JR事業説明会 1(豊丘村・豊丘南小学校、 2014年11月4日)

 長野県内では最初のリニアの事業説明が豊丘小学校で行われました。JR東海の出席は、沢田部長、工事事務所長、環境保全事務所長、同副。

 会場で配布される資料は準備書説明会で配布されたものと同じ装丁のパンフレット『環境影響評価書(長野県)のあらまし』とおそらく全会場共通の事業所説明会の概要のプリントと豊丘村内の工事の計画を示した地図をとじた資料の2つ。村内唯一の住居の立ち退き対象のある壬生沢川の橋梁とトンネル工事関連の地図は含まれていませんでした。

 トンネルの掘削方向は、壬生沢川そばのトンネル口、戸中、坂島ともに東京方面に向かって上り坂に掘削を進めるとのこと。突然の異常出水に対する対策について質問がでましたが、先進坑を掘るので心配ないというような回答でした。戸中ではルートは南側ですが、虻川がヤードの南にあるので、それを回避するため一旦反対側に掘り進み方向転換をしてルートが虻川より北になる位置に向かって掘り進めるとのこと。坂島も戸中も付近の平坦部全体が工事用ヤードとなるようです。

 変電施設については、当初3ヘクタールといっていたものが4ヘクタールに拡大していました。予定地より標高のやや高い東側にある村道からの建物の外形を線で示したフォトモンタージュがスライドで示されました。予定地は緩い傾斜地であり受電設備、変換器棟、出力側設備棟ごとに、切り土、盛土で高さを変えて建設する予定で、フォトモンタージュでは景観に与える変化は少ないと説明していました。

 確かに豊丘村内からは俯瞰するようなフォトモンタージュが出来る視点はないのですが、あるいは施設が見えるような見上げるような視点もないのですが、喬木村の北霊園からは間近に見えるし、対岸の高森町の松岡城址からもはっきり見えるわけで、それらは、高森町や喬木村から見た豊丘村の景観であるわけです。そういう視点がないようです。これはかなり目立つ施設になると思われます。

 壬生沢川そばのトンネル出口付近のフォトモンタージュも示されました。そのほか、表や地図や日程表などスライドで示した資料は、一通り事業説明会が終わったころに、JR東海のホームページに掲載するとのことでした。

 トンネルが通過する土地については、土かぶり5mまでは用地取得、5m〜30mは区分地上権の設定という以前から繰り返されている説明でした。JR東海が説明した要点は:

 本来、深さに関係なく区分地上権の設定が必要です。逆に、5mでも区分地上権の設定で工事が出来ないわけではありません。補償するのか賃貸契約をするのかは別にして、民法上は深さに関係なく土地所有者と区分地上権を設定する契約を結ぶ必要があるはずです。5mで区切りを付けて浅いほうを用地を買い取るとしているのはJR東海の独自の判断です。区分地上権について長野県では30mという区切りは存在しないはずですが、もちろん法律上は深さの制限はないので、こういう民法の解釈について疑問と思われる説明がまかり通っているのはおかしなことです。村長ほか村の関係者も出席していたはずですが、この点に関して誰も質問をしませんでした。村長は後半どうも居眠りをしているようにも見えました。用地取得交渉で村の職員が動く必要がない(JR東海は県に委託すると説明)としても、これでは村の行政担当者として住民の権利を守るという立場に立っているとはいえないでしょう。豊丘では、住居の立ち退き対象は、おそらく1件だけですが、買収対象の用地だけでなく、トンネル用地の問題があるはずです。

 都市部で適用される「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」でも深さ40mより深い部分について補償をしなくても良いと決めているだけのことなのですから、長野県内で30mという数字を示す根拠がまったく不明です。以前のJR東海の説明では、これらの数字は山梨実験線での実績ということだったと記憶しています。もちろん山梨の場合も法律的な根拠はないはずで、あくまでJR東海の方針ということです。

 工事を危惧する立場からは洞地形には残土を捨てないようにという声がありました。また残土の処理地で後年、万一災害が起きた時の補償などについて文書の取り交わしをするつもりはあるかという質問がありました。万一はないようにするとの答えと、ダンプカーの運行についてルート、時間等について確約書を作った実績はあり、そういうことはするという、ややピントをずらした回答がありました。

 元社会党の県議だった方が質問しています。一つは、地権者のOKが取れた時点で一斉着工となるのかという質問には、一斉着工はないという答えでした。観光のために、明かり部の防音フードについて透明にできないかとの質問には、現状では難しいとの回答。この点についてM氏はJR東海の回答の後で不規則発言で是非とも透明のフードにして欲しいと発言しました。

また、この方は、残土に関して、矢筈トンネルの残土で喬木村の氏乗に平坦部が出来たことを引き合いにして、出来るだけ近くを処分地として、できた平坦部を有効活用するようにするのが良いと発言しました。この方が現在も社民なのかは知りませんが、社民党の福島瑞穂氏はリニアについて明確に反対を示しているのに末端の党員がこれではと思いました。この方は在任中は是々非々主義ということをいっていたと記憶しますが、本当のところは、当選するためであれば、こちら建てればあちらが建たずのことであっても、その場その場で適当なことをいってやり過ごすやりかただったようです。これは、この方に限ったことでなく田舎の議員にはありがちなことです。民社党、旧社会党の支持が減った一つの原因だと思います。

 質問者は全部で10人、事業そのものに明確に反対する方向での質問はありませんでした。JR東海にとって平穏な事業説明会のはじまりという感じもしましたが、嵐の前の静けさなのかも知れません。やや不思議な印象の雰囲気でした。

 県内の最初ということなのでしょう、報道各社が来ておりました。

 動員もかなりいたように思えました。出席者数は準備書の説明会より4割程度少ないように思えました。終了は21時22分でした。

(2014/11/05)