更新:2018/08/31 学習会の主催者から意見提出の呼びかけが来ていますので掲載します。こちら
更新:2018/08/29
中部電力自主アセスの問題点
竜西からみた竜東の河岸段丘。夕方の写真ですが、高圧送電鉄塔がはっきり見えます。上が南信幹線(50万ボルト)、下が南信泰阜線(15万4千ボルト)。上砂原の変電所・柏原間の送電線はどこに?
リニアでは、豊丘村の柏原と大鹿村の上蔵にリニアを走らせるための電力を作る電力変換所が計画されています。これら2つはJR東海の設備ですが、ここへ電力を供給するのは中部電力です。50万ボルトの南信幹線(高圧送電線)に近い、豊丘村の上佐原に超高圧変電所を新設し、大鹿上蔵と豊丘村柏原まで、15万4千ボルトの高圧線を引きます。この高圧線について中部電力が自主環境調査をおこない、報告書の縦覧が大鹿村役場と中電飯田支社で行われています。
大鹿村・リニア中央新幹線情報 No.33 より
8月29日、「南アルプスから学ぶ会」がこの自主アセスについて学習会を開きました。講師は、日本自然保護協会の辻村千尋さん。午前中、村役場で報告書を見た辻村さんが問題点を指摘しました。以下:
- 情報の公開の仕方が問題:自主的とは言っても、アセスは住民などの意見を聞いて事業を良いものにしていくという意味があるのだから、ウェブ上に公開しない、限られた場所だけで、コピーも写真撮影も禁止ではおかしい。村に提出した書類なのだから、村の取り扱い方に問題がある。
- 送電線は、リニアのためのものである。リニアの他の工事との関連が無視され、送電線単体についてのみ行われている。
- 猛禽類については、JR東海のアセスも参照しており、JR東海と情報交換をしている。工事車両の交通量など、他の工事の進ちょくを合わせて考えれるはずなのにやっていない。工事が複合して行われる場合の影響について考えていない。
- 植物の移植については、移植先の生息の可能性について現地調査が必要だが行っていない。具体的な移植計画がない。専門家の氏名がない。
- 景観については「見た目」についてのみ行っただけだが、景観とは自然と人間の暮らしの全体が表れたものととらえるべきである。環境省のアセスについての考えもこの点は弱い。一日の中でも日のあたる向きなど時間の変化で見え方も変わるので、提示されているフォトモンタージュは不十分。景観の点で代替案として、地表へ敷設する方法、地下埋設なども考えられるはず。竜西地区からの眺望については検討していない。
- 地下水などへの影響は少ないと思われるが、鉄塔の設置場所でボーリング結果に20mまでが礫層という部分、また地すべり地帯もあり不適切と思われる。
- 工事が終わり供用開始後の事後調査が弱い。電線の点検にヘリコプターを使う可能性があるが、ヘリコプターの飛行により猛禽類が営巣放棄をした例がある。
- クマタカについて工事期間中に慣れる(順化)だろうとの記載があったが、順化するという知見は確立したものではないので、試行してから、行うべき。順化について証拠となる論文があるのか、クマタカではないに等しい。
- ミソゴイについては、IUCNのレッドリストにもある。渡り鳥で日本で繁殖するが、生息環境の条件は猛禽類より難しい。大鹿のような狭い谷に生息するとすれば希少である。まず、営巣地を確認することが肝心。
- 陸棲貝類を落ち葉ごと移動するという方法は、必ずしもよい方法とは言えない。繁殖の機会を減らす恐れや、周囲の土壌や空気の条件が違うことなど。
- 科学的なコミュニケーションである環境影響評価のなかで、専門家の氏名が公表は必要。専門家としては公人であるから。
- アセスの読み方としては、論理の筋が通っているかどうかを見ること。
- 住民としては、意見は出すべき。
竜西地区から見た竜東の河岸段丘の景観にどんな影響が出るかについては検討されていなかったようです。住民の側が強く主張しなかったからだと思いますが、伊那山地を袈裟懸けにする新設送電線や上佐原の超高圧変電所は非常に目立つはずです。
関連ページ
- 中電の新設変電所 ~ JR東海がまたアセスメント逃れ
- 中電南信変電所
中部電力送電アセスは5日まで
大鹿村、宗像です。
一昨日日本自然保護協会の辻村さんをお呼びして学習会を開きました。
レポートはこちらです~
http://akaishimonitor.jp/report/転載歓迎!
辻村さんにはいろいろとご指摘していただきました。
たくさんの意見を寄せることが、計画の修正や中止にもつながります。以下のようなことは共通する問題点として指摘してもらったところです。
念頭に置きつつ、役場や飯田の中部電力で、意見を寄せて下さい。
今のところ役場では意見が少ないそうです。1 複合的な影響の欠如
今回は15、3キロの送電網の建設にかかわる影響についてのみ評価されているが、実際は並行して進むリニアの他の工事との複合的な影響を評価しないと、実際の自然や人間生活への影響は出てこない。
2 手続きの問題
公開の仕方も問題だが、実際に疑問がでた際、中部電力がそれについて説明する場を設けて疑問に直接答えないと疑問は払しょくされない。
3 建設後の影響も
鉄塔のメンテナンスなどで、ヘリを利用してそのことが猛禽など希少種の営巣に影響を与えることがある。その点の評価がなされていない。
4 移植計画の不在
植物や陸生貝類などでは、移植による保全がなされているが、その移植先の調査も含めた移植計画がなければ単に移動させるだけで保全にはならない。
5 景観への影響は見た目にとどまらない
鉄塔と送電線のフォトモンタージュだけでは、一日、一年の暮らしへの影響は評価できない。いまある景観はその土地の成り立ちや歴史の結果なのだから、それにどういった影響が与えるのかを考慮しないとならない。
以上、よろしくお願いします!