第094回国会 予算委員会第五分科会 第3号
昭和五十六年三月二日(月曜日)
午前九時三十二分開議
出席分科員
主査 海部 俊樹君
唐沢俊二郎君 関谷 勝嗣君
原田 憲君 藤本 孝雄君
岩垂寿喜男君 岡田 利春君
串原 義直君 堀 昌雄君
水田 稔君 市川 雄一君
長田 武士君 草川 昭三君
寺前 巖君 藤田 スミ君
渡辺 貢君
兼務 上原 康助君 兼務 大原 亨君
兼務 沢田 広君 兼務 土井たか子君
兼務 野坂 浩賢君 兼務 吉浦 忠治君
兼務 青山 丘君 兼務 塩田 晋君
兼務 吉田 之久君
出席国務大臣
建 設 大 臣 斉藤滋与史君
出席政府委員
建設大臣官房長 丸山 良仁君
建設大臣官房会
計課長 杉岡 浩君
建設省計画局長 宮繁 護君
建設省都市局長 升本 達夫君
建設省河川局長 小坂 忠君
建設省道路局長 渡辺 修自君
建設省住宅局長 豊蔵 一君
分科員外の出席者
警察庁交通局交
通規制課長 広谷 干城君
経済企画庁調整
局財政金融課長 岩崎 文哉君
環境庁長官官房
環境調査官 浅野 楢悦君
環境庁大気保全
局交通公害対策
室長 加藤 三郎君
沖繩開発庁総務
局参事官 佐野 厚君
沖繩開発庁振興
局振興第一課長 山田 哲朗君
国土庁計画・調
整局計画課長 長沢 哲夫君
国土庁水資源局
水源地域対策課
長 藤重 邦夫君
大蔵省主計局主
計官 保田 博君
通商産業省産業
政策局大規模小
売店舗調整官 佐伯 嘉彦君
運輸省港湾局計
画課長 藤野 慎吾君
運輸省鉄道監督
局国有鉄道部地
方交通線対策室
長 金子 史生君
運輸省鉄道監督
局民営鉄道部監
理課長 松尾 道彦君
運輸省自動車局
業務部旅客課長 寺嶋 潔君
労働省労政局労
働経済課長 逆瀬川 潔君
日本国有鉄道施
設局踏切課長 斉田 登君
参 考 人
(日本道路公団
総裁) 高橋国一郎君
参 考 人
(日本道路公団
理事) 大城 金夫君
参 考 人
(水資源開発公
団理事) 田中 和夫君
参 考 人
(本州四国連絡
橋公団理事) 山根 孟君
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分科員の異動
三月二日
辞任 補欠選任
岡田 利春君 渡部 行雄君
中村 重光君 串原 義直君
草川 昭三君 市川 雄一君
寺前 巖君 藤田 スミ君
同日
辞任 補欠選任
串原 義直君 岩垂寿喜男君
渡部 行雄君 堀 昌雄君
市川 雄一君 柴田 弘君
藤田 スミ君 四ツ谷光子君
同日
辞任 補欠選任
岩垂寿喜男君 水田 稔君
堀 昌雄君 岡田 利春君
柴田 弘君 長田 武士君
四ツ谷光子君 渡辺 貢君
同日
辞任 補欠選任
水田 稔君 中村 重光君
長田 武士君 有島 重武君
渡辺 貢君 寺前 巖君
同日
辞任 補欠選任
有島 重武君 草川 昭三君
同日
第一分科員沢田広君、土井たか子君、第三分科
員上原康助君、大原亨君、野坂浩賢君、吉浦忠
治君、青山丘君、塩田晋君及び第四分科員吉田
之久君が本分科兼務となった。
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本日の会議に付した案件
昭和五十六年度一般会計予算
昭和五十六年度特別会計予算
昭和五十六年度政府関係機関予算
(建設省所管)
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○串原分科員 時間が参りますから次の問題に移りますが、次に低周波公害の問題について伺いたいわけであります。
いま伺っておりました中央自動車道、この西宮線というのがありまして、御承知のとおりなんですが、中央道西宮線の阿知川大橋の低周波公害というのは、昭和五十年八月の供用開始のときから沿線住民を悩ませ続けてまいりました。橋の下に住んでおりましたある主婦が、昭和五十一年の七月自殺するという悲劇もあった。その大きな原因は中央道公害にあると村人は言っておるわけです。そんな犠牲をも含めて、大橋部落は日々これ公害の日と言ってもいいような日々を送って今日に至っておるわけです。
そこで、いままでに実施されてきた対策の概要とその経過を伺いたいわけです。
○大城参考人 お答えいたします。
阿知川橋の低周波音の問題につきましては、当該区間の供用開始以前――供用開始が昭和五十年の八月でございますけれども、この供用開始以前、まだ本線の工事中でございます四十九年二月ごろかと思いますが、工事用車両の通行によりまして、この橋付近の大橋地区の十七軒の住居、この家屋、建具等が振動するという現象が発生したことに端を発したと聞いております。それ以来公団は、種々調査を行いますとともに、低周波音の発生を軽減すると考えられます各種の試みを実施しております。
三つほどございますが、第一番目に、橋梁の伸縮継ぎ手部の前後の舗装の平たん性を確保するための補修工事、二番目といたしまして、振動を低減させるための橋げた端部の補強工事、三番目としまして、橋げたそのものの振動を少なくするためのダンパーの設置工事を実施しました。そのほかに、反射音を吸収するために、家屋前面の植栽工事を実施しております。
