更新:2017/07/24

駅周辺整備計画案へのパブリックコメント

 飯田市が作ったリニア中間駅周辺整備の案についてパブリックコメント募集があったので意見を出しました。5月10日が募集が締め切りで、6月1日に提出されたコメントと市の回答が公表されました。

 私も出しました(直接持参)ので原文をHTML版で紹介します。飯田市による、「要約」と「回答」を途中に挟みました。

 飯田市の回答を読んだ感想です。

(1)具体的な指摘に対して、決定過程の各段階で出てきた答申などを紹介しているだけで、具体的な反論がありません。つまり、市職員は市民にきちんとした説明をできるだけの知識がないか、私の指摘があたっていることを認めている。責任転嫁している。

(2)ヘリウムが一つの大きなネックだということを認めている部分があります。「国土交通省の第20回超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会(H29年2月)の中で、今後は既に確立している実用技術について、更なる快適性の向上や保守の効率化等を目指し、重点開発課題として・・・液体ヘリウム・液体窒素を用いない高温超電導磁石について、長期耐久性を検証したうえで営業車両への導入の可否を判断・・・が挙げられており、重点開発課題の開発工程や以下の事項を踏まえて平成34年度まで技術開発期間の延長が審議・了承され、現在も技術開発は進められている状況です。」JR東海も国交省も飯田市もリニア技術について根本的な部分で大きな懸念があることは認めた訳です。であるのに飯田市教育委員会や飯田信用金庫も関係する「おもしろ科学工房」は市内の小学校でリニアの超電導磁石の超電導物質は液体ヘリウムによる冷却の必要なマイナス269度ではなく液体窒素のマイナス196度で十分な物質を使うという大ウソを子供たちに喧伝しています。

(3)残土問題は現実に行き詰っているのに、何の対策も、方針も説明していない。

(4)駅の利用客の6800という数字について、「確度を持った数値を算出するのは現状では困難」だから「いくつかのアプローチにより、現時点で妥当と考えられる・・・①長野県による推計、②飯田市による推計、③JR東海が公表した需要予測の3つの異なる推計を総合的に勘案」と説明。といったって、3つとも数字が似通っているというのが「勘案」の内容。飯田市の行った推計の具体的なやり方を市民に分かりやすく説明すればよいと思います。市民の多くは現状の、飯田と東京、名古屋間での高速バスの利用実績約1300~1500をもとに6800は過大と評価しているのですからね。

(5)最初からリニア工事に直接かかわる住民に「何の相談もなく」はじまったリニア計画です。そこのところが全く解決できていない、飯田市は解決しようともしないのですが、「駅位置やルート等、技術的、自然条件的、環境的な観点から、パブリックコメント、県知事や国の意見も踏まえる中で、最終的には工事実施計画の国による認可という形の中で決定されており」と説明しています。「決まったことだ我慢しろ」は戦前や江戸時代の話です。「何の相談もなく」といういう住民の感覚が民主主義の今日では正しいものであって最優先されるべきです。「パブリックコメント」は反対が多数だったのですから、「パブリックコメントでは反対多数だったが無視して」と書くのが正しく、どの段階もスンナリ通ったような書き方は虚偽と言えます。民主主義の原則にもとづいて「工事実施計画の国による認可」についての行政訴訟が行われており、認可に当たっての法的な不備などが指摘されつつあるという事実もあります。

(6)リニアにそもそも反対という立場からのコメントも少数ながらあります。「リニアができる」というのは明らかに間違った前提です。前提が間違っているというコメントも、飯田市はこのように紹介しています。リニアに反対の方はこういう機会を大いに利用しましょう。ただし、意見は出来るだけロジカルに科学的に、あるいは自分の気持ちに正直に書きましょうね。機会のあるごとに、担当部署が悲鳴を上げるほど多数のコメントを送りましょう。飯田市は、こういう意見があることを、ともかく公表しなくてはならないのですから。


