更新:2020/10/20、2020/10/22 補足

日暮れて道遠し

 10月19日に、JR東海が山梨実験線で「エルゼロ系」改良型の試験車両を報道陣に公開したそうです。同時に試乗も。

 『朝日』"改良型リニア、騒音低くゆったりと 時速500キロ体験"は、次のように書いています。注意深く読むと興味深いです。

報道関係者は、従来型と改良型の2種類の座席で営業運転の最高時速500キロ走行を体験した。改良型は、従来型よりゆったりとした座り心地だった。加速と減速時の揺れや騒音も低く感じ、車内も明るくなった印象があった。それでも東海道新幹線と比べれば、揺れはやや大きく感じた。

 つまり、「揺れ」については、「 新幹線 < 改良型 < 従来型 」ということでしょう。

 騒音については、内装の素材や座席を変えることで対策がある程度できたのだろうと思うのですが、揺れの問題について肝心となるはずの足回りについては、もう対策のしようがないということだろうと思います。技術陣は無理に無理を重ねる努力をしているんでしょうが、これは大変なことです。1970年の開発開始からすでに半世紀、「日暮れて道遠し」です。

 内装が白を基調としているのは、この乗り物にのる乗客に覚悟を喚起する上で良いのではないかと思います。棺桶に入るときはたいてい白装束です。

 『毎日』 "先端に丸み、空気抵抗減 リニア中央新幹線、改良型試験車を報道陣に公開" は、

山梨リニア実験センターの大島浩所長は「今後もやり残すことが無いよう性能や安全性、快適性を改良していく」と述べた。

 「やり残したことがある」、完成にはまだ遠いという意味なのか。

 『NHK』(山梨) "改良型リニア走行 内部を公開" は、

山梨リニア実験センターの大島浩所長は「技術開発に終わりはないので、さらに快適に乗車できるように実験を続けていきたい」と話していました。(動画の中のコメントは:技術開発というのは限度がないといいますか、常にその時々一番良いものを求めていくのが開発だと思っておりますので、現時点でわれわれが考えている一番良い車両をつくったというふうに、私どもとしては思っております)

 同じページの動画を見ると、レポーターは揺れを感じませんと言っているのですが、画面はかなり揺れてます。カメラマンがカメラを安定して構えれないほど車体が揺れているということです。高速で走る列車では揺れは乗り心地だけでなく安全性に関わる問題です。

関連ページ

関連動画

 Yutube の 『SankeiNews』"リニア新型車両、ゆったり座席で快適性向上 先頭に丸みをもたせ騒音低減"

 新しい内装の通路の狭さ、天井の低さがよく分かります。揺れが目立たないように、上手に撮影されたビデオなのですが、48秒付近で座席の背もたれのリクライニングやテーブルの出し方などの説明する場面では、実演している職員の体が小刻みに揺れているのが分かります。1分33秒付近から、左の荷物の棚の揺れ方と車体がヨーイング(車体全体が水平方向に左右に回転するような揺れ)。2分38秒付近から、カメラマンの体の揺れ方、ヨーイング。3分、トンネル内に水が。3分4秒付近、従来型の方が通路は広い。3分24秒、お猿が見学。3分55秒から、ガイドウェイに浸かった感じのリニア。10㎝浮上しても左右の隙間は見かけ上7.5cm、実際は4㎝(下の画像)。

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車体の下半分がほぼガイドウェイに浸かった状態。この様子をみると、乗るのは怖い感じがします。分岐装置では車体の下半分が側壁を越えないといけないので、装置が複雑になります。従来の鉄道ならレールに約4㎝の隙間(車輪のフランジが通過できれば十分)をつくれば列車は隣の線路に移れます。鉄道なら脱線があってそのあとの段階として転覆とか衝突になりますが、超電導リニアの場合は脱線にあたるのものは側壁との衝突です。

 4分から、ゆっくりなめらかに走るリニア。でも、この場合は車輪走行です。

 Yutube の『ANNnewsCH』"リニア新型車両の時速500km体感 騒音低減と実用性(2020年10月19日)" では、かなり揺れてます。

 Yutube の 『【公式】日テレNEWS』 "リニア“最新車両”時速500キロ走行公開(2020年10月19日放送「news every.」より)"。

 Yutube の 『テレ東NEWS』 "リニア新幹線4代目試験車を報道公開(2020年10月19日)" 。4代目といってますが、トランスラピッドでは上海で2003年から走っているのは、3代目。超電導リニアの開発速度はかなり遅いといえます。

 上の動画の次に自動的に出てきたのが、偶然だと思いますが、『NPO法人科学映像館』の "振動の世界 東京文映製作"。ちょっと古いですが、このビデオは非常におもしろいと思います。15分10秒からの自動車の振動についてから後半は特に。「乗り心地」は「揺れ」とか「振動」と大きく関係するのですが、ドイツが1970年代後半に磁気浮上鉄道に超電導磁石の採用を止めた理由の一つに、「全ての運転状態での快適な乗り心地を得るための技術が未解決」ということがありました(参考)。