上海リニアについて

 上海のリニアは複線ですが、実は上り専用、下り専用の線路を走るのではなく、次の2枚の写真でわかるように終点まで行くと同じ線路を戻るという運行方法をしているようです。写真では列車は同じ向きに走っています。車体の下側の黒っぽい部分が見えているのが手前の線路、向こう側ではこれが見えません。


 こんな説明に、納得しちゃだめですよ(※)。写真だけで列車の走っている向きがわかりますか? この写真は次の動画から取り出したもの。7秒付近と38秒付近で確認してください。

 上海のリニアについていくつか動画を紹介します。日本では鉄道は新幹線も在来線も複線では列車は左側通行です。進行方向の右側に隣の線路があります。それぞれの動画では、リンクの頭に書いてある側を走っています。

 次のブログでは「上海のリニアはふつうの複線ではなく、双方向複線のようです。単線が2本あると思ってください。1本の線路に1編成の電車があって、それが同じ線路を行ったり来たり。それが2本ある状態です。ですので、ここの複線は左側通行とか右側通行とかは関係ありません。」と書いています。これでは、車両の数もそんなにいらないし・・・。まるで遊園地の乗り物みたいですね。国際博覧会に合わせて勢いで作ったのでそれはそれで仕方ないのかもしれませんが・・・。

 そして「このような運転だったら絶対に車両の衝突はありえませんが、鉄道屋、スジ屋としてのワザもありませんな。」というのは、難しいダイヤを組む必要はないという意味だと思います。実は、浮上式鉄道は列車を隣の線路に移すための設備である分岐装置が複雑でコストがかかるのに動作がトロすぎる(参考)ために、難しいダイヤは組めないという致命的な欠点があるんです。まあ、上海の場合、運行区間が中途半端に短いこともありますが。

(磁気浮上式鉄道では)数組の車両を、あるいは数本の線路を用いて運転するということになると、たちまち車両をある線路から他の線路に移すという問題が生じるのである。このために必要な分岐装置がきわめて複雑で高価であることを思えば、磁気浮上方式が高速鉄道に取って変ることが決してないだろうということを理解する一助となろう。(イギリスの鉄道ジャーナリスト・マレー・ヒューズ氏、マレー・ヒューズ著/菅健彦訳『レール300 世界の高速列車大競争』山海堂、1991年[原著は1987年])

 (3)の動画に「右側通行・カーブ通過」と書いておきましたが、1分50秒付近から、かなりきついカーブを時速300㎞以上で走っているのがわかると思います。最高速度をのぞけば、曲線部の半径とか登攀力などは、JR東海のリニア方式より、優れているようです(関連)。地形が複雑で国土が狭い日本向きだと思います。

 浮上式鉄道はどちらにしても我々が期待すべき鉄道ではないと思います。ドイツは自国での採用をやめたし、上海でも計画されていた延伸もされていません。


※ ネットでいろいろ見ているとこの程度のトリックでも、ひっかかる人はいます。

(2016/08/30)