パブリックコメント

◎ 意見提出できるのは飯田市民と限定しているように取れますが、飯田市民の「大多数」がリニアで良い思いをするにあたっては、飯田市民の一部だけでなく、ひろく南信地域の少なくない住民が、ほとんどないに等しいリニアによる利益と、確実で多大な迷惑を享受する立場にあることを、飯田市当局は理解すべきです。また、飯田線の乗換駅新設その他の部分では上伊那地方の自治体首長の意見も取り入れているようにも思われます。私は飯田市民ではありませんが、隣町の住民として意見を提出するので真摯に受け取っていただきたいと思います。

◇ リニア計画が確実に実現するという前提は無謀

◎ 第1章の1.リニア中央新幹線の概要(p1)、について。超電導磁気浮上方式のリニア中央新幹線が技術的に実用段階にあるという前提でこの素案は成り立っていると思います。世界各国で第2次大戦前後頃には浮上式鉄道の発想はあって、それぞれ研究、実験など行われてきました。しかし、日本とドイツ以外の国々では早々に開発を止めています。その第一の理由は、浮上方式を実現するための軌道(JRリニアのガイドウェイや、トランスラピッドでは車輛が跨座するレール)の構造から、分岐装置が複雑で大型なものとなり、全国規模のネットワークを構築する上で致命的な欠陥となるからでした。つまり鉄の車輪と鉄のレールの組み合わせである従来方式の鉄道(新幹線、在来線を含む)の代替物とはなりえないと判断されたからです。短距離の区間では実現した例(愛知県のリニモ、上海リニア、ほか英国[現在は廃止]にも)がありますが、現在長距離区間での建設計画が実際に進んでいるのは日本だけです。トランスラピッドとJRリニアを比較すると、もっとも重要な違いは、車体を支持する力を働かせるコイルと磁石の間の間隔(ギャップ)の大きさです。トランスラピッドは10㎜、JRリニアは4~10㎝といわれています。磁力は距離の二乗に反比例しますから、ギャップの小さい方が少ない電力で大きな力を生ずることができます。(地震の多い日本では10㎝浮上の方が有利といわれますが、トランスラピッドはギャップは1㎝ですがガイドウェイ=路面からのクリアランスは15㎝です。単に10㎝と1㎝を比較しても無意味なのです。流布されているのは地震に対する耐性で10㎝と1㎝のどちらが安全かという比較の言説で、これは論外です。)トランスラピッドは当時すでに各方面で実用化していたエレクトロニクスを利用して10㎜という小さなギャップ間隔を常に一定に維持する方式の開発に成功しました。距離センサーを用い電子的に電磁石に流す電流を制御してギャップ間隔を一定に保っています。一方JRリニアは、車載の非常に強力な超電導磁石の磁力と、超電導磁石と地上コイルの相対的運動により地上コイルに生じる誘導磁場との反発を利用して浮上させています。上下(浮上)は超電導磁石と8の字型の地上コイルとのあいだの反発力(8の字の下半分)と吸引力(8の字の上半分)のバランス、左右(案内)は超電導磁石と左右の8の字の地上コイルとのあいだの反発力のバランスで位置が決まるようになっています。つまりバネによって支えられているのと同じ状態です。左右について言えば車体が右ずれると左に押し戻す力が働き、左に行けば右に押しています(ヌルフラックス)。いってみれば、「成り行き任せ」なのです。ゆえに10㎝という大きなギャップが必要なのです。従来の鉄道が高速走行をする場合に安全性の点で大きな問題であったのは蛇行動(ハンチングオシレーション、自励震動)です。 [注:飯田市のHPのファイルの「蛇運動」は飯田市の写し間違い] ひどい場合は脱線します。従来の鉄道の左右方向の案内は車輪がレールと接触する面(踏面)の傾斜によって実現されています。車輪のフランジ(つば)は通常はレールの内側に接触していません。踏面の傾斜は内側が高く外側が低くなっているので、車体の重みにより車輪(車軸)は、左右に寄っても、常にレールの中央に戻ろうとします。これはJRリニアのヌルフラックス方式と同じ理屈です。これも、いってみれば、「成り行き任せ」なのです。したがって、従来の鉄道で問題であったハンチングオシレーションについては原理的には克服できなかったのです。と言うのは、浮上式にすればハンチングオシレーションが原理的に回避でき高速走行に資するという目論見もあったからです。体験乗車をした人が訴える振動あるいは揺れが気になったというのはこれが大きな原因です。また、鉄の車輪と鉄のレールはいたって簡単な構造です。くらべて超電導磁石は精密機械といって良いくらいの複雑で高度な機械です。列車の重量を支えるという過酷な用途に使用するには基本的に適当なものとはいえません。さらに、当面開業予定までに脱ヘリウム化の見通しはなく、希少資源であるヘリウムが無ければ走れないというJRリニアの信頼性は極めて低いといわざるを得ず、1990年頃から2000年頃に、リニア計画の先行きが怪しくなったのは「筋の良くない技術」ともいわれるこれらの技術的な問題と経済性に起因するものだったといえるでしょう。最近、実現段階になって、直線ルートが原因のトンネル部の長さからくる残土処理でリニア計画は行き詰まり感があります。JR東海は残土は活用できる資源と喧伝していますが、2027年までという短い期間に、排出する残土の総量を消費しうるようなほかの建設事業がどれほどあるかの予測さえせず、現実にはほぼ全量を廃棄物として処理しなくてはならず、その置場は長野県内においては事実上ほとんどが谷であり、土石流災害や地震による崩壊がおおいに懸念されるものです。住民としてはリニアの賛否に関わらず容認できるものではありません。リニアの直線のルートが必須という技術的な制約に起因するものです。したがって、リニアは日本の国土にはまったく適していない鉄道方式といえ、実現の可能性はないと判断するべきものです。付け加えると、JRリニアの方式は、超電導磁石を用いた電磁力学方式(エレクトロダイナミック)と呼ばれますが、この基本特許は1968年にアメリカエネルギー省のブルックヘブン国立研究所のパウエルとダンビーという研究者が取得しています。しかし、広大で平坦な場所の多いアメリカであっても実用化の研究開発は早々に終わっています。経済性が低いからです。車と飛行機の普及したアメリカだからという理由は正しいものとは言えません。アメリカは世界一の営業距離を有する鉄道大国です。また、電子制御技術を活用したトランスラピッドは、JRリニアより省電力なことはもちろん、ドイツ国鉄の高速列車ICE3より省電力です。このトランスラピッドでさえ、国会による再検討の結果ドイツ国内での採用は中止となり、上海のリニアも当初の計画どおりには完成しておらず、途中で終わってしまった状態です。浮上方式鉄道に未来はありません。

