更新:2018/06/08
リニア関連事業に関する北条地区住民説明会、7日
移転を余儀なくされるという言い方をするが、自分はここから移転する気持ちはないので、余儀なくされるとは思わない。
カン違い
6月7日夜、飯田市とJR東海による、「リニア関連事業に関する北条地区住民説明会」が北条振興センターでありました。『南信州』5月30日は:
風越山トンネル東側区間(飯田市内)を巡り、同社が6月に地元説明を計画していることが分かった。・・・説明会は6日に座光寺、7日に上郷地区で開く。住民に通知した。
と書いていました。7日の説明会の次第は「上郷地区」でなく「北条地区」になっていました。上郷でいえば黒田地区はトンネル工事で地下水利用に影響が出る地域ですが、対象になっていません。地盤沈下や陥没のこともありますね。てっきり「上郷地区住民説明会」だと思っていました。そういえば黒田に住んでいる知人が説明会の話を知らないようでしたから、北条地区に限って連絡したのかも知れません。上郷地区の公民館は改築中で使えないので、北条振興センターで上郷地区全体を対象にやると思ったのは私のカン違い。でも何かおかしいです。
次第では、説明内容は以下の4つ。
- (1)(JR東海)リニア中央新幹線計画の進捗状況について
風越山トンネルの施工計画の進捗状況について - (2)(飯田市)リニア駅周辺整備計画について
- (3)(飯田市)代替地整備計画について
- (4)(飯田市)リニア関連事業に係る都市計画決定・変更の手続きについて
(1)、(3)、(4)は座光寺と同じ内容
JR東海の説明
(1)のJR東海の説明は座光寺と同じでした。座光寺で聞き落したこととしては:
- 2016年からの追加の地質調査はまだ途中でボーリングは計画15本のうち13本が済んでいて、今回の説明は13本のボーリング調査を反映したもの。
- 地下水位の高い場所は「資料12」の「tr-2」と書かれている付近(松洞川から西)。
- シールド工法の説明動画はJR東海のホームページの都市部のトンネル工事のページにある(またはYoutube)。
- 北条に造るシールドマシンの発進立坑は説明ビデオにあるような深いものではない。
JR東海の説明についての主な質問と回答
- Q:リニアの路線は大半が地下だが、ここは明り部だ。地上にしたので問題が出てきている。なぜ地下にしなかったのか。
- A:天竜川の下を通過させると、中間駅が地上にできない。地形的な関係でそうなった。
- Q:ベルトコンベアのルート付近にはアパートなどあって住民に影響がでる。土曽川斜坑から掘るのは影響を少なくするためだったはず。当初の発表を守るべきだ。いいかげんな計画の提示は困る。
- A:ルート付近の状況は把握しているが、関係者への説明は具体的になってからするつもり。
- Q:トンネルの入り口付近は、新戸川の沢の切れ込みによりトンネルの肉厚が薄くなるはず(参考地図)。がけ崩れなど上部に住む人に危険がある。地形の危険性について以前から指摘しているが、JR東海は長野県にお願いしているで済ませている。JR東海自身が真剣に考えるべきだ。
- A:地盤のことを心配する人がいるのは承知している。その点についてもシールド工法の方がよい。
- Q:残土の処分先は見つかっていない。JR東海が思うようにはなっていない。大鹿では国道の迂回路の暫定利用について住民から説明が遅すぎるなどの批判が出ている(参考)。土曽川斜坑から掘るのは残土の排出で住民に迷惑をかけないためだったはず。残土の運搬ルートはどうなっているのか。
- A:土曽川工事ヤード(斜坑口)から先の運搬は、フルーツラインの方向になるが、座光寺スマートインターからのアクセス道路の建設もあって、住民に負担をかけないために、長野県と調整中。
- Q:シールドで地下水への影響が減らせると言うが、それはトンネル内部へのことであって、NATMでもシールドでも地下水はトンネルの周囲を流れることをきちんと説明すべきだ。
- A:それでもシールドの方が影響が少ない。地下水の変化については継続調査をする。
- Q:路線と新戸川との間の空間(JR東海が鉄道の電気機器を設置すると言っている場所)に残土を仮置きしないこと。
- A:そこは、ヤードとしては検討しているが残土の仮置きはしない。
- Q:瑞浪市でベルトコンベアを使っている。具体的にどんなものか示すべきでないか。
- A:ベルトコンベアは高架になっている。
- Q:黒田斜坑口からの斜坑のルートがこれまで示されたことがないが、シールドへの変更とNATMとシールドの接続位置を考えていたからなのか。
- A:接続位置はまだ決まっていない。黒田からの掘削ルートも具体的には決まっていない。
駅周辺整備計画の説明は住民軽視で失礼、もう止めろ
出席者の手元に配布された資料は、次第が1枚、JR東海のトンネル関連が7枚、駅周辺整備計画関係が21枚、代替地整備計画関連が1枚、リニア関連事業に係る都市計画決定・変更の手続き関連が1枚。
「リニア駅周辺整備計画について」はスライドを使っての説明。説明が始まると、参加者のうちかなりの人たちが、手元の資料をはしから全部めくって、スクリーンの図面と見比べていました。実は、手元の資料は、説明内容とは直接関係ない資料だったのです。これが21枚もあったのです。
