更新:2025/05/16

リニア真理教の呪縛

JR東海の説明はあいまい、指摘しないと説明しない

 「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」(以下、住民の会)は、土曽川橋梁工事で要対策土を活用するというJR東海の計画に関連して、飯田市がJR東海と結ぼうとしている協定について要望書を、5月15日に提出しました。住民の会のメンバー10人が参加、飯田リニアを考える会から2名、共産党の古川市議が同席しました。飯田市側はリニア推進部長ほか2名が対応しました。

 4月23日の説明会で、JR東海の担当課長は環境保全計画書を出しているのでそれ以上の協定を飯田市との間で結ぶ考えはないととれる発言をしており、協定の協議の進み具合はどうなっているのかはっきりしない部分がありました。

 また、土曽川で活用せざるを得なくなった経緯についての説明内容が、保全計画書、住民説明会で、委員が納得できないとした、昨年11月14日の長野県環境影響評価技術委員会での説明内容より後退しているという問題もありました。

 飯田市側も、水質検査の頻度など、JR東海の説明には「あいまいな」部分が多いと感じている、また、こちらが指摘しないと重要なことでも説明をしないと、いっていました。

 また、飯田市には、リニア推進部と議会にリニア推進特別委員会があるだけで、県内の沿線のほかの町村にあるような、リニアの建設工事伴い起きる諸問題ついて検討する、リニア対策員会がないので、設置することを要望しました。

 飯田市は要対策土の投入は協定が出来てからと考えているようですが、JR東海は、すでに先月から、ケーソン基礎の下側の掘削を開始しており、かなり差し迫った状況にあるといえます。

 そもそも、ケーソン工事としては現場で発生する残土を中詰めに用いるなら、わざわざ遠路運んで来る要対策土を使う必要はない。JR東海の計画も最初はそうでした。人の住む地域の真ん中の地中に危険だから要対策土と呼ばれるものを埋め込んでしまうという、環境の観点から言えば極めて非常識な話です。

 土曽川橋梁工事は、飯田市に予定されている中間駅の工事の一部分です。同じ飯田市内の中央アルプストンネル・松川工区から約3000㎥の要対策土が発生し、工事ヤード内の置き場が満杯になり、トンネル掘削ができなくなり、県外の汚染土壌対策の出来る業者の事業所で、JR東海によれば「適切に処分」できたという事実があったのに、そのことを住民説明会で説明しないし、保全計画所書にも記載していません。

 なお、意見交換の席上は話題として出ませんでしたが、飯田市は、リニアのトンネルルート上の市道について、路面の下の地中に空洞がないかなど、調査を行っており、ルート上でこれまでに1カ所で空洞を発見し補修したそうです。現場ではそれなりのことは考えているところもあるようです。

リニア真理教の呪縛

 飯田市との意見交換のあと、記者会見があり、飯田市に主体性がないというが、なぜなのかという質問がでました。

 飯田下伊那では、かなり以前から中央新幹線に期待する動きがありました。例えば、1969年(昭和44年)7月19日の『南信州(新聞)』は鉄道建設公団が全国新幹線網整備の第2次構想の発表についての記事のなかで「先ず地元住民がこの中央新幹線構想にもっと関心をもってとびつき、当地方発展に役立つなら中央道以上の熱意をだすべきではないか」と、また当時の清水飯田市長の「いま飯伊地方は中央道・中津川線で頭がいっぱいなので、中央新幹線の話をしても反応がない。鉄建公団からはっぱをかけられ通しだ」とのコメントを紹介しています。1973年(昭和48年)11月1日の『南信州』には「脚光あびる中央新幹線 松沢市長 飯田通過を確信」なんていう記事がありました。

 さらに、田中市長時代の1990年には、国鉄清算事業団から飯田駅周辺の貨物扱いをしていた用地を購入するなどしています。また同時に、中央新幹線が来れば地域は発展すると、飯田市などが住民にたきつけてきたこともあって、リニア中央新幹線への期待は、ちょっと信心、宗教みたいなものになっていることもあって、飯田市がなかなか現実を科学的とか実利的な目で見ることができない、できても動けないということもあるんじゃないかと思います。

EOF