更新:2025/02/23
さめはだが美しい!新型リニア?
液体へリウムは必要か?
JR東海は今年の夏から山梨実験線に新型の試験車両を走らせると発表しました。
- 『中日』10面 "さめ肌の車体 空気抵抗1%減 リニア実験線 今夏新型投入"
- 『信毎』23面 "JR東海 リニア実験車 今夏新試験車 空気抵抗を削減"
- JR東海(ニュースリリース) > 超電導リニア 新しいL0系改良型試験車の製作について(2月20日)
ニュースリリースによれば、「投入する車両の特徴」として「② 高温超電導磁石専用設計」といってます。「 高温超電導磁石の採用」とか「搭載」じゃなくて。そのあたりがみそか?
「別紙2」ところで、「別紙2」の図解なんですが、「従来の超電導磁石(-269℃まで冷却)」の図には「冷凍機で液化したヘリウムにより磁石を冷却」と書いてあって、「高温超電導磁石(-255℃まで冷却)」では「⇒液体ヘリウム不要」と書いてあります。どちらも車体の台車についている超電導磁石の絵ですね。
その手もあるか
さて、ちょっと古いですが、『日経』2010年7月10日の "米国が先でもOK リニア商業運転へ進む技術開発" によると:
磁石を構成する超電導線材をニオブ・チタン合金から、より高い温度まで電気抵抗ゼロを維持するイットリウム系銅酸化物に変えた。磁石の利用温度は現在の絶対温度4.2度(セ氏零下269度)から最高で同50度(同零下223度)まで使う。車庫でいったん同20度(同零下253度)まで冷やしておくと、同50度に温度上昇するまで9時間以上保てる。
つまり、全部の列車に液体ヘリウムを積まなくても、車庫に戻ったときに、車庫内で超電導磁石を冷やしてやれば9時間は利用可能な温度範囲に保てるということ。
車体側では、外部からの熱の進入を防ぐために、液体窒素を使う冷凍機なのかそのあたりは不明ですが、冷凍機で冷やせば9時間は抵抗ゼロを保てる。車庫では液体ヘリウムを使う冷凍機で冷やす。そうすると、冷凍機分だけで1両につき40㎏軽くできるそうです。それから、ヘリウムをつかう冷凍機は、安定した条件の車庫内で使うので、また全列車に積まなくても良いので、使用する量を減らせるという意味なのかなと思いますが、JR東海のニュースリリースの「別紙2」の説明ではそのあたりがぜんぜんわかりませんね。
それでも、超電導磁石による欠点は残る
ただし、超電導磁石を使うという点ではかわりがないですから、超電導磁石をつかうことによる欠点を克服することはかなり難しいはずです。
- 強力な磁気に対する対策
- 乗客を磁気から守るための磁気シールドと特殊な乗降装置(鉄道や常電導方式では不要)
- 強力な磁気のある部分で日常点検や汚物回収の困難
- 走行により軌道周辺の金属部分に渦電流が生じることへの対策
- 「誘導反発方式(*)」であることで生じる問題
- 浮上案内コイルを規則正しく並べる軌道の構造により、浮上案内コイルから受ける振動で車体が共振する可能性
- 「磁気バネ」で車体を支える仕組みのため生じる不安定(特に長編成の高速走行)
- 加速時の電力消費を抑えるために側壁浮上方式を採用せざるを得ないので、走行できるカーブに限界がある(ほとんど直線しか走れないので、地形・地質条件や需要に応じた柔軟なルートがとれない)
- 軌道の高コスト(生産性)、保線作業の難しさ(**)、耐久性(防音防災フードに樹脂製のコイルの劣化を減ずる目的があるとすれば、フードのコンクリートの破片の落下で車体が損傷する危険もある)
* 1966年にアメリカの2人の技術者が、磁石の反発力を利用して列車を浮上させる場合に、車体側に超電導磁石を用い、軌道側には外部から電気を流さないですむ短絡コイルを並べれば、軌道側に多数の永久磁石や電磁石を並べなくても、列車を浮上させることができるというアイデアを発表。1970年台半ばまで、アメリカとドイツでこの方式の研究がされたのですが、結局開発に至らなかったのですが、日本の国鉄とその後は鉄道総研とJR東海だけが「日本独自の技術」といって開発を続けています。アメリカやドイツがこりゃダメだと考えた理由はたぶん超電導磁石を使用することの欠点を予測できたからなのではと思います。
** 2024年10月半ばの報道関係者対象の試乗会で、振動の問題について、JR東海の担当者は「側面のコイルの施工などにわずかな誤差があるため」と説明。報道関係対象の試乗の前にはそうとう気を付けて保線作業をしているはずですから、つまり、保線作業の精度が非常にシビアで困難ということじゃないでしょうか(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹のリニア試乗記)。あるいは、軌道側の浮上用コイルが規則正しく並んでいるという構造から生じる問題のどちらかか、その両方の可能性あり。
参考ページ
- (三菱総合研究所):超電導技術の将来展望
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- 強力な磁気に対する対策