ゆれるリニア ~名古屋の夢大阪の夢

 ゆれるリニアといっても、ゼネコンの談合のことじゃありません。本山生産森林組合の組織運営問題でゆれる豊丘村の公民館報「とよおか」の2017年12月20日号。2ページの連載「リニアの声 第17回」、「リニアモーターカーに試乗して」。


 「浮上走行中の左右へフワフワする揺れ」が「気になった」と書いておられます。

 ドイツでは1972年から1977年までの間、ジーメンス、テレフンケンなど3つの会社が共同で超電導リニアの開発研究をしました。エルランゲンというところに直径約300mの円形のテストコースをつくり、試験車両を走らせました。しかし、ジーメンス、テレフンケンを含む、ドイツの各社は集まって常電導方式のリニアモーターカー、上海で営業運転をしているトランスラピッドを開発することに決めました。超電導方式は採用されなかったのです。その理由は:

最近の超電導技術は進歩してきているが、以下のような欠点が解決されていない。
 当時の結論は1987年に再度見直され、1977年の選択は間違っていなかったことが確認された。
(大塚邦夫著『西独トランスラピッドMaglev―世界のリニアモーターカー』公共投資ジャーナル社、1989年、p37)

 4番目の欠点が、2017年になっても解決されていないわけで、ドイツはいつまでたっても解決できないと、40年も前に判断していたことにはなりませんか。そういう見通しができることも技術力のひとつではありませんか?

補足 2018/01/06:4番目以外の欠点も解決できているわけじゃありません。⇒ 続きを読む

 同じ公民館報の1ページのコラム:


 ドイツのリニアの父と言われるヘルマン・ケンパー(1892 - 1977)。1935年に普通の電磁石による浮上実験に成功しています()。ケンパーは、「この新しいシステムは多くの利点を有しており、避けることのできない物理的なコスト増は認めるとしても、全体的には、短期間にそれを償うことができる」と言っています。磁気浮上式鉄道は「必要」ではなく「夢」によって建設されるべきものという性格をもともと持っているのです。現実的なドイツの政府はドイツ国内でのトランスラピッドの敷設をやめ、ドイツのメーカーは開発を止めました。

 なお「原発はトイレのないマンション」と言い出した武谷三男さんはもとは「原発は便所のないマンション」といっていたそうです。

(補足:トンネル残土は処分地を確保してから工事の申請をするべきでした。その意味で、リニア計画は「便所のないマンション」と言われても仕方ないと思います。ところで、リニアの体験乗車の列車にトイレはないそうです。まるで冗談みたいな話です。JR東海のやることですから、営業車両でも乗車時間が短いのでトイレは付けないかもしれません。構造上、設置するのは難しいだろうしね。)

(2017/12/22)

(補足) リニアは揺れる

 『アエラ』の記者の試乗記から。

 同じ思いをしたのは私だけではないようで、降車後、他社の記者が何人も「揺れ」を指摘。これに対して、山梨実験センターの遠藤泰和所長は、「まだまだ技術のブラッシュアップが必要で、継続した走行試験を行っていく」と、開発途上にあることを強調。(アエラ・ドット:2014.10.10:リニア試乗体験「衝撃」ルポ 車内では何が…)

 実験センターの所長は「ゆれ」については技術の開発途上にあると言っています。開発から40年以上たっているわけで、つまり、ドイツのメーカーの見通しは正しかったといえるでしょう。

 もう一つは、鉄道ライターの川島礼三氏の試乗記。彼は『リニア中央新幹線のすべて』(廣済堂出版、2012年、p52~p55)で、揺れについて「蛇行動」があったと表現していますが、2回試乗したうち、1回目では激しい蛇行動があったと、2回目ではサスペンションの改良でかなり軽減されたが蛇行動は起きていたと書いています。正確とは言えない言い方かもしれませんが、「蛇行動」は揺れに車体や車体の一部が共振して揺れが激しくなる現象です。蛇行動かどうかは別として揺れが気になると言っているわけです。しかも、完全には改良できていないと。これは、2012年以前の話です。アエラの記事は2014年。「とよおか」の話は2016年か2017年でしょうから、気になるほど揺れるのは磁石の同極同士の反発力を利用したことに原因があるのでしょう。

蛇行動についての動画「狩勝実験線(脱線試験)の記録」。動画の一番最後のナレーションは「鉄道の高速化。それは速度が生み出す複雑な振動を克服すること。世界最高の新幹線は、実に、振動と戦う技術の輝かしい成果である。」といっていますよ。揺れは乗り心地が悪いというだけの問題で済まされない安全にかかわる問題。

