更新:2018/11/06
乗り物らしい格好をしているものだけを取り上げました。「実用」という点から、どんなカーブを走れるか(半径で表示、R=∞ は直線)、何人乗れるかを写真の下に書きました。ドイツで開発されたトランスラピッド(後に上海リニア)は、1983年の TR-06型でほぼ実用的な列車になっています。超電導リニアでは、乗客数では、1996年のMLX01がようやく同レベル。超電導リニアはどうもカーブが苦手のようです。だから、実験線も計画路線はほぼ直線です。営業最高速度は、トランスラピッドが時速500㎞/h、超電導リニアが時速505㎞/hでほとんど同じです。
実用性を考えてドイツは早くからカーブ走行にこだわり、国の威信を考える国鉄・JR東海はスピードと「先端技術・超電導」にこだわりました。そんなふうに見えます。その結果、超電導リニアは、営業最高速度で約1パーセント速い、それだけ。ほぼ直線の路線、普通の鉄道とちがった乗降りの仕方、狭い車体、小さな窓、走るのは地下ばかり。開業は順調にいっても10年先、ひょっとすると20年、30年先。外国にも売れていない。
最近になって、韓国と中国に、リニモと似た低速の磁気浮上鉄道ができています。まず短い距離で実際に営業運転をして、次第に長距離の路線を建設するという考え方が普通だと思うのです。
トランスラピッドのドイツ国内での建設計画は全部中止になりました(2008年)。ヨーロッパでは、最高速度は時速250㎞/h程度で十分、現在の鉄道路線の活用が大切。高速の磁気浮上式鉄道の出る幕はないという結論になったのではないかと思います。中国で、標準軌(レール幅、1435mm)の高速鉄道は、すでに2万数千km(2017年末、日本は2018年で約3000km)。中国で長大な高速の磁気浮上鉄道ができるとすれば浮上式鉄道不要論ははずれです。しかし、いまのところ、具体的な計画はないようです。
トランスラピッド(電磁吸引式) | 超電導リニア(誘導反発式) | |
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TR-02、R=800m (全長930m)、8人、164km/h | 1971 | ミュンヘン、アラッハ地区の S字型のテストコースを走る TR-02型 |
東京都国立市内の長さ480mの直線でテスト | 1972 | ML100、R=∞、4人、60km/h |
TR-04、R=800m (全長2400mの)、20人、253.2km/h(1977年) | 1973 | ミュンヘン、アラッハ地区の S字型のテストコースで走行 |
ドイツも超電導方式を研究。しかし採用されませんでした。エルランゲンのテストコースは円形でした。 (※2) | 1973 | (参考) ジーメンスの超電導実験車 EET、R=140m (全長約880m)、(4人)、230km/h |
宮崎実験線の初代テスト車両 | 1977 | ML500、R=10,000m (全長7㎞)、517km/h(1979年) |
TR-05、R=1800m (全長908m)、68人、75km/h | 1979 | ハンブルグで行われた国際交通博で公開。約900m区間を運行。53日間、約700回運転し約50000人を運ぶ。 |
MLU001 の走行した宮崎実験線はほとんど直線 | 1980 | MLU001、R=10,000m (全長7㎞)、32人、405km/h(1987年) |
TR-06、R=1000m (31.5km)、192人、412.6km/h(1988年) | 1983 | TR-06 の走ったエムスランドの実験線。直線の両端に、それぞれ半径1km、1.69kmのループ。 |
(参考) 日本航空のHSST-03、R=∞ (全長367m)、45人、30km/h | 1984 | 筑波万博(1985年)、バンクーバー国際交通博覧会(1986年)、岡崎葵博覧会(1987年)で展示走行 |
1987 | MLU002、R=10,000m (全長7㎞)、44人、394km/h(1989年) | |
TR-07、R=1000m (全長31.5km)、200人、500km/h(設計速度) | 1988 | |
(参考) 日本航空のHSST-05、R=100m (全長568m)、160人、50km/h | 1988 | 横浜博覧会(1989年)会場で営業運転 |
1993 | MLU002N、R=10,000m (全長7㎞)、12人、411km/h(1995年) | |
山梨実験線で一番急なカーブは、R=8,000m | 1996 | MLX01、R=8,000m (全長18.4km)、長尺中間車68人、581km/h(2003年) |
TR-08、R=1000m、500km/h(設計速度) | 1999 | |
ドイツ連邦政府は、需要予測が過大として、ハンブルグ・ベルリン間(約300㎞)のトランスラピッド建設中止を決定。 | 2000 | |
上海・マグレブ・トレイン(SMT)、R=1250m (全長約30km)、574人(6両編成)、430km/h(設計速度は500km/h) TR-08と同型 | 2002 | 2004年1月開業のSMTの路線図(googleマップに加工) |
(参考) リニモ、R=50m、104人(定員244人)、約100km/h | 2005 | 2005年3月開業(愛知高速交通東部丘陵線) |
9月22日、エムスランド実験線で体験乗車中のトランスラピッド(TR-08型)と保守車両が衝突。死者23名、重傷11。 | 2006 | |
TR-09、R=1000m、505km/h(設計速度) | 2007 | トランスラピッドの最終型。2008年、ドイツでミュンヘン空港アクセス路線計画が中止に。2011年にトランスラピッドの開発は終了。 |
2013 | L0系、R=8,000m (全長42.8km)、中間車両68人、先頭車両24人、603km/h(2015年速度記録) | |
(参考) 仁川空港磁気浮上鉄道、R=約250m (全長5.6km)、230人、80km/h | 2016 | 2016年2月開業 |
(参考) 長沙磁浮快線、R=約80m (全長18.55km)、最大乗客数363人、100km/h | 2016 | 2016年5月開業 |
(参考) 北京地下鉄S1線、R=約200m(全長10.2km)、1302人、80km/h | 2017 | 2017年12月開業 |
「もはや最高速度などは誰も口にしない。どれほどクリーンな電車を出せるかが重要だ。」(開幕イベント、フランスの鉄道車両メーカー・アルストムのラファルジュCEOのことば) | 2018 | 2018年9月、ベルリンの国際鉄道見本市 |
直線しか走れない超電導リニアは、トンネル工事とトンネル残土処分が最大の難関。2027年開業は絶望的! 「リニア任せ」で「地域づくり」を先送り | 2027 |