更新:2025/03/03 [ 印刷用ページへ ]
要対策土の活用先はほとんどない
2月26日、JR東海が南アトンネル長野工区の環境保全計画を更新しました。主な更新内容は、小渋川非常口そばの変電所の造成についてです。その中で要対策土の活用について:
- 敷地造成で敷地の縁の擁壁部分の内側に要対策土1万㎥を使用する
- 変電所敷地の盛り土部分にも要対策土の使用を検討したが、建屋や電気設備の基礎や杭の工事で不溶化処理の効果を損なう可能性から、通常の残土4万㎥を使用する
JR東海 > 中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について(2025年2月26日更新) (第2章 工事概要(pdf 6p)、 5-1 要対策土の活用に係る対策方法(pdf91))
要対策土の盛土の上では工事ができない
変電所の盛土=敷地では今後、建屋の建設や電気設備などの設置が行われるので、その基礎工事やくい打ちなどで、要対策土の不溶化の対策の効果を損なう可能性があるので要対策土を使わずに、通常の残土4万㎥を使用することにしたと保全計画は説明しています。
ということは、盛土に要対策土が活用できる場合というのは、道路の盛土などのように、将来にわたって盛土の上の土地利用の方法が変わらない場合に限られるということになると思います。JR東海は、自社用地での工事で使う、公共事業などで要対策土の活用先を探すといっていますが、盛り土してなにか建物などを建設する場合は使えないことになりますから、活用先はほんとうに限られた場所しかないことになります。
また、長野県駅の東の端、土曽川橋りょうのケーソン基礎の中詰めに使うという計画は、自社用地だけれど、周囲は人が住んでいる地域であるので、環境の観点からいえば、人の住んでいる場所に置くべきでないというのが、住民も専門家も認める判断です。自社用地とはいっても周囲はJR東海の土地でないので、環境影響を考えるなら、自社用地とはいっても活用先は限られるはず。
不溶化など要対策土の活用方法の実験を最近になって始めたこともおかしい、遅いと思います。要対策土が出てくることはアセスメントより前から常識として分かっていたことなのですから、最初からリニアの建設計画の一部として、どう処理すべきか、自社で専用の処分場を建設するくらいのことは考えておくべきだったと思います。
考えたくない、なんとかなるさではダメ
しかし、それは現実的になかなか難しいことだったろうともいえるでしょう。つまり、要対策土が全体で57万㎥程度(*)は出てくると予想できるので、そりゃ無理だ、考えたくないと思うのは無理ないことだったでしょうが、それは、こんな長大なトンネルを掘る計画自体が無理だということ。
すぐに計画を中止すべきです。
* 沿線全体で発生する残土量は下の表のとうりで、長野県内で現状で発生土総量の約1%が要対策土であることから、5680万㎥×0.01=56.8万㎥と予想。
都県名 | 切土工 | トンネル | 合計 |
---|---|---|---|
東京 | 170 | 430 | 600 |
神奈川 | 480 | 660 | 1140 |
山梨 | 76 | 600 | 676 |
静岡 | 0 | 360 | 360 |
長野 | 24 | 950 | 974 |
岐阜 | 340 | 940 | 1280 |
愛知 | 140 | 510 | 650 |
合計 | 1230 | 4450 | 5680 |
単位は万㎥。各地区ごとの環境影響評価書資料編による。
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