更新:2021/07/26
温度が下がると電気抵抗が減る
エナメル線(塗料を塗って絶縁した銅線)をぐるぐる巻いてコイルにして電気を流すと磁石ができますね。銅は電気を良く流すのですが、少しとはいっても電気抵抗があるので、熱が発生します。それで一定以上の電気は流せません。
ある種類の物質では温度を絶対0度近くまで下げると電気抵抗がゼロになります。抵抗がないので非常に大きな電流を流せます。またいったん流れ始めた電流は永久に流れ続けます。そういう超電導物質でコイルをつくって電流を流せば、非常に磁力の大きな磁石ができます。リニアで使用しているニオブチタン系合金の超電導磁石ではマイナス269度で電気抵抗がゼロになります。
リニア新幹線は、超電導磁石を車体にのせています。ガイドウェイに取り付けられた推進用コイルに電気を流すと、推進用コイルは磁石になるので、車体に載せられている超電導磁石との間に反発力や吸引力がはたらいて車体が動きます。
このあたりのことは、山梨県リニア見学センターの リニアの仕組み や JR東海のリニア新幹線のホームページ の「超電導リニアとは」⇒「超電導リニアの原理」に書いてあります。ほとんどの部分はそのまま受け取って良いと思います。もっとおおざっぱですが、環境影響評価準備書の説明会や事業説明会のとき会場で配布された「~のあらまし」というパンフレットにものっていました。
車体が動くと、車体側の超電導磁石が地上側(軌道=ガイドウェイ)に取り付けられている浮上用コイルに対して動くことになるので、浮上用コイルに電気が流れます(電磁誘導)。電気が流れるので磁力が発生します。車体側の超電導磁石と浮上用コイルに生じる磁力との反発力と吸引力で車体が浮上します。これを誘導反発方式といいます。
この場合、原理としては、超電導磁石は、本来は永久磁石でも良いのです。名古屋の「リニア鉄道館」や山梨県の「リニア見学センター」には、リニアの浮上の原理を説明する展示物がありますが、強力な永久磁石(たぶんネオジウム磁石)を使っています。しかし、浮上力は非常に小さい(*)。実物の列車の重さに対しては永久磁石では十分でないので、非常に大きな磁力が得られる超電導磁石を使います。
「案内の原理/ぶつからない仕組み」については、位置を検出しての制御をしていないので、軌道の中心に向かって戻しても中心を通りすぎるはずで、通り過ぎる幅がだんだん少なくなって中心にももどるという動作をしていると思います。それ以外は山梨見学センターもJR東海のページも妥当な説明だと思います。
しかし、説明は妥当だからといっても、この技術を列車に応用することが適切だというわけじゃありません。
* 「リニア鉄道館」にある次の写真の展示はよくできていると思いました。
手前のハンドルを回すと、リニアの車体の模型を挟んだ2枚の円盤が回転します。円盤はガイドウェイを模したものです。本当は長いガイドウェイを円盤で代用しています。車体がガイドウェイの中を走るのと同じ状態を再現しています。ハンドルと円盤は直接つながっていません。ハンドルが回されたことを検知すると、モーターが円盤を回すような仕組みになっているようでした。壊れにくいかも知れないですが、直接回しているという感じがしないのは残念。
左右の円盤には「8の字型」に巻いたコイルがついています。実際のガイドウェイの浮上・案内用コイルにあたります。このコイルは上と下で巻く向きが逆になっていて、巻きはじめと巻き終わりが接続してあります。外から電気を流すことも、電気を取り出すこともできません。発生する磁力が弱いので、テコとオモリで車体の重量を軽くする工夫がしてあります。関連ページ:「リニア鉄道館」へいってきました
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