◎ リニアの作業トンネルの掘削が大鹿で一応始まりました。環境影響評価について環境大臣の意見書は、「廃棄物」の筆頭にトンネル掘削残土を取り上げています。この意見書は残土処理の解決策が未解決のまま、将来に渡り解決できないままに行われるリニア事業について、「環境の保全を内部化しない技術に未来はない」と厳しい見解を示しています。その後、長野県内での残土の取り扱いを巡って、県や関係自治体の間で行われた調整過程では、表向きは残土の有効活用先を探すといいつつ、大半は最終処分場の選定であって、特にすべて谷埋めになるので災害の危険を考えれば、相当慎重な検討をしなくてはならないはずなのに、JR東海と地権者との一対一の契約という段階、その後の保安林指定解除など通常の法的手続きだけですまそうという、住民の安全を考慮しないやり方は非常に心配なものです。ゆえに埋立地の下流の住民の反発は必至で、JR東海と地権者との一対一の契約ということからすれば、地権者が拒否するなど、JR東海や県リニア振興部としても不確定要素が大きいといえ、事実としても大量の排出残土の処分先は無いし、これからも見込みはないはずで、したがって、南アのトンネルの掘削の困難さのみでなく、残土の問題でトンネルは掘れないという事実を認めるべきだと思います。したがって、建設工事の面でリニア計画は頓挫すると考えるべきです。

