更新:2022/07/25
JR東海、公的文書の扱いに問題あり
読んでわくわくするような、あまり面白い話ではないのですが…、まあ、細かいことなんですが…、安倍、菅、岸田と続く自公政権のもとで行われてきた文書改竄、文書破棄なんかと共通する話です。
長野県環境部の「環境影響評価法対象事業 中央新幹線(東京都・名古屋市間)」で、JR東海がリニア計画について環境影響に関して公表した調査や計画について、長野県の環境影響評価技術委員会がどう対応したが分かります。時間の流れに沿って、表形式で書かれています。
ページの上から追っていくと、「事後調査結果」という表の「平成29年2月」に「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について(外部サイト)」という欄があります。
さらに下を見ていくと、「令和元年8月」に「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について(その2)(外部サイト)」と「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境保全について(外部サイト)」という2つのリンクが並んでいます。
平成29年2月についてみると、平成29年2月にあるべきはずの「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について 平成29年2月」はありません。現在、あるものは、PDFファイル(24.1MB)「豊丘村内発生土置き場(本山)その2」。PDFファイルのタイトルは「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について(その2) 令和元年8月」です。
長野県のページは、平成29年(2017年2月)に出た「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について」について、平成29年2月16日の技術委員会で論議して、2017年5月18日に「知事助言」を通知していたのです(『南信州』2017年4月19日)。長野県のページは時間を追う形になってますから、リンク先のJR東海のページには、2017年2月時点のファイルが残されている必要があるはずです。JR東海は、公に発表した文書をどう扱うべきか、尊重すべきか、そういうことが分かっていないのか、情報隠しをしようとしているか、つまり、バカなのか、悪意があってのことなのか。
また、長野県はJR東海から送付された時点のファイルを長野県のサーバー内で保存公開すべきでした。外部リンクではなく。もし県庁内部に当時のファイルが保存されていないとすれば、環境技術委員会の議論はなかったことになりませんか?
長野県のページの令和元年8月のところでJR東海の公表している文書は次の2つ。文書名がリンクになっていますが、文書そのものURLではなくて、文書がおいてあるJR東海のHPの別々のページのURLです。
- (1) https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/efforts/nagano/posteriori_survey.html
(「ページのタイトルは「事後調査・モニタリング」」)(2022年7月24日時点のページキャッシュPDF) - (2) https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/efforts/nagano/plan.html
(ページのタイトルは「環境保全の計画」)(2022年7月24日時点のページキャッシュPDF)
本山関係で、(1)にあるのは、「豊丘村内発生土置き場(本山)その2 本編(24.1MB) 資料編(8.4MB)」。これは平成29年2月のJR東海のページにあるのと同じファイル。
本山関係で、(2)にあるのは、「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境保全について (4.2MB)」。「※ 2021年6月21日に差替えました。」と添え書きがあります。開いたPDFの表紙の右上には「(令和3年6月21日 差替)」と書いてあり、タイトルは「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境保全について 令和元年8月」です。
「豊丘村内発生土置き場(本山)その2」の本編と「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境保全について」の「第1章 本書の概要」は、図1、図2のとおり。
図1
図2
どちらも:
- 2017年2月に「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について(平成29年2月)」を公表
- 2019年8月に「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について(その2)(令和元年8月)」を公表
- 上とは別に2019年8月に「豊丘村内発生土置き場(本山)における環境保全について」を公表
と、書いています。
JR東海は2017年の4月21日に本山の候補地内で希少植物の移植作業を行いました。保安林指定の解除が確定したのが2020年12月24日で、実際に予定地内部での工事が始まったのはそれ以降でした。
リニア計画は環境影響評価法の対象事業となっています。環境影響評価法は、「事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保」(第1条)することを目的としているので、JR東海の行ったことは、工事ができるかできないか分からない時期に行った以上、違法とか不適切というしかありません。
JR東海は、2017年7月20日に開かれた第9回豊丘村のリニア対策員会で、委員から移植作業について問題があるのではないかと指摘されました。9月29日の第10回で、JR東海が詳しい経緯を説明しています。要点は、2017年の2月に環境保全計画をだしておりその中に移植する計画が記載されているので問題はないとの説明です。
すでに書きましたが、今現在のJR東海のホームページでそのことが確認できるかといえば、本山の環境保全について残されている文書は、いずれも2019年8月以降のものであり、2017年2月に公表されたという文書は存在しません。2017年4月の移植を正当化できるかも知れない根拠となる文書は存在しないことになる。
ズルズル引っ張られる長野県
長野県もJR東海と同様の解釈をしていました。環境影響評価法では「国、地方公共団体、事業者及び国民は、事業の実施前における環境影響評価の重要性を深く認識して、この法律の規定による環境影響評価その他の手続が適切かつ円滑に行われ、事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し、又は低減することその他の環境の保全についての配慮が適正になされるようにそれぞれの立場で努めなければならない。」(第3条)と規定しています。長野県は環境影響評価については問題ない行為だが保安林内で事前の相談なく作業を行ったことが問題として、環境部ではなく林務課の掌握する範囲のことで不適切なものとして「指導」しました。環境影響評価について問題がないという解釈は法にてらして不適切です。
長野県には「長野県希少野生動植物保護条例」(2003年3月24日条例第32号)があって、希少植物の採取については届け出が必要なはず。採取を目撃した希少種の種類について目撃した時点で、条例が対象としている種類かどうかを住民としては判断のしようがありませんでしたが、保護すべきだから移植のために採取したことは間違いないですね。JR東海による採取を目撃した住民が県環境部へ問い合わせた時の環境部の慌てようからすれば、こっち関係の不適切があったのかと思い調べて見ました。
「(令和3年6月21日 差替) 豊丘村内 発生土置き場(本山)における環境保全について 令和元年8月」の3-37によれば2017年4月に移植したのはセンブリ。着工前に播種したものとしてフトボナギナタコウジュ(同3-39)、イブキキンモウゴケ、オオミズゴケについては「令和元年度秋季に移植実施予定」(同3-41)と書いていあります。全部が保安林指定解除前に行われたことになります。センブリは県の条例は対象としていないようですが、環境部はなぜ慌てたんでしょうか。
さて、web.archive.org のサイトに、2018年11月11日12時59分 にキャッシュ(保存)されたJR東海のページには「本編① (13.4MB)」のPDF「(平成29年5月17日 更新)(平成29年2月16日 更新) 豊丘村内発生土置き場(本山)における環境の調査及び影響検討の結果について 平成29年2月」というファイルが残されています。(キャッシュのコピー)。「本編②(15.6MB)」(同コピー)、「資料編(8.0MB)」(同コピー)というファイルも残されています。しかし、ここにファイルが残されているのは、日本の環境影響評価制度とはまったく関係ないことなのです。
念のために。2017年2月の日付のファイルのあるなしは、JR東海の公的な文書に対する態度、姿勢の問題で、これは非常にマズイことだと思います。しかし、移植作業の問題点は、工事できることが正式に決定する3年と8か月もまえに行ったということで、環境保全に対するJR東海の考え方の問題であり、違法性があるのではないかという点です。
JR東海は「環境影響評価書」(2014年)についても、非常に大きな訂正について、正誤表によらず、元のファイルに直接上書しています(参考)。本山の場合もそれと同じです。公的な文書を扱う組織としてまったく信頼できません。
JR東海さんは、ご自分のやっていることが理解できているんでしょうか。2017年2月に公表したファイル(文書)、2019年8月に公表した文書のどちらも公表し続ける義務があると思います。
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