更新:2021/07/03、07/03 一部訂正しました、
『朝日デジタル』7月1日の記事について
『朝日デジタル』7月1日16時00分 "長野の山に残土の壁、尾根に穴 「リニア理に合わない」" という記事について。
この写真は記事の1枚目の写真と同じ場所で撮影。荒川荘という宿屋があった場所です。記事は、一角には十数メートルの高さまで、計7万立方メートルの残土が階段状に積まれ、崩落防止の網がかぶせてある。元は温泉付きの山荘があった場所だ。
と書いていますが、積まれている残土の量は3万立米です。以前からそう報道(*)されていたし、最近JR東海が公表した、「令和2年度における環境調査の結果等について 令和3年6月」(PDF、57.6MB、全423ページ)でも、「約3万立米」(締固めた土量)となっています。
* 『南信州』2018年2月22日 "大鹿村リニア残土 旧荒川荘に本置き JRが環境保全計画示す"、記事にある報告書は「大鹿村内発生土置き場(旧荒川荘)における環境保全について 平成30年2月」(2018年2月)
数字の間違いは、記事を書いた記者さんの取材前後の調査不足、確認不足だと思います。数字的なものはJR東海に確認する必要もあったと思います。記事に載せる数字は確かなものを使わないと紙面に登場している取材相手に迷惑がかかると思います。
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釜沢地区の斜坑は2つ。除山斜坑は、1400mを、釜沢斜坑は、100mを掘削した(令和2年度報告)ので、掘削断面積を80平米とすれば、掘削したトンネルの体積は12万立米。掘り出した残土は体積が増え、約20万立米(*)ほどにもなるでしょうが、仮置き場や処分場に置く時には敷き固めるので体積が減って、約15万立米(*)ほどになると思います。最終処分の荒川荘跡地に約3万あるので、釜沢地区内の仮置き場Aと仮置き場Bに約12万立米あることになります。
* 「土量計算の考え方」を参考にしました。数値としては、L=1.7 と C=1.3 を使っています。
「大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果について 平成28年9月」(2016年9月)によれば、仮置き場Aの容量は3万9千立米、仮置き場Bの容量は11万7千立米の合計15万6千立米です。現状では、釜沢地区から村内の他地区や村外へ残土を持ち出すことはできません。釜沢斜坑と小渋川斜坑の間で先進坑がつながると先進坑を使って他地域へ搬出が可能になりますが、その時期は未定。釜沢地区で仮置きできる量はあとざっと3万6千立米。トンネルの長さにして350m程度。
釜沢斜坑の掘削開始は2020年3月3日。6月23日頃(約477日)までに245m掘ったようです(*)。2020年の7月豪雨のため、半年ほど掘削できなったのでだいたい210日ほどで約250mを掘ったことになると思います。1日に約1.2mのペースです。除山斜坑は2017年11月1日に掘削を開始。1870mの約7割を掘削(*)。6月23日頃(約1330日)までの実質約920日で約1310m掘っていますので1日約1.42m程度のペースかと思います。このままどちらの斜坑も同じペースで掘削すると、釜沢の残り100mを掘る約84日間に、除山は約120mを掘るので、掘削距離の合計は220m。
* 6月24日の大鹿村リニア連絡協議会での報告。当日配布のJR東海の説明資料による。日数は、(期間の日数)-(期間の日数÷365×62) を作業日数と計算しました。釜沢と除山については昨年7月豪雨から1月19日までの作業しなかった188日をさらに引いています。日の端数を計算途中で切り上げています。ただし、掘削ペースは今後どうなるか分からないので、これは本当におよその計算です。
小渋川斜坑からの先進坑(全長1600m)は2019年8月23日に掘削開始で、6月23日頃(約670日)までの実質約556日で800m掘削したので1日約1.44m程度。残りの800mを掘るのに約555日。釜沢斜坑の掘削完了までの約84日で釜沢地区で置ける残土の余裕は斜坑トンネルの長さの130m分。除山斜坑でさらに約92日程度掘った時点でゆとりはゼロです。だから約176日後以後の約1年間は釜沢地区でトンネル掘削はできないという計算もできるわけです。
どの斜坑の工事ヤードにも、同じように大型車両がアクセスできるような条件なら、問題にならないようなことが、大きなネックになる可能性があります。小渋川斜坑からの先進坑は地質の問題で現場ではかなりご苦労をされているように思います。この先進坑ができない限りは除山斜坑から静岡工区までの間の工事はできません。いつまでたっても「いつまでに」などといえる日はこないように思います。
三正坊の仮置き場Bは農地を一時的に転用しており、地区の平坦部の農地のほぼすべてに残土が積まれた状況です。
水の問題で一番心配なのは釜沢集落の水道水源
水枯れかな?みたいな内容も書かれていますが、より心配なのは、記事が取り上げた場所よりは、もっとトンネルに近い、釜沢集落の水道の代替水源だと思います。現在の水源が枯れた場合、いざ代替水源をと思ったら枯れていたという可能性がないとはいえないはず。どちらも同じ山から出てくる水です。その山の中でトンネルを掘っているのですから。記者さんが、釜沢の代替水源に影響が出ていないことを確認したうえで書かれたのであれば、もちろん、私の杞憂にすぎませんが。