利用客6,800人は虚妄の数字

議論はデタラメ

 飯田市のリニア駅周辺整備基本構想検討会議のページに会議録があるので「6,800人」についてどういう議論がされたか拾って見ました。書き抜きのない会合では会議録に「6,800人」という数字は出てきません。

 現状ではどれほどの人々が名古屋や東京方面へ出かけたり、その逆に人々が訪れているのか、そういう数字について話が出ていないことは驚きです。また学識経験者である議長の最初の発言は6,800人の内訳も確認せずにいっている可能性があり、そうだとすれば無責任です。予測数字というのは希望数字ではないはず。長野県安藤委員の最後の発言によれば、6,800は具体的な根拠のない希望数字と言わざるを得ないと思います。「6,800人」については総じて議論はデタラメ。駅前の整備計画についてこのような無責任な議論が行われて、長い時間かけて出来上がって来た地域が壊されることはまったくおかしいと思います。

 太平洋戦争直前の政府大本営連絡会議の様子を描いたこの動画(あの戦争は何だったのか9)の1分25秒からはじまる議論に似ていると思いました。

 北条の説明会の翌日、3月14日の「リニア駅周辺整備検討会議」について説明会の中で話が出たので、その会議で「6,800」についてのやり取りを調べようとリニア駅周辺整備検討会議のページを見ましたが、会議録はありません。

(2016/03/29)

「6800」の意外な根拠?

(補足 2016/03/29) 1日に飯田発の高速バスの便数は68便(東京方面42+名古屋方面26なら)。各便1号車のみで定員50名とすれば、50×68で3400、発着両方で、3400×2。奇しくも 「6800」。(※ここで「飯田発」といっているのは「商工会館」発と「上飯田」停車=上伊那または名古屋発の両方)


(補足 2016/03/30、2016/03/31 一部改訂)

リニア駅前駐車場の750台は妥当
とすれば利用者6800名はありえない

 飯田市のリニア推進課に聞いたところ、現状の利用客について概略の数字として、JR飯田駅の1日の乗降客数は約1000人、高速バスの利用者は、名古屋方面が年間19万人、新宿方面が55万人(上伊那分=24万と飯田分=31万)だそうです。飯田線については通勤通学と近距離利用がほとんどと思われます。高速バスについて1日当たりを計算すると新宿方面の上伊那分も含めると19万+55万=74万、74万÷365≒2027人、上伊那分を除くと19万+31万=50万、50万÷365≒1370人となります。名古屋線の実績、40年間で800万人をもとに推測した数値約1600人はいい線いっているといえます。

 さて、信南交通のページに次のようなことが書いてありました。

飯田と名古屋を結ぶ定期バスは昭和13年(1938年)5月、信南交通の前身である南信自動車株式会社が足助・稲武を経由して1日3往復、所要時間5時間30分で運行した「名飯急行バス」が始まりとなります。
1941年9月石油統制による運行中止を経て、1952年7月に運行を再開、昭和50年(1975年)8月、中央自動車道開通に伴い同年8月24日に中央道高速バス飯田-名古屋線として運行を開始しました。
現在では1日15往復、最短1時間58分で飯田-名古屋間を結んでいます。
(「高速バス 名古屋線開設40周年記念キャンペーンのお知らせ」)

 2015年現在「1日15往復」となっているのは「飯田商工会館」発着の分で「箕輪」発着を合わせると22~26往復(内季節便が4)。15往復を基準に計算しなおしてみます。新宿便17、横浜便2、立川便4、甲府(※)便3の26往復が東京方面。26÷15≒1.733、1日当たりは約550人(800万÷40年=20万、20万÷365≒548人/日)ですから、2.733×550≒1503。これは乗降り双方ですから飯田下伊那からの利用者は約750。これはまさに、北条地区の駅周辺整備で計画されている駐車場の収容台数と同じ。リニアの利用客もせいぜい1日あたり1500人というのが行政当局が持っている本当の予測ではないでしょうか。利用客「6800人」はやっぱり疑問いっぱいの数字。

※ 甲府便は名古屋発、上飯田に停車、甲府着のJRバス。

 ここで注意すべきことは、1500人の利用者の半分は飯田から名古屋や東京方面に行く人なのですが、全部が全部、飯田下伊那の住人では無いはず。利用者中の飯伊の住民の割合はどれほどなのか。しかし、駐車場が必要なのは地域住民の利用者だけです。それが750台分いるというのは飯田周辺の人が750人出かけて、その750人が帰ってくることになる。

 とすれば、リニアによる「交流人口の増加」はどういう人々に期待するんでしょうか?

 とはいっても、「リニアが来れば良くなる」という根拠のない期待で打ち消すことができる話。しかしそれは、先に紹介したビデオで鈴木貞一企画院総裁が物資の状況は戦争すれば良くなるといっているのと同じ理屈に思えます。