」とする環境影響評価技術委員会の県に対する抵抗が十二分に読み取れる。であればこそ、「プレスリリース資料」の2ページ目の「別紙」の説明内容は、JR東海の主張を代弁したものであり、環境と県民の安全を守るべき立場にある長野県が絶対にやっては行けない事である。

(10) 全線的な工事の進捗の遅滞から、リニア新幹線の2027年開業は先延ばしとなった。しばしば、理由とされる静岡県内で着工できない原因は、JR東海の環境影響評価など事前の調査が杜撰極まりなかったことにある。そもそも、環境影響評価段階以前、交通政策審議会鉄道部会中央新幹線小委員会の審議のころから、リニア新幹線の必要性についての疑問、工事の困難についての指摘があった。さらに、超電導磁石を用いた誘導反発方式の磁気浮上式鉄道(=超電導リニア)の技術そのものについては、アメリカとドイツで研究の結果、交通機関として種々の欠点から開発が放棄されたのが1970年代であり、それらの欠点は克服されていない、できなかったというのが現実である。昨今の状況はそれらの疑問や指摘や判断があたっていたことが明らかになっていたのだとの声もある。今後、リニア新幹線の建設を推進させるさせる立場から見ても、個々の工事カ所に置いて周辺住民の心配を軽減することが、「立派なリニア」を完成させるために重要なことは明らかである。今回の助言送付にあたって、長野県のとった対応は、JR東海のいわば「手抜き」あるいは「ズル」、「安全軽視」を認めるものであり、強く糾弾されるべきものである。

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