◎ 超電導リニアは日本の誇る先端技術という評価が流布しています。しかし、リニアのような重工長大なものを造る産業に日本経済がいつまでも依存し続けて良いかという点で懸念を示す経済学者がいます。彼らの中にはリニアをかって日本海軍が航空母艦中心の機動部隊を用いた作戦の有効性を自ら証明しながら、戦艦大和、武蔵という大鑑巨砲主義から抜け出ることができなかったことになぞらえる人もいます。JRリニアは地上一次方式を採用せざるを得ないため、従来の鉄道なら列車の床下器具として設備できるインバータを3~4ヘクタールの面積が必要な電力変換所(豊丘・柏原、大鹿・上蔵)、さらにそこへ給電するための中電の新たな超高圧変電所(豊丘・佐原)、これは駒ヶ根市中沢の南信変電所あつかう電力の7割という大規模なもので、さらにガイドウェイの製造に8年間だけ一次的に使用する12ヘクタールの土地が必要など、土地の有効利用という点でも極めて不合理で、これからの産業社会で許されることではないといえます。

(飯田市による要約)

・リニア計画が確実に実現するという前提は無謀であり、超電導磁石は高度な機械であり列車の重量を支えるという過酷な用途に向かないこと、諸外国はすでに断念していること、希少資源であるヘリウムが無ければ走れないため信頼性が低いこと、残土処理が未解決であること、大量の電力や土地が必要であり不合理であること等から、リニアに未来なく計画をやめるべき。

飯田市の回答

・ リニア中央新幹線については、全国新幹線鉄道整備法に基づき、昭和48年に基本計画が決定されて以来、飯田下伊那地域では、他に先駆けて期成同盟会を組織し、早期実現と飯田駅設置に向けて取り組んできた経過があります。

・リニア中央新幹線の実用化に向けた実験やルート選定のための地形・地質等の調査が長く続けられる中、平成19年12月、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)が「全額自己負担を前提に中央新幹線を促進する」と発表したことから、リニア中央新幹線の実現に向け大きく前進しました。平成22年2月には、国土交通大臣が交通政策審議会に対して諮問し、同審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会による検討を経て、平成23年5月にJR東海が営業主体及び建設主体に指名され、JR東海に対して建設の指示がなされました。このことから、当地をリニア中央新幹線が通過することが確実となっています。

・超電導リニアの技術開発については、平成2年の運輸大臣通達(当時)に基づき、JR東海と鉄道総研が共同で作成した「超電導磁気浮上方式鉄道技術開発基本計画(H2~H28)」により推進されてきました。平成28年度までに他の交通機関に対して一定の競争力を有する超高速大量輸送システムとして実用化の技術を確立することを目指した同基本計画は、平成21年7月の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会において「超高速大量輸送システムとして運用面も含めた実用化の技術の確立の見通しが得られており、営業線に必要となる技術が網羅的、体系的に整備され、今後詳細な営業線仕様及び技術基準等の策定を具体的に進めることが可能となった」と評価され、平成23年5月に、全幹法に基づく整備計画における中央新幹線の走行方式として超電導リニア方式が採用された経過があります。

・国土交通省の第20回超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会(H29年2月)の中で、今後は既に確立している実用技術について、更なる快適性の向上や保守の効率化等を目指し、重点開発課題として、①更なる保守のコスト低減や効率化に向け、不具合の予兆検知や検査の効率化・代替など、営業車両等を活用した保守体系の確立及び検証、②液体ヘリウム・液体窒素を用いない高温超電導磁石について、長期耐久性を検証したうえで営業車両への導入の可否を判断、③輸送システムとしての快適性の更なる向上に向けて、車内振動や車内騒音などをより低減させるほか、車内環境圧力変化の改善(耳ツン対策)が挙げられており、重点開発課題の開発工程や以下の事項を踏まえて平成34年度まで技術開発期間の延長が審議・了承され、現在も技術開発は進められている状況です。

