所有者不明土地に利用権
5年程度公益事業へ活用
国交省方針

信濃毎日 2017年10月26日

 国土交通省は25日、所有者が不明のまま長期にわたり空き地となっている土地に関し、5年程度の利用権を設定し、農産物の直売所など公益性のある事業目的に使えるようにする新制度を導入する方針を明らかにした。同日開かれた有識者会議に制度の骨格を示し、了承された。政府は年内に詳細を固め、来年の通常国会に新法案を提出する方針。

 所有者不明の土地は、所有権が壁となり地方自治体などの第三者が利用するのは難しく、空き地の増加をもたらしているとされる。このため、新制度では、直売所やイベン卜広場、公園、保育所、駐車場といった公益目的に限って、利用権を設定し土地を有効活用できるようにする。

 事業を計画する市町村や企業などが都道府県知事に土地の利用を申請し、事業の公益性が認められた場合に、5年程度の利用権を設定できる。複数いる所有者の一部が分かっているケースでは、判明分の所有者全員の同意を得れば申請できる。

 利用開始後、所有者が現れて明け渡しを求めた場合は、原状回復した上で返却することを原則とする。所有者の異議がなければ期間延長もできるとした。

 また所有者不明の土地を国や自治体が公共事業用地として取得する際の手続きも簡略化する方針。近隣住民への聞き取りで所有者を確認する作業を不要にする。

 住民票の調査で所有者が判明しなかった土地は、国や自治体に所有権を移転する際に必要とされた都道府県収用委員会での審理を省略し、知事の判断で公有化を決定できるようにする。これらの手続きの簡素化は、所有者が名乗り出た場合に備え、空き地に限って適用する。