神山、グリーンバレー
6月8日、豊丘村の公民館(ゆめあるて)で豊丘村と北部事務組合の主催の「地方創生地域づくり講演会」がありました。講師はNPO法人グリーンバレー理事長の大南進也氏、演題は「神山プロジェクト 〜創造的過疎から考える地方創生〜」。
最初に豊丘村の下平村長が、645年の大化の改新から説き起こすちょっと長めのあいさつをしました。国道の整備を行ったという話をしたかったのだろうと思います。しかし、近代的な国民国家、否、現在は、さらにすすんで民主主義的な国家なのですから律令時代の国道まで引っ張り出してはどうなのかなと思って聞いていました。「超電導で走るリニア」という誤解を招きやすいキャッチフレーズを使っておられました。最初、豊丘村で大南さんの話を聞こうと考えたようですが、北部事務組合(松川、高森、豊丘、大鹿、喬木)も一緒にやろうということになったようです。
基本的には3月に鼎文化センターであった講演と同じでした。大南さんのNPO法人グリーンバレーや神山町の情報はネットにも出ているので、詳細は省きます。
以下、メモからです。
- 家業が生コンを扱っていて、道路建設に関わっていたが、道路ができると数年後人の流出が始まって、過疎を助長する姿を見てきた。
- 人の流出はお金のダムでは止まらない。
- やってくる人を活かすことを考えた。
- 神山の現在の姿、結果だけを視察して帰る人がいるが、結果の出てくる経過、過程をわかってもらいたい。
- 創造的過疎
- 徳島大学が神山学舎を設置
- ワシントンポストに取り上げられポートランドのような町と書かれた(Anna Fifield 記者、2015年5月28日)
- 青い目の人形の里帰りという事業を一緒にやった仲間が、今に続く活動の仲間となった。同じ体験をしたグループが必要。
- 行政の役割は少なかった
- 県が徳島文化村プロジェクトをはじめたときにこちらから関わっていった
- アドプト・ア・ハイウエイ・プログラム
- 結果は次の世代でもよい
- アートで町づくりというと、見に来る客を狙うことだが、そのアートを入手する資金や知識のある専門家がいない
- そこで制作に来る芸術家に来てもらうことを考える。滞在の満足度と場の価値(歴史的背景など)
- ワーク・イン・レジデンス
- 小さな東京を目指すべきではない
- 「VS東京」とは、東京の価値観を変えること
- 情報通信産業(IT)の従事者はオーガニックフードが好み
- IT関係者が来ることで、飲食店ができ、有機栽培の農産物が町のなかで売れるようになった
- などなど
なるほどと思う点もありましたが、ちょっとと思う点もないでもなかったです。
- 間伐材の杉を使い器を作った職人さんがいたそうです。特殊なウレタンを塗装することで、従来は器には不向きとされていた杉材を活かしたという話。オーガニックを気にする一方で石油化学製品であるウレタンを使うというのは何なのでしょう。廃棄するとき問題はないでしょうか。従来は器に適した材質の木をつかい漆を塗ったり、そのまま生地のまま使ったりしたはずで、廃棄しても問題はなかった。
- 主催者に気を使ってか、本心なのか、リニアの開通は有望と話していました。リニアの目的には東京をさらに巨大化してメガリージョンを作るということもあるのですから、「VS東京」と矛盾します。
質疑応答では大鹿村の方が、移住者のパーセンテージと元からの住民との関係について質問しました。2008年以降お世話したのが150名で、町の総人口6000人に対して2.5%ほどだそうです。住民との関係は良いとのことでした。少しづつ変化してきたから慣れたのだろうと思う。グリーンバーレーの理事の半分も移住者。
大鹿村の人口は、2015年5月1日現在で、1024人(=210)。移住者の人数は約200名。大鹿村の行政はよっぽど努力をしたはず。徳島から遠路はるばる講師を呼ばなくても大鹿村の行政担当者に秘策を聞けばよいはず。灯台下暗し。というのは私の感想です。
高速通信網が全県に整備されていたのはなぜかという質問。テレビの地上デジタル放送化に対応して光ファイバーのケーブルテレビを導入した。当時の知事が総務省の情報通信畑の出身だったこともある。
ストロー現象も心配になるが、豊丘村についてなにか具体的な方策はないかという質問。ストロー現象に関していうと、神山で平成19年にトンネルができる話があったとき、トンネルができるといろいろ解決すると考えていた人が多いようだったが、トンネルができたときその先にどのような神山が見えるのか考えた。それに対して、住民にできるソフト事業を考えたてやっていたら上手くいった。自分達が見つけ出さないと他の人では分からないと思う。無駄だと思わずにこつこつと続けること。リニアができてもミニ東京は作らないように。
行政のやったことはという質問。3年ほど前から、テレビ放映など見た人からの問い合わせが役場にくるようになった。最初はグリーンバレーに聞いて欲しいと答えていた。空家情報なども聞かれ、行政としても探そうと考え空家調査のノウハウを教えて欲しいといってきている。行政に頼んで断られてストレスをためるより自分達でやったほうが良いと考えている。現在は役場もいい形でサポートしてくれている。神山町はアクセルも踏まないがブレーキも踏まない行政で、これがありがたいと思っている。
講師へのお礼の挨拶は、高森町の熊谷町長。何年か前、高知まで行ったが、名古屋までバスで出かけ、新幹線で岡山まで行って、岡山からジーゼルの特急に乗って大歩危小歩危を通って高知までいった。自分達の地域は大変な地域だと思ったが、四国へ行ったら自分達はまだ恵まれていると思った。そういう地域で地域の皆さんが頑張っておられる。これは神山町だから、大南先生がいるからということだけでなく、地域の住民が勇気を持って第一歩を踏み出せるかどうかだと思う。これから総合戦略とか、リニアの開通への期待、もあるが、ただリニアがきたからこの地域が良くなるというものじゃないと思う。10年後をにらんで今からいい地域を作っていくことが、そのときに都会からも来てもらえる地域になるのではないかと思う。これからもご指導を願いたい。だいたいこんな感じでした。
熊谷町長はリニアについては手放しで期待していないようです。
地域づくりはリニアに関係なく重要です。すぐにもとりかかるべきです。しかし、リニアが地域づくりにマイナスに働くなら、やはり明確に反対、中止を打ち出すべきだと思います。リニアは国全体の経済に対しても、国家の財政に対してもマイナスになる恐れが非常に高いし、技術的には21世紀の戦艦大和といってよい、時代遅れ、時代錯誤の技術だと思います。第一に複雑な地形の日本の国土に一直線の最短距離の鉄道を作ろうという発想は一人前の大人が考えることじゃないと思います。センスが最悪。
北部事務組合の講演会は前にリニア教祖の市川宏雄さんの話を聞きました。そのときも思いましたが、大半は役場職員や議員など動員なのです。今回もそうで、受付では名簿ができていてチェックをしていました。一般の住民も、参加してよいはずなのですが、市川さんのときは非常に少なかったです。今回は前より多かったですが、動員のほうが多いようでした。気になることは、なんで受付でチェックしなきゃならんのということ。しかも席が自治体別に区切ってあったりして、なんか野暮ったくありませんか。
(2015/06/09)
続きは ⇒ 神山、グリーンバレー (その2)