・長野県においては、平成39年(2027年)に東京都・名古屋市間で開業が予定されているリニア中央新幹線による時間短縮効果は、長野県に大きなメリットをもたらすと見込んでおり、その整備効果を広く県内に波及させることが、長野県の発展につながることから、「リニアを見据えた地域づくりの指針」として、「長野県リニア活用基本構想」を策定しています。また、リニア中央新幹線の駅勢圏(鉄道駅を中心としてその駅を利用する人が存在する範囲)や交通網、更には地域によって異なる自然、文化、産業などを背景に、地域の特性に応じたリニア整備効果が期待できるとしており、長野県駅の駅勢圏である「伊那谷交流圏」、長野県駅・山梨県駅・岐阜県駅の駅勢圏である「リニア3駅活用交流圏」、そして長野県全域を対象とする「本州中央部広域交流圏」という3つの重層的な交流圏を設定し、これらの交流圏の実現に向けた取り組みを進めています。

・また南信州広域連合においては、、平成22年11月に地域住民や有識者による検討会議を経て、飯田下伊那地域の将来に向けた地域づくりの指針であり、リニア中央新幹線を見据えた将来像を描く「リニア将来ビジョン」を策定しています。移動時間の大幅な短縮による産業立地の可能性向上や交流人口の拡大などのプラス効果が期待される一方で、いわゆるストロー現象などのマイナスの影響も心配されるため、こうした二面性のあるリニア効果に対しては、プラス面を最大限に活かし、マイナス面を最小限に抑えるための地域づくりの取組が重要である、としています。

・なお発生土置き場につきましては、長野県がとりまとめた候補地の中から、現在、JR東海が活用先として有力と捉えている場所について、引き続き関係地区と調整中です。飯田市においては、下久堅地区、龍江地区の2か所で調整しており、JR東海に対して、地権者及び周辺の住民に不安を与えることがないよう、安全面に万全を期した計画となるよう要望しています。

◇ 希望と予測は区別すべき

◎ 第1章の2. リニア開業による効果(p4)、について。リニア駅乗降者数の設定を6,800人と見積もっていますが、現状の高速バス利用者数は、新宿線905人と名古屋線514人、飯田線飯田駅の利用者が971人(平成22年度)ですが、JR飯田駅は通勤通学がほとんど思うので、約1400人がリニアの利用者に相当する部分だといえるわけで、リニア開通で利用者数が4.85倍に増えるというのはこれまで市が説明した内容では到底納得できません。多くの市民が納得していません。この数字6800については、バス事業者である信南交通の社長も過大ではないかと疑問を出していたはずです。「4.85倍に増加した時に間に合うように」は理由になりませんよ。過大な期待で過大な施設をつくるのは無駄です。マスコミから知る限り、北陸新幹線の飯山駅の利用客数はいつのまにか「予想」から「目標」にかわったようです。

◎ 第1章の5.リニア駅周辺整備を検討する区域(p4)、について。この地域の西の端は段丘に接しており、土砂災害の懸念される地域です。移転対象者の移転先も含めこの地域内でという考えがあるようですが、リニア本線と関連施設、さらに周辺整備に必要な面積を差し引くと、この地域の実質的な可住部分の人口密度は高くなるはずです。したがって、崩壊土石の広がる余地も少なくなるのですから、災害時の人的被害は現在より大きくなる可能性があります。ゆえに本来、駅を設置する場所として適しておらず、したがって駅周辺整備の場所としては不適切です。さて、根本的に、東京・名古屋・大阪を最短で結ぶ交通機関という発想そのものに中間駅の位置を選定するにあたり、地域の裁量はないに等しいと考えるべきです。これはまさに地方自治の無視と言わざるを得ないと思います。飯田下伊那地域の地域特性にあった独自の発展がリニア計画により阻害されることは非常に残念です。