 だけど、こんなこと、小学生でも簡単にわかることじゃないでしょうか。

 千葉大学の近藤教授は「車両を浮かせようとする電磁力と、車両を沈めようとする重力が自然にバランスする点で浮上高さ(ギャップ)が決まる。・・・この方式では、バランス点からずれると元に戻そうとする復元力が生じることが特徴である。・・・浮上系の設計段階で、例えばバランス点から何cmずれるとどの程度の復元力が発生するといったような、磁気ばね特性を決める必要がある。(『鉄道ジャーナル』2017年4月号、p96)」。つまりバネの先に重りを吊るしたのと同じで振動は起こります。ゆれます。

 超電導リニアは名古屋の夢大阪の夢。

(2017/12/23)

補足2:「過去のもの」、「見当違いの技術」

 アメリカの磁気浮上式鉄道の開発について、『日経サイエンス』、1992年10月号の記事、「アメリカのリニア(AIR TRAINS)」。ガイドウェイを保守するときの精度が荒くても良いようにするための浮上する高さをより大きくしようとするグラマン社などの努力に対して、トランスラピッドの開発者は「良好な乗り心地を得るためには、車両とガイドウエー間のギャップ(注:隙間、浮上する量・高さ)を小さくする必要かある。グラマンもそのほかの開発チームも、我々のようにそのことを発見するだろう」、「トランスラピッドの方式は正しい。これ以外の方式は欧州では10~20年前に放棄された方式だ」と言っていると書いてありますよ。歴史的にはっきりしていることは、現時点で実際に営業運転をしているのはトランスラピッド方式の上海のリニアだけ。さらにトランスラピッドのドイツ国内での敷設は中止されたし、ドイツでの開発も終わったということ。

 超電導磁気浮上方式、つまりJR東海のリニアは技術的には、「過去のもの」、「見当違いの技術」といえるのではないでしょうか?

(2017/12/24)

補足3 ゆれるリニアの記事

『毎日』2014年9月22日: リニア あっさり「500キロ」突破、揺れは…「地上最高速」体験

 座席上に設置された現在の速度を示すモニター。順調にカウントを刻んでいたその数字があっさりと「500」に達した。同乗したカメラマンらが一斉にシャッターを切る。戦後初の国産旅客機YS11の巡航速度を上回るスピード。翼が付いていれば間違いなく、空を飛べるだろう。通路に立っていると、さすがに背もたれをつかみたくなる。「割と揺れるな」。誰かのつぶやきが耳に入った……。
・・・ やや気になった揺れは減速時に一層、感じることになった。・・・
 もっとも「乗り心地は新幹線の最新型N700シリーズに劣るかもしれないが、(東海道新幹線の初代車両である)0系はもちろん、その後の100、300系などよりははるかに優れる」と遠藤所長は自信をみせた。今回の試乗は「地上最高速」を実感しやすくするため、加速・減速を強めにしている。そのことも車体の揺れを大きくするのに影響しているそうだ。JR東海は今後、さらなる乗り心地の向上を目指し、研究に取り組んでいくという。

フランス車のある生活をとことん楽しむブログ:2016年09月07日:超電導リニアモーターカーの体験乗車に行ってきた(2)

意外にに揺れますね。そして乗り心地は「硬い」です。「浮上」と聞くとフワフワとした浮遊感を想像しがちかと思いますが、そういった感覚はなく、継ぎ目のない平面をひたすら進む感覚です。
乗車時に感じた振動は主に横揺れで、常に「グッ、グッ」という割と硬めの揺れがあります。これは明らかに東海道新幹線のN700系や北陸新幹線のE7系などよりも大きな横揺れです。
しかし、新幹線の乗車中に感じる小さなピッチング(縦揺れ)や、モーターの出力の谷間のような前後Gは、リニアではまったく感じられません。そのため不安感はありません。

『産経』:2014.9.22 18:39:【リニア乗車体験記】 「ゴォー」と低く響く時速500キロ 金属探知機による手荷物検査は「まるで旅客機」(3)

 全体として体に負担は感じなかった。ただ、500キロ走行のときに、「ゴーッ」と低く響く雑音や車内での揺れは、現在走っている東海道新幹線に比べるとやや大きく感じた。また、実験線は標高の高低差が約400メートルあり、気圧差が原因か、旅客機の離着陸時に感じるような耳がツーンとした状態に何度かなった。
・・・
 山梨実験センターの遠藤所長は報道陣に「引き続き技術のブラッシュアップをしていく。東海道新幹線も(開業から)50年かけてここまで進歩してきた。技術に磨きをかけ、乗り心地を向上させ、コストを低減させていく」と強調する。・・・

