更新:2020/11/22
小渋川斜坑周辺
2014年11月:大鹿村大河原。小渋川の左が電力変換所と小渋川斜坑の予定地。左に鳶ヶ巣大崩壊地からの土砂。自然災害の被災の可能性で、変電所など重要な施設を建設する適地とはいえない。[2013-1019-7134]
2014年11月:上の写真を拡大。左の建物から中ほどは養魚場。背後の斜面にきれいな湧水がある。用地取得で廃業。右の建物は長野県企業局の大鹿発電所。取水している小河内沢の水量がリニアトンネルのために50~80%減るという予測。[2013-1019-7134]
2018年6月:養魚場や水田の跡地に積まれたトンネル残土。JR東海の電力変換所の予定地で、残土は仮置き。残土を搬出しないと建設できない。[2018-0609-5596]
2018年2月:小渋川斜坑は2017年7月3日から掘削を開始。中央のこげ茶の建物は小渋川斜坑ヤードの土砂ピット。現在、蛇紋岩が出たりホウ素が検出されたりで工事が停滞中(9月の大鹿村リニア連絡協議会で報告)。[2018-0203_7578]
アカナギ(大崩壊地)直下に残土処分計画
写真A:アカナギ上部
写真B:アカナギ直下
右の川岸(左岸)に30万立米のトンネル残土を盛土する計画がある。
上の写真Aはアカナギ(鳶ヶ巣崩壊地)。高低差が550mのその直下、写真Bの右側、川岸の林の場所にトンネル残土を盛土する計画があります。公園として「環境整備」をするのだそうです。長野県や大鹿村、報道機関などは、最近は「鳶ヶ巣沢」と呼んでいますが、もともとは「アカナギ」とか「オオナギ」と呼ばれていました。
- 盛土の計画のある場所は、1961年以前は小渋側の流路だった。
- アカナギの土砂流出は降雨のたびに発生するので、対策工事により土砂流出量を抑制することはできるが、完全に阻止することはできない。
- 「公園整備」が目的だが、今後も継続するアカナギ上部の崩壊と、盛土自体の崩壊の危険性から人々が立ち寄る公園としては不適当。
- アカナギは砂防工学、地形学、地質学、環境学、防災学の世界から見れば自然の営為を学ぶことができる重要な価値があり、災害の発生を最小限に抑制しつつ環境の変化や推移を見守るべき。
この計画の安全性について検討する長野県が設置した有識者の検討委員会の委員の一人は、「最悪の事態になったときにどう対処するのか。そこまで考えてやってほしい」、「『最悪の事態』として、盛土が一気に崩壊した場合も想定するよう指摘。『天然ダムが形成され、決壊すれば巨大な土石流となる。影響がどこまで及ぶか、警戒や避難をどう呼び掛けるのか』と訴える」(『信毎』2019年5月13日 "リポート:巨大盛土 安全性は リニア残土 大鹿と中川の計画検討継続")。
伊那山地トンネル・青木川斜坑ヤード
2020年5月:伊那山地トンネルの青木川斜坑ヤード(大鹿村青木) 。今年の7月17日から掘削を開始。 リニアのトンネルは、ここから約450m南で青木川(写真、手前の川)の真下を通過。深さ(土被り)は約39mしかない。[2020-0518-8607]
南アルプストンネルの完成はいつ?
2027年開業が困難なだけでない
リニアはできるのか?できないのか?
長野工区の場合
南アルプストンネルの長野工区は上の地図のようになっています。
除山(のぞきやま)斜坑から静岡工区との境までの斜坑1870mと先進坑5090mの距離、合計で6960mは何としても掘り終えないと工事は終わらないはず。
JR東海は最初、長野工区のトンネルの掘削の期間を10年と想定していたようです。6960mを120か月(10年)で割ると、1月当たりの掘削距離は58m。
6月下旬までを平均すると、除山斜坑の掘削のペースは 40.5m。つまり予想した進み具合で掘れていない。静岡工区との境までの残りは約5650mです。この距離を40.5mで割ると、約140か月 = 11年と8か月。除山斜坑は工事ヤードが7月豪雨の影響で被災。7月14日以後は掘削は中断しています。年明けに掘削を再開したとして、これまでのペースを維持できたとして掘削が終わるのは2032年8月になってしまいます。その後ガイドウェイの設置や電気配線や試験走行期間に2年かかるとすれば、2034年8月以後でないと名古屋までの開業はできないはず。さらに、トンネルの深さはこれから増えるし、地質も複雑です。
また、小渋川斜坑では蛇紋岩が出たりホウ素が検出されるなどで掘削が思うように進んでいないようです。除山斜坑、釜沢斜坑の掘削再開がいつになるかまだ分かっていません。
静岡工区の場合は?
静岡工区で掘削距離が一番長いのは、西俣斜坑(3490m)から長野工区との境までの間です。これがトンネル工事期間の目安になるはず。西俣斜坑と本線の交点から長野工区までの距離は、6月26日にJR東海の金子社長は静岡県知事との会談の中で3.5kmといっています。斜坑先進坑合わせて掘削距離は6990mです。
金子社長は、静岡工区について、6月中に準備工事を再開できれば2027年開業に間に合うといっていました。ガイドウェイ設置、試験走行などに2年必要とすれば、2025年までにトンネル掘削を終了させないといけないので、掘削期間は5年。西俣からの掘削距離6990mを5年=60か月で割ると、1か月当たり 116.5m になります。南アルプスでこんな速さで掘削を進めることができるとは思えません。
たとえば、北陸新幹線の新北陸トンネルが7月に貫通しましたが、全体とすれば、1か月当たり約53m程度のペース。
西俣斜坑口から長野工区との境までの距離6990mを、除山斜坑のペース40.5mで割ると、掘削期間は約14年5か月となり、掘削の終わりが2035年3月ごろ、開業が2037年3月ごろ以後になってしまいます。
南アルプストンネルがJR東海の予定通りに完成できる見込みは絶望的です。工事期間がのびるほどJR東海の財政を圧迫するはず。もう、リニア計画の中止をJR東海自身が検討すべき時期になったといえます。
静岡が水の問題と環境問題で頑張っています。しかし、リニア建設が上手く進まない原因は、もともとリニア中央新幹線計画の無謀さ杜撰さにあります。
伊那谷の自治体もわたしたちもリニアの中止を真剣に見据えるべき。
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