◎ 第3章の1.リニア駅周辺整備基本構想の概要について。「伊那谷の個性で世界を惹きつけ・・・」の言葉がありますが、リニアのルートによって「座光寺の農村原風景継承地域」(飯田市歴史研究所の「わが町の建築史ゼミ」 )が失われることになります。伊那谷南部の中心的位置に歴史的な農村景観がほとんど破壊されることなくなく残されている貴重な「文化的景観」(文化庁)地域と言えます。そういう地域を破壊しておいて、「伊那谷の個性で世界を惹きつけ・・・」とは笑止千万としか言いようがなく、そういう破壊を前提としているこの整備計画にはまったく同意できません。

◎ 「リニアを千載一遇のチャンスととらえ・・・」と言いますが、それは、昔の真空管の時代のラジオやテレビが不調の時にキャビネットをひっぱたくとなおったといった考え方に等しいと思います。飯田市は人口減少にいろいろな方策をしても将来的には人口減は避けられないという予測があるようですが、一方、何も大きな対策をしているようには見えない周辺村部で人口が現実に増えているという例を聞きます。それは住民の身の丈に合ったやり方が功を奏したものではないでしょうか。なんだかわからない外力で、テレビやラジオをひっぱたくようなやり方が通用するとは思えません。

(飯田市による要約)

・リニア駅乗降者数の6,800人という設定が納得いかず、過大な期待で過大な施設をつくるのは無駄ではないか。

・リニア駅周辺整備の検討区域は、土砂災害が懸念されるため駅を設置する場所として適していないのではないか。

・リニアのルートによって「座光寺の農村原風景継承地域」が失われるのに、「伊那谷の個性で世界を惹きつけ」るというのは、おかしいのではないか。

・「リニアを千載一遇のチャンスととらえ」るのは、おかしいのではないか。

飯田市の回答

・こうした各計画や検討経過を踏まえて、飯田市においてもリニアの整備効果を最大限地域振興につなげていく取組の一環として、平成27年6月8日、リニア駅周辺整備基本構想を策定しました。本構想で掲げる目指す姿「信州・伊那谷の個性で世界を惹きつけ、世界へ発信する玄関口」の実現に向けて取り組んでおり、今回のリニア駅周辺整備基本計画においても目指す姿を継承し、リニアを推進する立場から計画を進めています。

・JR東海が進めるリニア中央新幹線事業については、飯田市としても現在の状況を踏まえつつ対応していますが、駅位置やルート等、技術的、自然条件的、環境的な観点から、パブリックコメント、県知事や国の意見も踏まえる中で、最終的には工事実施計画の国による認可という形の中で決定されており、その可否については基本計画の検討範囲外であることから、原案のままとします。

「・なお発生土置き場につきましては・・・」の本来の位置。

・リニア駅周辺のリニア駅の乗降者数は、平成27年6月に策定した「リニア駅周辺整備基本構想」において、バス運行計画の検討や、バス及びタクシーの乗降・待機スペース、駐車場などの規模を検討する上での土台である一方、「リニアの運行本数」、「社会情勢」、「人々を誘因する地域の魅力づくり」などによって変動するため、確度を持った数値を算出するのは現状では困難あることから、いくつかのアプローチにより、現時点で妥当と考えられる数値を採用しています。①長野県による推計、②飯田市による推計、③JR東海が公表した需要予測の3つの異なる推計を総合的に勘案し、『乗降者数6,800人/日』と設定しており、①、②では、国土交通省「全国幹線旅客純流動調査」による広域の人の移動の実態をもとに、将来的な人口減少(国立社会保障・人口問題研究所による推計)、リニアによる移動時間、リニア運賃などを仮定してリニア乗降者数を推計しています。このため、社会情勢の大きな変化が発生する等の事情がない限り、妥当であるとの判断しています。

