更新:2021/10/12

「すさまじい」乗り心地

報道向け体験乗車は選挙対策?
去年に比べどれだけ向上したのか

 『南信州』(10日)、『信毎』(9日)によれば、10月8日にJR東海は山梨実験線で報道陣向けにエルゼロ系の改良型試験車両の体験乗車を行いました。『信毎』の動画を見る限り、騒音や振動とか揺れ方などは、Youtube で見れる以前のほかの試乗会や体験乗車の動画と大差ないように思えます。記事はそんな書き方はしていませんが…。

 新聞などでどんな記事があったか検索しましたが、いつもの報道向け体験乗車に比べ記事が少ないように思いました。8日という日程がまずかったのかも知れません。新聞なら9日と10日にのせるか、11日は休刊日なので12日で短い記事かいっそ凝った記事にするかになってしまうでしょう。衆議院の解散が14日、総選挙の告示が19日なので8日に行うしかなかったのかも知れません。選挙対策としては効果が疑問ですが…。

 少なくとも静岡県では「JR東海は丁寧な説明を」ぐらいのことしか言えない自民党がリニアの夢を訴えることは逆効果になると思うし、伊那谷でも各地でリニアの工事が着工したというニュースとともに、残土運搬車がそこらじゅうを走り出すようになり、迷惑な面が明らかになってきて、リニアへの期待も3割程度しかない状況で選挙で「夢のリニア」を訴えてもどうなのかなと思います。

すさまじい

 体験乗車の記事のなかで、のりごこちについて面白い表現がありました。

今、時速500キロに達しました。トンネルなので外は見えないが、体全体でそのすさまじいスピードを感じています(『Daiichi-TV(静岡第一テレビ)』)

 「すさまじい」そうです。

 一方、『UTYテレビ山梨』:

今、時速500キロに達しました。スピードは、乗っていると感じず、とても快適な乗り心地です

 つまり、記者の感想はあてにならない?

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去年と同じ

 改良型の特徴については:

 など、去年の10月の報道向け公開のときとほぼ同じ内容。『静岡新聞』だからといえばそうかも知れないですが、2017年に営業運転に必要な技術開発を完了した。現在は騒音や振動、耳がツンとなる現象の軽減など快適性の向上を目指して改良を続けている。 としか書いてもらえない。昨年より性能が、つまり揺れや振動が著しく軽減できたなら、報道陣にそれをアピールすれば良いのにと思います。また、ワイヤレス給電のためのガイドウェイ側の設備が実験線全線に設置できたのかどうかなどもう少し詳しい説明をするとか…。

関連ページ:"日暮れて道遠し"(2020/10/20)

短時間の試乗で安全性まではわからない

 『日経ビジネス』2018年8月号で、JR東日本元会長の松田昌士さんは取材に答えて 短時間の試乗で「いける」と思い込むのは危険な素人考えだと と指摘していました。

『日経ビジネス』2018年8月号、「リニア新幹線 夢か、悪夢か」、"「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実"

 超電導リニアはその仕組みから、振動や揺れの解決が難しいといえます。ガイドウェイの側壁に約90㎝おきに浮上用コイルが等間隔で並んでいます。そこを超電導磁石が走るのです。規則正しい凸凹道の上を走るのと同じで、常に車体に振動を与えています。また「磁気バネ」で車体を支えているので、ガイドウェイの中で車体は左右に上下にゆれます。この振動と揺れを軽減するのが非常に難しい。このことは、1970年代の終わりにはドイツで指摘されていたことです。HSST(名古屋のリニモ)を開発した日本航空も超電導について似たような指摘をしていました。振動と揺れは高速走行するときの安定性と安全性に大きく関わる問題だと思います。

8日の試乗会の記事