高森のガイドウェイ組立ヤードはアセスと矛盾
環境影響評価書で工事車両は通行しないと宣言した道路を通行するのは違法ではないか?
高森町の親水公園は環境影響評価をやり直すべき
かわせみの家(カヌーハウス、2014年撮影)
高森町の下市田河原にリニア新幹線のガイドウェイの組み立てヤードが予定されていることについては、当サイトでは何回かふれています。
JR東海と高森町は、ガイドウェイ組立ヤードに出入りする工事車両は隣接する農免道路から北方、明神橋方向の利用もあるとしています。そのために、高森町は惣兵衛堤防の北端と明神橋の間で道路改良工事を計画しています。移転や土地をとられる住民がでてくるはずです。また、道路改良に伴う交通量の増加で住宅地区の生活道路としての安全性が損なわれる、騒音振動など生活環境の悪化が予想されます。
しかし、これらも問題点なのですが、それ以前に、この道路をリニアの工事車両が通行することについては環境影響評価法上で問題がありそうです。次は、平成26年8月26日に出された環境影響評価書の最終版の、高森町の親水公園に関する部分です。
中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書(平成26年8月) の「第8章 環境影響評価の調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果」の「8-5-2 人と自然との触れ合い - 人と自然との触れ合いの活動の場(PDF4.3MB)」。(補正版評価書PDFの関係部分)
2段目に、「資材及び機械の運搬に用いる車両の運行ルート(国道153号線)から約500m離れた場所にあり・・・」と書いてあります。JR東海と高森町が、材料や完成品の搬入と搬出に使うといっているこの道路は親水公園とほぼ隣接しています。
黄色(※)が国道153号線。「03」の黒丸が親水公園。オレンジ色(※)の枠内がガイドウェイ組立ヤード。青(※)がJR東海と高森町が材料と完成品の搬入・搬出に使うといっている道路。(「環境影響評価書」の地図に※を書き加えました)
次はGoogleの航空写真。上が東になっています。画面をクリックすると拡大できます。
青は工事車両運行ルート。カヌーやマレットゴルフ、釣りなどで親水公園へ進入する車の入口(黄色矢印)はカヌーハウスの左方向(北)からと、惣兵衛堤防北端からですから、親水公園を利用する車の通行に対する影響は非常に大きいはず。
JR東海の長野県担当部長は影響評価書は住民に対する宣言をする公文書であって、これ以外に自治体との間で環境協定などを結ぶ考えはないと言い切っていました。そういう文書の中で、親水公園の500m以内は工事関係車両は通らないから影響がないといっているのですから、農免道路を使って明神橋方面へガイドウェイ組立ヤードへ関係車両が出入りするのは、明らかに約束違反だと思います。
また関係車両が見えないとも書いてありますが、出砂原堤防と惣兵衛堤防の間(※)から、明らかに見えます。音も聞こえるはずです。
(2017/10/10 補足)※ 航空写真で「水天宮」と書いているあたり。もともとは、上流側(左)の出砂原堤防と下流側(右)の惣兵衛堤防の間から洪水が遊水地に入るようになっています。堤防の上は散歩に利用する人の多いのですが、もちろん、堤防の上からはほとんどの場所で通行する工事車両が見えることになります。
これも、残土問題同様で、JR東海においても、国交省の審議会の審議過程でもリニア工事の計画が十分検討されていなかった結果だと思います。ガイドウェイ組立ヤードのようなものは、新幹線も含む従来の鉄道では全く必要としない施設です。鉄道事業法でも全幹法でも想定していなかった施設のはずです。日本の従来の法律体系では扱えない交通機関ですから、国交省の審議会だけでなく国会での検討が必要だったと思います。JR東海はすぐにすべての工事を中止して、工事計画全体を見直すべきです。
この道路については、集落内の道路であるにも関わらず、以前に比べ通過車両が増えたために、歩行者への危険性が高まっているし(すでに死亡事故があった)、騒音、振動(非常に新しい礫層のため)など生活環境への影響も出始めています。通過車両が通行するための道路は別にすでにあるのですから、集落内の道路を通過車両の便宜のために拡幅改良するというのは住民の住環境、安全の確保の視点からいえば本末転倒です。
(本論と直接関係はないですが: 道路を改良するしないは、高森町の問題ですが、親水公園の一部であり、「カヌーの町」の象徴的存在でもあり、天龍舟下り観光の歴史の記念碑的な存在の「かわせみの家」を取り壊すという問題もあります。2027年の「リニア開業記念国体」のカヌー会場を山吹地区の天龍川に誘致するつもりといっています。どうも高森町は、川遊びの中心を、豊丘村との新しい橋(新万年橋)が計画されている山吹地区に移そうと考えているようです。高森町は、親水公園も移動すればアセスの問題もクリアできると考えているのかもしれません。とはいっても山吹では国道153まで500m以内になります。)
こういったことについて、高森町当局も、町会議員の皆さんも気が付かないようなので、やっぱり公募中心のリニア対策員会が必要だと思います。
(2017/10/08、10/18 補足)