「リニアの夢」こそ後付けの建設賛成の理由

 最近、豊丘村の村長が議会の一般質問に、残土の埋めての反対は、リニアに反対するためにしているのだと答えて問題になっています。(参考)

 飯田市の上郷の住民の方たちが、リニア駅周辺整備に関連してしばしばいうことは、リニア飯田駅に1日6800人もの利用客があるだろうかということです。「リニア駅周辺整備基本構想(素案)」(H27.3.20 飯田市議会全員協議会 資料N0.7)の14ページには次のような説明があります。


 この説明で納得できるでしょうか。

 2015年8月6日に飯田と名古屋の間を結ぶ高速バスの利用者の累計が40年間で800万人になりました。1日当たりは約550人(800万÷40年=20万、20万÷365≒548人/日)。これは名古屋方面だけです。現行の高速バスは、東京方面は新宿行が飯田発が17本、駒ヶ根発が16本、飯田発横浜行が2本、飯田発立川行が4本、甲府行(名古屋始発)が3本で合計42本。一方、名古屋方面は22~26本(季節便が4本)です。ゆえに1日当たりの東京名古屋両方面の高速バス利用者は長年の実績としては、550+(550×42÷22) で1600人といったところでしょうか。運賃が高くやや遅い電車の利用がそれほどあるとは考えにくいし、自家用車利用が、6800-1600 の5200人もあるとは考えにくいです。そもそもリニアは公共交通で自家用車利用者がそのまま移る可能性も大きくないはず。多くの人はこの6800という数字に疑問を持っています。

 これまで何回かあった説明会で住民が6800人の根拠を説明してほしいと質問をしています。しかし、飯田市の説明は上の文書の範囲でしかなかったようです(※)。推計方法は難しいので一般市民にはわからないからこの説明でよいのだという認識が飯田市職員にはあるのだろうと思います。具体的に理解をお願いできないこと、自分自身が理解できないことは、特に公的機関が住民に押し付けることをしてはいけないというのが民主主義の基本だと思います。

※ 最近になってもJR東海はリニアは1編成1000人定員(16両編成)といっています。しかし、現在実験線では12両編成までしか試験していないはずで、12両編成ならば定員は728人です。また、ダイヤについて確定的なことは申し上げれないといっています。

 北陸新幹線の飯山駅は予測で1日1300人の利用が実際は500人という数字がでたころ、新聞では予測ではなく目標が1300人だと書いていました。予測と目標は違うはず。

 JR東海は本当は中間駅など造りたくなかったはず。中間駅は地元が350億円出して造れといっていたはず。それは中間駅の利用者は期待できないので採算に合わないということ。

 何とかビジョンによる推計とかいうものは結局、一般市民を煙に巻くためなのではないか。

 さらに、リニアの問題を検討した国土交通省の審議会で、リニアの建設目的は何度か途中で変更されたそうです。

 とすれば、リニアによる「地元への利益」というものこそがリニア建設促進のために「後付けで」考えられたものではないか。

 長年、多額の費用を使って開発し、営業路線を兼ねた実験線まで作ってしまった。取りやめては沽券にかかわる。大手ゼネコンの仕事が少なくなってきているから、リニアの大規模な工事は難工事ではあっても願ったり叶ったり。あるいは官僚政治の慣性の法則だけで動いているのか。本当の建設理由はそんなところ。

 下平村長や牧野市長が語る「リニアの夢」こそが「後付けの理由」。

(2016/03/22)