「ゆれ」の問題が解決できるのは50年先って、それじゃ解決できないと言ってるのと同じです。人をバカにした話だと思います。

廃線訪問記:2015-03-22:【特別編】超伝導リニア・試乗体験編

ひとつ気になった点が。「結構揺れる」のです。あくまで自分の感覚なのですが、「新幹線よりも揺れ、揺れ方も違う」という印象でした。やや揺れ幅が大きいと言ったら良いのでしょうか、とにかく「違う揺れ」でした。

希望的観測を拠り所に意地を張って無理矢理商用化しようとしている

One day, One life:2017-03-08:未来を先取り! リニアモーターカー体験試乗会 その3

浮遊して走行しているわけなので、振動や騒音は少ないものと想像していたが、意外と揺れるし音もする。 これもまた感覚的なことしか書けないが、新幹線と変わらないか、むしろもっと揺れる印象。
50年以上もの間開発を続けているというのは、すごい根気だろうし、多くの技術者の努力と情熱の結晶が実現目前の今の姿に結実しているのだろうと思う。そんなことを思うとともに、希望的観測を拠り所に意地を張って無理矢理商用化しようとしているようにも見える。

四国・徳島発 Station Master のぼちぼちブログ:2017年11月19日:超電導リニア体験乗車の旅(体験乗車編)

徐々にスピードを上げていき、150km/h辺りでゴムタイヤ走行から浮上走行に切り替わります。浮上走行しても上下左右に小刻みに揺れが続きます。
・・・ほぼトンネルの中なので小刻みに揺れる以外、走っているのかどうか。この揺れが営業運転開始までの残り10年で減らせられるのでしょうか?

(2017/12/25)

(補足 2018/01/06)
解決できていない超電導磁気浮上方式の欠点

渦電流効果によるエネルギー消費が大きい

 線路脇の構造物に金属が自由に使えない。乗降りに飛行機のボーディングブリッジのような渡り廊下が必要など、駅の構造が複雑になる。通常の鉄道に比べ乗客も不便。

特に低速度で顕著にみられるブレーキ作用で運転条件が不利となる

 宮崎実験線の時代は地面に浮上用コイルを設置する対向浮上方式で、この欠点がありました。山梨実験線に移ってから8の字コイルを使う側壁浮上方式に変わりました。しかし、側壁浮上方式にしたために空気抵抗を減らす手段の選択肢が狭まりました。騒音の点でも不利。またカーブの通過についても自由度が減りました。車内の狭さにも影響しているはずです。

浮上、着地システムや超電導冷却システムのような余分の車上ユニットが必要である

 飛行機と同じような離着陸装置が必要です。ゴムタイヤのような消耗品は通常の鉄道にはありません。超電導磁石の冷却につかうヘリウムの供給の先行きが不明です。高温超伝導の実用化の目途はありません。さらに、車上へ電力を供給する方法が確立していない(トランスラピッドでは解決済み)。

すべての考えられる運転条件の下で、良好な乗り心地が得られる技術問題が解決されていない

 これは、実は、乗り心地だけでなく、一つには安全性、もう一つは小さな半径のカーブを通過できるかどうかということに関係する、見過ごしにできない問題だと思います。「鉄道の高速化。それは速度が生み出す複雑な振動を克服すること。世界最高の新幹線は、実に、振動と戦う技術の輝かしい成果である。」(『狩勝実験線(脱線試験)の記録』より)。また、路線設定の自由度が直線ルート以外にないなどは、子供でも分かるばかばかしさです。大量輸送交通機関としては一番の致命的な欠陥だと思います。

乗客および持物に対する高磁場の影響が不明である

 磁気シールドのために重量が増え、車内が狭くなっています。定員数にも影響。乗降ドア数も新幹線の半分は平時も非常の場合も問題。超電導磁石を消磁しないと点検作業を検査員が行えない。トイレの汚物処理も従来通りというわけにはいかない。点検や日常的なメンテナンスも機械に頼ることになる。安全性の確保の点で最善が尽くせない。

 乗客にとって速達性、いや最高速度が速い以外のすべての点で、新幹線やトランスラピッド(最高速度は同じ)に比べ劣るのですから、超電導磁気浮上方式を捨てたドイツの1977年の技術的な見通しは正しかったと言わざるを得ないと思います。なお、ガイドウェイの柔軟性や浮上用・案内用磁石の懸架方式、さらにガイドウェイの構造なども含めて比較すべきなのにそれらを無視した上で、地震の時に10㎝浮上だから、常電導の1㎝浮上より優位という議論(国交省が発信元)はナンセンスです。