更新:2021/07/26

最近、いくつかリニアついて聞かれたので、簡単にまとめて見ました。

リニアの停止距離は?

 時速500㎞/hの速度で走っているリニアがどれぐらいの距離で止まれるかという問題。

 JR東海さんの、リニア中央新幹線のホームページの 「FAQ」 ⇒ 「車両について」 ⇒ 「Q4 東海道新幹線よりも加速や減速の性能は上がりますか?」の答は次のようなものなんですが:

超電導リニアは、車両に搭載した超電導磁石と地上に取り付けられた地上コイルとの間の磁力によって非接触で加減速するため、車輪とレールとの粘着(摩擦)により走行する従来方式の鉄道に比べ、高い加減速性能を有しております。加減速性能についてはこちら

 「こちら」という部分をクリックするとリニア(エルゼロ系)の加速と減速について、速度と距離の関係を示したグラフがあります。

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グラフによれば:

 新幹線よりはブレーキの性能が高いのは明らかだと思います。しかし、結局、スピード上がった分だけ、停止するための距離も長くなるということです。当たり前といえば当たり前で、乗っているお客さんの性能は数十年前と同じなので、超電導のリニアだからといって超急減速は出来ません。

 以上は、リニアモーターを発電機として利用する「電力回生ブレーキ」が機能している場合です。回転式のモーターは発電機にもなります。同じようにリニアモーターを発電機として使って電気を取り出すことができます。取り出した電気で別のリニアを加速させたりすれば(負荷につなげれば)、その分、速度が落ちるという仕組みが電力回生ブレーキです。ほかに、取り出した電気を抵抗器につなげる「発電ブレーキ」、推進コイルの巻き始めと巻き終わりをショート(短絡)させる「コイル短絡ブレーキ」というやり方もあって、これら3つの種類のブレーキは、どれも超電導磁石が正常に機能している場合に使えるものです。この3つを「電気ブレーキ」と呼ぶようです(*)。

* 鉄道総合技術研究所編『ここまで来た!超電導リニアモーターカー』(交通新聞社、2006年)、p205~209

 「超電導リニアとは」 ⇒ 「緊急時の対策」 を読むと、通常は「電力回生ブレーキ」だけで停止する仕組みで、「車輪のディスクブレーキ」や「空力ブレーキ」は緊急時だけ使うようになっています。緊急時にどのくらいの距離で止まれるかについては説明はないようです。

 JR東海さんの説明の範囲でも言えることは、スピードがはやいほど停止するには距離がいること、時速300㎞/hでも止まるのはそうとう難しい。安全性を考えたら、スピードは控えめの方がよいということ。リニアを新幹線並みの300㎞/hで走らせたとすればブレーキ性能は新幹線よりはるかに高いです。しかし、それでは超電導リニアを開発した意味がなくなってしまいます。よって、500km/h のリニアが新幹線より安全とか同じ程度に安全ということはちょっと考えにくいです。

 付け加えると、ぶつかった時の衝撃はスピードがはやいほど大きいです。