黒田でリニアの地質調査ボーリング

ここが山林に見えますか?

 上郷黒田でリニアトンネルの地質調査のボーリングを目撃しました。写真1と2でわかるように、農業地と市街地が混在した場所です。この付近の地下をトンネルが通過するのは間違いないはずです。


写真1。画面クリックで拡大。中央の山が風越。


写真2。


 JR東海はこの部分のトンネルを山岳部のトンネルと称しています。この辺は大深度法が適用できる地域ではないので深さが120mほどでは当然地上の地権者の承諾がなければトンネルは掘れません。しかし、JR東海は中心線測量はしないといっています。つまり個々の地権者と地下を使うことについて正式に契約を取り交わさないといっているのです。他人の地下に工作物(この場合はトンネル)を保有したい場合は地上の地権者と交渉して区分地上権を設定することができます。リニアは公共交通機関ですから安全確保の点からは区分地上権を設定して地上の使用制限をする、いわば道義的な責任がJR東海にはあるはずです。また後で触れるような理由から、地権者にとっては土地にケチがつくのですから黙って掘るのはけしからんとなりますね。

 従来は山岳部のトンネルはたいていの場合は山林だったそうです。だから土地についての権利関係に関してはあいまいな手続きで済ませてきたようです()。しかし、このあたりは決して山林ではありません。

 この部分のトンネルについてJR東海は最初「NATM工法」(新オーストリア式トンネル掘削工法)を採用するといっていましたが、地質調査の結果地盤が軟弱な部分で採用する「シールド工法」に変更すると言い出しました。

 工法をかえるのは、トンネルの工事のやりやすさとトンネルそのものの保全について良いからなのでしょう。このあたりは中央アルプスの扇状地ですから、地質はまだ十分に固まっていないはずで水脈もあるはず。水の流れの変化などの地上への影響は変わるんですか、影響が少なくなるんですかという点については説明がないように思えます。もちろん、本坑口からシールドマシンを入れるので本坑口にあたる上郷北条では確実に被害が大きくなるはず。

 山岳部のトンネルという呼び方には、残土は有用な建築資材だから自治体で活用先を探してほしいという言い方同様に、JR東海の地域住民を「だまそうとする」意図が見えます。そこに気づかない地元自治体の理事者、役場の担当者はどうかしとるんじゃないかと思います。それから議員もね。

注: 新潟県内の国道バイパスのトンネル工事にあたり区分地上権を設定した「珍しい」例について、当時の担当者が書いています。トンネルの保全にあたっては、地山の土被りが薄く、トンネルの構造に影響を及ぼす範囲は坑口部として用地を取得し、必要に応じて構造物等を設置するなどしているが、坑口部以外については、一般的な山岳トンネルの場合、将来においても山林としての土地利用が通常であり、現状の使用収益への影響が極めて少ないと考えられる場合については、工事説明会などで地権者に対し工事内容等の説明を行い、トンネル掘削の了解を得た上で工事に着手し、特段の権利設定等は行っていない。(トンネル保全のための区分地上権設定について 松山信幸)

 今回のボーリングの場所と付近で行われた別のボーリングの位置を地図に落としてみました。

地図(Googleの航空写真)

 A は今回の場所、B は2014年の11月、C は2015年の11月ころ(ボーリング跡※)で、これはトンネルの本坑口のすぐそば。ところで、地図の上の方の D は2012年10月。ルートから随分離れているのがわかります。リニアのルートが示されたのはアセスメントの準備書が発表された2013年9月でした。つまり、アセスメント前の地質調査はてんで的外れの場所を調べていたのでは・・・。その結果、工法が変更になってきて、周辺住民への被害の予測も違ってきている。これでは、アセスメント段階からやり直す必要があるのではないかと思います。きちんと計画通りにやって突発事故が起きたというのではなく、きちんと調査せず、不十分な計画ではじめてみたら、うまくいきそうにない、ということなら中止が当然だと思います。

※ 画像は2016/08/17追加

 この航空写真からもこの地域が「山林」でないことは明らかですね。

(2016/06/20)

(2016/07/16) 7月16日には、やぐらなどはすでにありませんでした。