更新:2022/08/13
8月11日(a) 『赤旗』11面 "リニア工事 国は指導を 掘削停止 住民と山添氏が迫る"(web版)。記事は、昨年10月に工事の影響を調べるとして「調査掘進」を始め … 山添氏は国交省担当者に今回の事故について「重大だという認識はあるのか」と質問
したと書いています。
「調査掘進」と記事はカギカッコをつけて強調して、山添議員は今回の事故は重大と指摘したのですが、どういう点で重大なのか具体的で明確な書き方でないように思います。
--- つづきはここから ---
北品川工区でも、坂下西工区でも、実はシールド工法の掘進が開始できずにいるのではないか。事前の地質調査が十分に行われていなかったのではないか。大断面のシールド機による掘削がやれば必ずできるというほどまでに十分な経験とか技術的な蓄積がないのではないか。
北品川立坑から等々力立坑までの約8㎞の間でJR東海が新たに行ったボーリングは37カ所。しかし、狭い範囲で5~6本行ったところがあって路線に沿ってはだいたい9つの位置で行っただけのようにも見えます。そうみるとボーリングの数は890mに1カ所程度。北品川工区については別の目的で行われたボーリング調査結果も参考にしているようですが、それらは大深度トンネルを掘るために行われたものではないはずです。
"中央新幹線第一首都圏トンネル新設(北品川工区)シールドトンネルにおける安全・安心等の取組みに関する説明会(2021年6月8日説明会のスライドPDF)"(31・32ページ)
飯田市内のリニアの風越山トンネルのシールド工事区間(3.3㎞)で行ったボーリングは路線に沿って15カ所、220mに1本行っているのに比べ少ないと思います。
北品川立坑ヤード付近では狭い範囲で6カ所も行っているのにシールド機がヤード敷地内から出れないでいる。シールド機が地質に適した設計ができていなかったのではないかと思います。愛知県春日井市の坂下西工区では立坑の壁面さえ突破できていない。
また、広島市高速5号線の二葉山トンネル(全長1.8㎞のうち1.4㎞がシールド工法、掘削断面直径約13.2m)でもシールド機がたびたび停止する事故が起きています。このトンネルについては「トンネル安全検討委員会」で地質調査の内容について疑問が指摘されていたのに工事が始まったようです。
『日経クロステック』2022年7月15日 "広島高速のトンネル工事で8カ月に6度中断、工期過ぎても進捗6割弱"、2022年2月21日 "シールド機トラブルで3カ月に3度中断、広島高速5号線のトンネル工事"、『広島 NEWS WEB』7月28日 "5号線「二葉山トンネル」工期延長 追加工事費用はJV負担を"、「 日本共産党 広島市会議員団」"2019年第2回 6月定例会 建設委員会 中森辰一議員"、広島市 > "広島高速5号線事業について"、"広島高速5号線トンネル安全検討委員会について"
直径が14mとか16mの大断面のシールド工事はまだ経験が十分に蓄積されていないのではないかと思います。「調査掘進」といういい方にゴマカシがあると思います。「初期掘進」ができずにいるのですが、実は大断面のシールド工法が実用的なのかどうか「調査」しているようにも見えますね。
関連ページ:"「調査掘進」と「初期掘進」"