2017/07/25 更新

第9回 豊丘村リニア対策委員会、7月20日

村長と組合長はJR東海の手下?

 7月20日に第9回豊丘村リニア対策委員会が豊丘村福祉センターでありました。傍聴した方によると2つの大きな問題点があったようです。

希少種の移植について

 報道されませんでしたが、4月21日にJR東海は本山の残土置場予定地で希少種の移植作業を行いました。私と仲間が偶然ですが、現場を目撃しました。長野県の環境部、林務課ともに、JR東海に作業を行ったことを確認しています。ただし、長野県が作業の具体的な日程を把握していなかったことは明らかです。

 移植は上手くいかない場合が多く、環境保全対策としては最終的な手段とされます。長野五輪ではかなり失敗があったといわれています。環境影響評価法の本旨は環境保全ですから、事業者として、保全計画に記載したからといって、工事が本決まりになっていない時点で移植作業はすべきではありませんでした。これは一般論としてです。

 現実問題として、本山の使用は当面できません。生産森林組合の立て直しが済むまでは契約の主体になり得る「地権者」がいないのですからあたりまえです。生産森林組合を指導する立場にある長野県が残土受け入れの決定は無効としています。事情に詳しい人によると、再建には2年や3年はかかるそうです。ある人は、組合員の資格の失効した人たちの権利関係で裁判など起これば10年くらい先延ばしになる可能性もあるといいます。何時工事が出来るかわからない。JR東海が他の置き場を見つけることができれば、本山は使わないので、結局、4月21日の移植はまったく無意味と言えるわけです。これは、4月21日の時点で予測できたことです。つまりJR東海の行為は極めて違法に近い不当なものです。

 この件で対策委員の一人吉川村議が質問をしています。

吉川村議:JR東海の行った環境調査に対する県からの助言に対する回答をいつしたのか
JR東海:5月17日
吉川村議:5月17日の時点で保全の方法として書かれている移植作業が行われていたと聞いているが事実か
JR東海:4月に行った
吉川村議:JR東海が県の助言に対する回答以前に計画に盛られた移植作用を実施したというのは手続き的におかしいのではないか
JR東海:2月に影響検討書を作成した時点で移植は必要と考えており、県に報告したが技術委員会でも専門家から直接的な指導助言はなかったので移植しても良いと判断し作業をした
吉川村議:そういう考え方は間違っていると思う。この話は初めて聞く。説明も初めて聞いた。こういう説明を移植の前に・・・

 ここまでは、正常に議論が進んできたのですが、本山生産森林組合の組合長だった長谷川伴野区長が挙手もせず吉川村議の発言の途中で不規則発言を始めました。

長谷川伴野区長:前にも移植の話はあったじゃないか。なにいっとるのよおまえは
吉川村議:どこのお話ですか
長谷川伴野区長:これまでもあった、移植するって話は。これまでの話を聞いとれよ。
吉川村議:そうでしたか。
長谷川伴野区長:さらに、それを県で指導してもらって、そして今、新たな方法で移植でもっていくんじゃないか。移植するって話は前からずっとあるじゃないか。初めての話じゃないよ。
吉川村議:こういう正式の文書で出てきたのは初めてだと思います。
長谷川伴野区長:長野県から助言を受けたもんでそれをこうするよっていうことを出しとるだけだよ。最初から、移植をするっていうことは言っているよ。
吉川村議:そうでしたか
長谷川伴野区長:勉強しろよ、少し
吉川村議:まあ、記憶違いがあればと思いますが、もう一度確認したいと思います・・・

 ここで意外なことに、議事進行をしていた対策委員会の市瀬会長がこともあろうか、不規則発言をした長谷川伴野区長に確認しています。傍聴した人が言うには長谷川区長は非常に強圧的な態度で不規則発言をしたそうです。そのためかどうか、後日吉川村議は体調を崩したそうです。

市瀬会長:長谷川さん、いい? そのこと。よろしいですか?
長谷川伴野区長:(無言)
市瀬会長:移植はもうすること、それは決まっていたと、いうことですけど・・・えーと、ほかにどうですか?