なお、昭和五十四年、五十五年度におきましても、橋梁全区間、約三百九十メートルございますが、全区間にわたる舗装工事を平たん性を確保するために実施しております。また、受音点の対策といたしましては、家屋、建具の振動防止のために、パテ及びピンチブロックを実施しております。
○串原分科員 いま六つくらいですか、御答弁をいただきました。ということは、この低周波問題が起きて以来、建設省、公団は、技術的に可能な対策工事というものを全部やり終えましたと、こういうことでしょうか。
○大城参考人 低周波音の発生につきましてはまだ十分解明されていない点が多いわけでございますが、橋梁や舗装の改良という技術的に可能な対策につきましては、これまでの知見に基づきまして低周波の軽減に有効であると思われる各種の試み、先ほどお答え申し上げましたように、ジョイント部の改良、橋げたの端部の補強、舗装の平たん性の改良等を実施してきたわけでございます。
なお、今後新たな知見が得られました場合には、その段階でまたより有効な対策を検討していきたい、かように考えております。
○串原分科員 今後の問題もちょっと触れられたけれども、いま考えられ得る防止策というのは現時点では全部やりましたと、こういうことなんですか。
○大城参考人 そうでございます。
○串原分科員 現在考えられている技術的な対策は全部やったということなんですけれども、そうすると、どの程度それで、低周波音公害と表現さしてもらいますが、軽減できたというふうに判断されていらっしゃいますか。
○大城参考人 現在阿智村に調査を委託しておるわけでございまして、本年度の調査の委託は、現時点ではまだ正式に報告は受けておりませんけれども、これまでの報告によりますと、低周波音につきましての一般車両の走行時の音圧は、音圧レベルでは二ないし九十ヘルツの周波数の範囲のリニア特性オールパスでの中央値で六十八から七十四デシベルとなっております。また、騒音、振動につきましては基準値以下となっております。したがいまして、公団といたしましては、阿知川橋での対策工につきましては一応の成果が得られたと、かように判断しております。
○串原分科員 環境庁はこの阿知川大橋の低周波問題は承知していると思うけれども、当初公害が出ていた、いま考えられる対策は全部やった、若干の効果があったというような意味のお話があったけれども、環境庁としてはどんな程度の評価をされているか、ずいぶん減ったということなんですか、どうですか。
○加藤説明員 先生御案内のとおり、環境庁といたしましてこの問題につきまして重大な関心を持って見守ってきたわけでございます。たとえば昭和五十一年度におきましては、委託調査でございますけれども、当地域におきまして実態調査も行いましたし、また、昨年の暮れでございましたが、私どもの係官も派遣してつぶさに見ております。私どもといたしましては、低周波空気振動、低周波公害を低減するために可能な限りの対策が講じられることが望ましいという基本的な考え方のもとに、これまでも道路公団に対しまして対策の実施を働きかけてきたわけでございますが、今後とも引き続き問題の解決に向けて一層の努力をしていきたいというふうに考えているわけでございます。
お尋ねのこの問題につきまして、低周波というのは非常にむずかしい問題でございますが、それなりの効果が上がったというように考えておりますが、もちろんこれで満足すべきものでなくて、一層いろいろな、可能な限り対策を講じていくということが望ましいというふうに考えております。
○串原分科員 環境庁にいま一つ伺っておきますけれども、この低周波につきましての環境基準といったらいいのでしょうかね、この基準というものはいま作成されていない。ところが、やはりこの経験を踏まえて検討した場合に、早くつくらなければいかぬ、こう考えるわけですけれども、いつごろそれはできるのか。いかがです。
○加藤説明員 基準等の設定に当たりましては、何といいましても、人体の生理機能のみならず、生活環境に及ぼす影響等多くの問題を解明しまして、十分な科学的な知見の集積に基づいた検討が必要だというふうに考えたわけでございます。この問題の低周波空気振動の人体の生理機能等への影響につきましては、環境庁といたしましては、実は昭和五十二年度から調査研究を行っているわけでございますが、いまだその因果関係が解明されていない状況にございます。したがいまして、低周波空気振動対策における基準の設定時期等につきましては、残念ながら現時点で予測することは困難でございます。
○串原分科員 そうすると、困難だということは、いつごろできますとかつくりますということは考えられないということですか。
○加藤説明員 先ほど申しましたように、生理学的な研究につきましては昭和五十二年度から、それ以外の問題といたしましては昭和五十一年度から取り組んでおるわけでございますが、大変その低周波のレベルと人体影響度の因果関係といいますか、これの解明がいまのところめどがついておりませんので、残念ながら現時点ではいつ基準が設定できるか申し上げる段階になっておりません。
