更新:2020/08/23

「陸の孤島」のどこが悪い?

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 『中日新聞』8月18日の、1面 "リニア暗雲 「陸の孤島」の嘆き" と 9面の "リニア 遠のいた開業 1 沿線開発 崩れた前提 交渉に影" は5回連載の1回目。

市の推計では何も手を打たなければ、25年後には、人口は今の四分の三になる。…市の担当者は、気軽に大都市と行き来できる環境が整えば、飯田で暮らすことが十分、若者の選択肢になると期待する。…市リニア推進部長の細田仁(58)は「リニアをうまく活用し、人口減に歯止めをかける」と意気込む。

 「何も手を打たなければ」というのは、じつは、飯田市としては「リニア任せに」以外に「良い手」が見つからないともとれるわけです。だから、「飯田市」は中間駅位置を、JR東海が当初望んでいた高森町から飯田市に移動させた。この事実を書かなかったことは奥ゆかしくておかしい。ところが、

市の担当者の表情はさえない。JR東海と静岡県との協議がまとまらず、東京ー名古屋間の開業が見通せない状況になったためだ。
JR側は「27年開業は難しい」としている。 一方で「できるだけ早い実現を目指す」として長野県内での工事は従来通りのペースで進める方針。開業延期について具体的な説明はない。
JR側からは開業延期の説明がないため、「27年開業」を前提に地権者と交渉せざるを得ない。「中ぶらりんだ。非常にまずい」。担当者はうめく。
地権者は移転時期に影響があるか不安視している」と細田。それでも「『27年の開業に向けて取り組む』と説明せざるを得ない。地権者にも生活設計があるのに」と苦しい胸の内を明かす。

 長野県内の工事の遅れをみれば「27年開業」がおぼつかないことはJR東海の説明を聞かなくても理解できると思います。飯田市の部長がそんなことが理解できないとは驚き。また、北条へ駅をもってこさせたために用地交渉が困難になっていることも飯田市の責任。牧野市長はじめ「飯田市」の人たちが自らまいた種。飯田市の職員はどうすれば良い? また市議会議員はどうすればよい?

沿線住民が不安定な状況に置かれる状況に、飯田商工会議所会頭の原勉(71)は苦言を呈する。「JRは、あいまいな言葉ではなく、具体的に説明することが必要。静岡県も自らの主張を沿線の他県が理解できるよう、よく話し合うべきだ」

 飯田商工会議所も飯田市内へ駅を誘致することに熱心だったはず。少しは反省の弁があっても良いはず。先代の柴田会頭は、移転対象者を犠牲者と呼ぶべきではない、移転すれば良いことだってあるのだとまで発言していました。原氏自身は会頭就任前にはリニアについてある程度批判的なことを述べていたとも聞いています。

 リニア新幹線が事業として上手くいかないという指摘を以前からしている橋山禮治郎さんは、元日本開発銀行調査部長。飯田市長の牧野光朗さんも日本開発銀行勤務でフランクフルト首席駐在員(事務所長)や大分事務所長も務められています。同様の見識があるはずなのに、リニア計画についての評価が全く逆というのも奇妙な話です。

 この記事で、「飯田市」の見通しの悪さ、無責任。また、飯田市がお手上げ状況にあることがわかります。リニア建設について、飯田市内で起きている問題の責任の半分以上は、JR東海ではなく、飯田市にあるといえます。

 住民は飯田市役所以上に困っていると思う。

 「陸の孤島」のどこが悪い?

 この5回の連載、2回目は静岡県の大井川の減水問題についてルートの決定前に議論がなかったことについて、3回目は工事ででてくる要対策土処分について住民が知らされていないこと、4回目は超電導リニアが半世紀もかけてまだ未完成なこと、5回目はこれからの社会が必要としていないし企業の行動としても合理性のないことを取り上げています。書き方に、やや遠慮が見えないわけでもないですが、取り上げている事実からすれば。