 他の対策委員はこのやり取りの間だまっていたそうです。長谷川伴野区長はさまざまの場で相手が弱いとみれば強圧的な態度をとることがあるそうですが、それを公の場で許しているのはまずいですね。

 JR東海の「2月に影響検討書を作成した時点で移植は必要と考えており、県に報告したが技術委員会でも専門家から直接的な指導助言はなかったので移植しても良いと判断し作業をした」という発言ですが、これは「条文で禁止されていないからやっちゃった」といってるのと同じです。環境保全という立場でいえば、環境保全対策は工事をするからです、工事をしない可能性がある、確実に工事ができる段階にないのであれば、やらないのが当たり前です。特に移植についてはすべきでない。環境影響評価法の第1条から3条あたりを読めば当たり前のことです。改めて禁止する必要もないくらいわかりきったことです。JR東海は法律の専門家が多いです。そういう点で質の悪い企業だといえます。長野県だって、保安林指定の解除申請を提出する前はダメといっています(時期の基準としてかなり疑問はありますが)が、その解除申請は4月21日は出ていませんでした。

 長谷川さんの方がどうも勉強不足。権力者側の下っ端には知識がないのに威張り散らす人物がときとしていますね。安倍さんが倒れたら「リニア」は錦の御旗から「世界○大無用の長物」になります。

下平村長の無茶苦茶な理屈

「組織決定の必要はない」ってなんのこと?

 対策員会の席上、本山の残土置場について下平村長は次のような見解を示しました。

「本山発生土置き場」に対する豊丘村の見解ということでございます。まあ議会一般質問でも出ましていろいろとお答えしたわけですけれども、村としての正式の見解をこの場で発表させて頂きたいと思います。本山生産森林組合所有の所有地の発生土置き場候補地に対する豊丘村の見解ということでございます。平成25年4月5日当時の本山生産森林組合組合長菅沼和明氏から村へ提出された発生土処分地の要望書により村ではその場所を候補地に適する場所として長野県に報告しその後長野県からJR東海に候補地の報告がされているものです。本山生産森林組合では5月18日にJR東海に対し土地使用同意の撤回を通告してありますが、村ではこの土地使用同意撤回と平成25年4月の発生土処分候補地の要望書の取り下げとは別物であると考えています。これは、本山候補地の要望に際しては、組合の意思決定手続きに瑕疵があったものの組織決定の必要はないことから処分地の要望自体は有効と判断しているからです。従って候補地としての本山は、継続しているものと認識していますので、これまでの村の見解を述べさせて頂きました。以上です。

 整理すると:

 平成25年4月5日当時も生産森林組合は組織運営上問題があったので組合長菅沼和明氏からの要望は無効です。村長は「組合の意思決定手続きに瑕疵があった」と認めている。

 市町村から長野県への残土処分候補地の情報提供は、文字通り情報提供のみであって、情報を提供したとしても残土を引き受ける義務はないと長野県はいっていました。また、地権者の承認や下流域住民の承認など得る必要はなく庁舎内担当者のわかる範囲で良いともいっています。情報提供を盾に「有効」だの「継続」だのと頑張るのは、村長に何らかの意図、リニアに協力しなくちゃねという気持ちがあるからで、豊丘村長という住民を代表する地位にあるものがやるべきことじゃないです。

 また、豊丘村は情報提供の正式の書式では報告をしていません。リニア振興部が豊丘村を訪問し、聞き取り調査をした報告書類が残っているだけです。源道地の件では、申請した書類が存在しないので撤回のしようがないといわれました。谷埋め盛り土は土砂災害の危険があります。住民の安全を考えると、こんな大事な問題について、非常にイージーな方法で情報を提供するよう求めた長野県と、それに安易に応じた豊丘村の理事者の姿勢は糾弾されても仕方ないでしょう。

 結局のところ、残土捨て場は、JR東海と地権者の間の話し合いだけで決まることですから、県も自治体も情報を提供することしかできない。村長が根拠もないことで有効だとかどうだとか言う権利は全くない。

JR東海は知らなかったのか?

 今、豊丘村の対岸の高森町では、産科医院、子育て支援施設などの複合施設の建設が始まっています。この施設を実際に運営する法人について、任せて大丈夫なのかという声が町民から出ています。この法人の財務内容について町は調べたかと議員が質問すると調べていないけれど大丈夫だと答えたそうです。

 さて、JR東海は本山候補地の地権者の組織内容について、地権者としての資格が十分なものかどうか調べなかったのでしょうか。少なくともJR東海の社内では問題になってもよさそうなのですが。あるいは、そういう無法な運営が常態化している組合だからこそ候補地の「権利者」としてふさわしい、くみしやすいと考えたのかも知れません。

住民対策委員会?

 委員はほとんどが他の役職兼務です。出席すれば、1回数千円のお小遣いもでます。リニアのことを全然知らない、知ろうともしない委員がほとんどです。会議が早く終われば良いと思っているので発言はしません。しかし村としては民主的体裁は保てるわけです。今度のような横暴な委員の行動に対しても黙っている。村民の中には、対策委員会の議論の様子をみて、リニア対策じゃなくて、住民対策委員会じゃないかといっている人もいます。

新聞報道

『信毎』7月21日『中日』7月22日『南信州』7月22日

(2017/07/25)