○串原分科員 そういたしますと、環境庁の方ではいつ基準ができるかわからないと言う。公害があることは、現実としては存在をしているということですね。そこで、さっきお話しのように、阿智村に委託をして調査をしているという御答弁がありましたね。そういうことも含めてですけれども、現実あるわけでありますから、環境庁から基準が出ないからというわけにもいかないし、今日もまだ住民、村当局も被害のあることを訴えていることは御承知のとおりでございますね。加えて、ことしの三月、ついすぐですけれども、三月には諏訪ルートが開通する。それから、来年度中には東京まで中央道が全通をする。昭和六十年度になりますと、恵那山トンネルの第二トンネルが全通をする。そうすると、交通規制も解除するということになりますと、今日、交通量はちょっと少ない日は三千五百台、普通のときで一日交通量五千台くらいと言われておりますけれども、これが三倍程度には伸びるであろうと普通言われておりますね。そうなりますと、ますます低周波公害というものは地域住民を悩ますであろう、こういうことになるであろうと思うのですけれども、建設省、公団としては、いよいよ深刻さを増すであろうこの公害に対して、環境庁の基準はなかなか出にくい、出しにくいということではあろうけれども、それまで放置していくわけにはとてもとてもいかないわけです。そういうわけにはいきますまい。
具体的に伺いますけれども、阿智村に委託調査をしている調査をさらに継続して、対策を立て得るもろもろの仕事、工事等々実施していくべきではないか。
それからいま一つは、時間がありませんから私の方から詳しく申し上げられませんのは残念ですけれども、昭和五十四年三月、この問題を取り上げた長野県の弁護士会が調査をして提言をしているわけです。あるいは御承知のことと思いますけれども、この提言は結局、基本的には全戸移転などを考えなければだめだ、こういうことを提言していますね。地域住民もそれをかつてから要求してきた。それからいま一つは、公害を根本的に取り除くならば、阿知川大橋区間の速度制限を四十キロ程度にしなければ無理なんだ、こんなことも言っていますね。これらについてどう対応なさっていくおつもりなのか、御答弁願いたいと思います。
○大城参考人 お答えします。
中央道の飯田−中津川間の昭和五十五年二月から五十六年一月までの日平均交通量は約六千五百台となっております。また、西宮線の全線開通予定後の昭和六十年では、一日当たり平均約七千台と現在の資料では推定されております。この程度の交通量となりますと、低周波の影響は現在と余り変わりはない、かように考えております。なお、公団といたしましては、交通量の推移を見ながら低周波の問題を継続して検討を進めてまいりたい、こう考えております。
それから、全戸移転の補償を行う考えはないかということでございますが、先ほど来申し上げましたような対策によりまして、今後また新たに得られる知見を加えまして、阿知川橋の環境対策は可能であると考えております。全戸の移転については必要ない、こういうぐあいに考えております。
それから、速度規制の点でございますけれども、これは現在七十キロに制限していますけれども、警察庁関連のことでございまして、私どもとしては現在考えておりません。
○渡辺(修)政府委員 ただいま環境庁からも御説明がございましたように、低周波振動並びに低周波空気振動につきましてまだよくわからない点が多いわけでございます。しかしながら、やはり道路があることが一つの原因ということでもございますので、これを極力軽減すべく、私どもといたしましても土木研究所等の調査研究あるいは各方面との連絡、これは将来一生懸命やってまいりたいと思っております。
○串原分科員 それで阿智村に委託して調査している具体的な調査、これはやはりもう少し継続してやるべきではないか、こう思う。この御答弁をちょっと。
○大城参考人 先ほど御説明しましたとおり、今後の交通量の推移を見ながら、その時点で必要とあれば検討していきたいと思っております。
○串原分科員 時間が参りましたから最後になりますけれども、この公害問題は全国的にも幾つか提起されているようですね。この阿知川大橋の経験と実際に学んで、これからまず低周波公害を除去し得る設計施工、これを考える。二つ目は、万一大橋部落とほぼ同じ条件にならざるを得ない地域、これが地形上出た場合には移転対象とするということを考える。三つ目は、今後の設計協議の際、低周波問題についてよく住民と話し合う等々の、低周波についてきめ細かい対策を立てることが重要なときに来ているんじゃないか、要すれば要綱みたいなものを作成すべきときに来ているんじゃないかと私は思っているわけです。この阿知川大橋の経験に学んで、どうでしょうか。
○渡辺(修)政府委員 先ほども申し上げましたように、たとえば低周波空気振動の測定方法等についてもまだその方法は統一的に定められておりませんし、またそのレベルについても定めがないという状況でございますから、まだ要綱をつくるというところまでは、大変申しわけありませんが、そこまではいっていないと思うのでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、大変大事な問題でございますので、橋梁の設計とかそのほかいろいろな対策、これは今後とも調査を進めまして、何かいい方法を少しずつでも見出してまいりたいと考えております。
○串原分科員 時間が参りましたから、終わります。