参加者から、移転をしなくてはならない立場からすれば、飯田市がまず解決すべきことは、移転せざるを得ない人たちの、移転先の問題で、それが聞きたいから会場に来ているのに、駅周辺整備の説明は失礼ではないか、住民軽視ではないかという指摘がありました。もう止めろという声がでて、多くの人が、その声に同意を示したので、駅周辺整備の説明は途中で中止になりました。
代替地整備計画
前日の座光寺の説明会では代替地整備計画について地図の配布がなかった点を飯田市は批判されました。今回はこのスライドの地図だけは配布されました(代替地整備計画の地図)。
地図のオレンジの点線の楕円部分が代替地となる地域。青い矢印は新たに造る道路。この道路のために新戸川の流路の変更もするとの話でした。
なお、このスライドの黄色い部分は代替地の予定だったのが、現在、南信州広域連合の募集しているコンベンションだかアリーナの候補地(※)としてあがっているので、その動向をみてからになると説明していました。この辺りも飯田市の姿勢はちょっと変です。
※ 2018年3月22日 飯田市議会全員協議会 資料No.5-3によれば、リニア中間駅周辺で共和地区とは別に駅の南側にもう一か所が候補地として上がっています。駅南側は商工会議所とJAが推薦。共和は「座光寺地区」が推薦。
代替地のリストの閲覧開始についての説明があったのですが、日程や場所について、配布資料のどこにも書いてありませんでした。登録された土地は全体で279、座光寺が107、上郷が84とのことですが、これも資料にはありません。
参加者からの意見
- 飯田市は住民の意向とは何か考えるべき。代替地の道路整備の計画よりは代替地が、借地なのか、売地なのかという現状の説明の方が先だ。
- こういう会に出てきて初めて知ることが多い。事前に連絡や話がないが、こういうことを誰が決めるのか。
- 飯田市の説明が住民の意向にそったものでないから、出席者が次第にへってきているではないか。
- 丹保地区の代替地は農地で農振解除が必要だが解除できない。それは飯田市が一括して買い取ってから解除手続きをするからだというが、5年も前からお願いしているがどうにもならない。農振解除の費用について公平になるように。
- 飯田市長はリニアについてビジョンを示しているとは言えない。示すべきだ。
- 移転対象者に寄り添うというなら、こういう説明会には飯田市長自身が出席すべきだ。1度か2度しか来たことがない。
- 移転を余儀なくされるという言い方をするが、自分はここから移転する気持ちはないので、余儀なくされるとは思わない。
いまだに何もかもが検討中
トンネルの工法がいまだに確定できない風越山トンネルなのですが、実は伊那山地トンネルも工事の取り掛かりの場所がいまだに確保できていない場所があります。トンネル残土の処分先もほとんどありません。明らかにJR東海の計画に無理があったのです。そして、リニアのような2地点を直線で結ぼうとするような計画では、事前の慎重な調査が必要なのに、それが出来ていなかった。ある程度の自由裁量は可能だからと全幹法を適用して国交省が認可したのですが、事前に慎重に調査すればこの計画は無理だという結論が出たはずです。
本当に用地がほしいなら、国の基準に従ってとか、適正な補償でとかいっていてもダメです。それ以上の良い条件をだすからゆずって下さいと言わなければ無理です。JR東海は民間企業ですから、そういうことはできるはずです。それだけお金を出しても儲かる見込みがあるのなら。
大事なことは、飯田市長の牧野さんはリニアが上手くいかないことを十分に知っているはずだということ(【提言】リニアを見据えた地域づくりについて)。だからこそ、リニアについてのビジョンをリニアに直接関係する住民に語ることが出来ないのだろうと思います。こういう市長の下で住民との矢面に立たされる市職員は気の毒と言えば気の毒です。最近、牧野さんは全国市長会の副会長に再選されました(『南信州』6月7日)。
代替地は騒音の影響がある範囲内
[ 補足:2018/06/09 ]
JR東海の資料に示された残土の「搬出方向」と、「搬出方向」を示す線上にベルトコンベヤを設置する場合の縦断面を予想してみました。
「+6」は飯田線を越すために標高に追加する高さ。
シールド工法では、流れやすいようにドロドロの粘土のようなものを混ぜて掘削するので、出てくる残土は泥混じりなのでNATM工法で出てくる残土とは扱いが違うはずです。たぶん基本的には産業廃棄物として扱わなければならないはずですが、その辺が疑問ですね。
なお、テーマがテーマだったこともありますが、完成後の騒音問題について何の質問も出なかったですね。町づくり委員会の委員長さんのお宅なんかはトンネルの入り口に一番近い場所なのですが。駅からすぐトンネルに続くのですが、緩衝工がすぐそばに来るわけですから、駅とトンネルとの間の構造物がどうなるかとか、そういう点も心配です。
出来るだけ近くで代替地を探すというのが代替地の飯田市の方針のようです。説明会の後で参加者から聞いた感想です。代替地は騒音の影響がある範囲内だ。
[ 背景は、九頭竜権現(北条地区) ]