◇ JR東海の手口には最大限の注意が必要

◎ 4月21日にはJR東海はいまだに保安林解除申請さえしていない豊丘村の山林の残土埋め立て予定地で環境対策の一環とはいえ、林務部の承諾を取らずに希少植物を移植するためと称し持ち去るという暴挙をおこない、林務部から注意を受けています。子の予定地については下流の住民の反発やそのほかの理由によりJR東海が残土を置けない可能性が非常に高いのです。大鹿のトンネル掘削に関しても周辺住民への連絡も遅れ、長野県知事や飯田市長も苦言を呈したはず。JR東海はそういうでたらめな会社であるということを飯田市職員諸氏はよく考えてほしいです。市民の側に立つのかJR東海の側に立つのか2つに1つだと思います。

◎ 現在、リニア建設の認可について、国交省に認可取り消しを求める行政訴訟が進行中です。認可の根拠とした全幹法で本当に認可できるものなのか、 安全性、採算性、事業計画の妥当性の法的な根拠はあるのか、認可した内容の具体性の不透明な部分について証拠の提示などの点で、国交省側は苦しい立場にあります。法的にも極めて不透明な事業であります。鉄道小委員会の答申直前のパブコメでも反対のコメントが大多数であったのに何も考慮しなかったことなどは、また民主的な決定過程を軽んずるものでもありました。

◇ 第2の中津川線か、はたまたインパール作戦か

◎ 2013年秋、ルートを正式発表したとき、当時のJR東海の山田佳臣社長は「リニアはペイしない」と発言しました。その後、JR東海の社員は説明会でこのことを問われると、新幹線と両方を運営するのだから大丈夫と回答しております。しかし、言ってみれば、あたらな赤字線を抱えることになるわけで、企業の収益率は必ず減るはずです。普通の企業経営者であれば考えられないことです。経営の独自性といいつつも早期の大阪延伸が政治的要求に、国からの3兆円の支援を受け入れるというのは、実施の所はリニア建設の費用計画にかなり無理があるとみるべきではないでしょうか。この計画を実行しようとするJR東海の本当の理由は経済的に合理性が説明できるものとは思えません。インパール作戦も目的、手段が不確かなままに実行され、とくに兵站を考慮せずだ失敗の作戦となって多数の犠牲者を出しました。インパール作戦もリニア計画と同様にビルマ・インドの間のアラカン山地を越えようとした点もよく似ています。

◎ リニア計画が中津川線のように頓挫した場合を考えるべきです。万が一はあり得ると考えるべきです。それを見通すのが地方の行政や政治ではありませんか。リニア計画も必ず頓挫します。そのことこそをしっかり見据えて私たちの郷土をどうやったら守れるかを第一番に考えていただきたい。駅周辺整備など、あかり部の建設は、南アのトンネルの完成をまってからで良いのです。

リニアの問題は、伊那谷住民とっては、血を流さずに肉を切り取れるかという問題だと思います。

リニア計画が本当に実現可能なものか検討せずにリニア関連の施策を計画・実行するのは極めて危険なことですから、ぜひ飯田市として、リニア計画について批判的・科学的に検討される部署を早急に設置されることを熱望します。

以上

(飯田市による要約)

・JR東海の手口には最大限の注意が必要であり、でたらめな会社である。リニア建設の認可についても、法的に極めて不透明な事業であること、リニア建設の費用計画にかなり無理があることから、リニア計画は必ず頓挫するため、郷土を守るために、駅周辺整備の建設は南アルプストンネルの完成後で良いのではないか。

・リニア計画が本当に実現可能なものか検討せずにリニア関連の施策を計画・実行するのは極めて危険であり、リニア計画について批判的・科学的に検討される部署を早急に設置したらどうか。

飯田市の回答

・JR東海が進めるリニア中央新幹線事業については、飯田市としても現在の状況を踏まえつつ対応していますが、駅位置やルート等、技術的、自然条件的、環境的な観点から、パブリックコメント、県知事や国の意見も踏まえる中で、最終的には工事実施計画の国による認可という形の中で決定されており、その可否については基本計画の検討範囲外であることから、原案のままとします。

(2017/07/24)