国土交通大臣 太田昭宏殿
リニア中央新幹線着工認可に抗議し、撤回を求めます
私たちは、東京から名古屋まで、中央新幹線予定ルート沿線住民を中心に結成したリニア新幹線沿線住民ネットワークです。
2011年5月に、国土交通大臣から東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)に対し事業認可されたリニア中央新幹線(以下、リニア新幹線)計画は、8月26日JR東海から環境影響評価補正書と工事実施計画書が提出され、1カ月間の縦覧と貴省での審査が行われていました。そして、縦覧終了を待っていたかのように、本日太田大臣からJR東海に着工認可が下されました。
事業認可から3年余り、この間、沿線各地の住民や沿線自治体から計画の内容や環境影響評価準備書や同評価書に対し、南アルプスの環境破壊や大井川の地下水減水、工事残土の処理、工事車両が及ぼす住民生活への影響などを懸念し、計画の見直しを求める声が広まりました。6月に出された環境大臣意見は「言うまでも無く、本事業は関係する地方公共団体及び住民の理解なしに実施することは不可能である」と述べています。沿線住民のみならず国民の理解を得られず、また自治体の意見も真摯に受け入れられることなく、環境影響評価の手続きだけが矢継ぎ早に進められ、国土交通大臣が着工を認めたことに対し、憤りをもって強く抗議します。
リニア新幹線の東京・名古屋間の工事には5兆4,300億円の巨額の費用が投入されますが、工事実施計画ではさらに935億円が追加されています。JR東海は経営悪化すれば工事は中断するとしていますが、そうなった場合、国が財政支援を行うことは十分想定できます。私たちの質問に対し、国交省の担当者は「現時点では、財政支援は考えていない」として、「財政支援はあり得ない」とは答えていません。もし、そうなれば、国民負担となり将来世代に負の遺産を遺すことになります。
リニア新幹線の工事は10年以上続きます。適切な環境保全措置を講じたにせよ、相当な環境負荷が生じることは否めないと環境大臣は指摘しています。準備書や評価書で示したJR東海の環境保全措置が全く不十分であることは、1都6県の知事を含む沿線24自治体首長意見からも明白です。太田大臣は、工事による自然環境や住民生活へのダメージを理解されているのでしょうか。
JR東海の説明会や公聴会では、供用後の安全・避難対策、電磁波対策について極めて不十分であると指摘されています。「健全経営と安定配当」を繰り返すJR東海には、「利用者の安全は鉄道会社の使命である」という姿勢が感じられません。
リニア新幹線計画はその内容について国会審議もほとんどなされず、そのため、国民も関心を持つことができませんでした。この3年に限っても、沿線はじめ多くの国民に対し、計画の具体的内容について丁寧な説明や情報提供があまりにも少なすぎるのです。
スピードの追求だけが目的のリニア新幹線を国民は必要としているでしょうか。国民に、必要だという声がほとんど無いことは明らかです。リニアが開業しても採算がとれないことはJR東海も認めています。国会審議で検証し、国民的議論が今こそ必要です。このような段階で、国交大臣が拙速に着工認可を下したことに抗議し、直ちに撤回するよう求めます。
2014年10月17日
リニア新幹線沿線住民ネットワーク