更新:2022/08/15

残土が足りない!?

喬木村のガイドウェイ組立保管ヤード

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喬木村阿島堰下のガイドウェイ組立(製作)保管ヤード

 『南信州』2022年13日1面 "喬木 リニアガイドウェイで減工 盛土用残土確保できず" によれば、喬木村堰下のリニアガイドウェイ組立保管ヤードの造成にリニア中央新幹線の中アルプストンネル松川工区(妙琴原)の残土を使う予定だったけれど、公共事業で使う分を優先しているからJR東海の自社施設であるガイドウェイヤード造成分まで確保できないため喬木村が請け負う排水構造物の工事を遅らせるようです。12日の村議会全員協議会で8030万円の請負金額を4576万円に減額変更するとの説明があったそうです。

 記事によれば、喬木村のリニアガイドウェイ組立保管ヤードをJR東海は自社施設といっているようですが、自社施設というのは実は「残土置き場」という意味でもあります。このあたり非常にあいまいなことになっていると思います。アセスメントの事後の環境調査や保全計画としては「発生土置き場」であるからやることになっています。高森町下市田の場合は、高森町の産業用地造成に残土を提供する形で、事業主体は高森町なので、環境調査などは高森町の意向によるものと、JR東海は説明し、高森町はやらないといっています。しかし、トンネル残土で造成してガイドウェイヤードとして8年なのか10年なのか使ったあとは施設を撤去して返すことはまったく同じなわけで、それを数年まえ、地元の住民説明で指摘され、当時の長野工事事務所長(現在、静岡副支社長)も実質的には同じと認めています。実質的にということは、環境保全とか住民の日常生活の安全に関わる問題では同じということです。それが住民の立場というもの。なのに、一方は環境調査や保全計画をするのに一方はやらないという不思議。

 トンネル掘削がどんどん順調に進めば、大規模な土捨て場がいるはずなんですが、リニア工事が始まって見ると実際にはトンネル工事は予想より時間がかかる。認可後8年たって、2027年までの残り時間は5年という今、トンネル残土の処分先が3割しか確定できていない現在でも、一時的にでも残土が足りなくなる。しかし、ガイドウェイの部品は工場でどんどん生産され、造成が半分以下の堰下のヤードに多数置かれています。

 2027年の開業を目指すといっていたんですが、このリニア計画は、ほんとうは、「ゆきあたりばったり」な部分がかなりあるのではないかと思います。

 現地を見てきました。

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[ 拡大 ] 西側=天竜川の堤防からみたところ

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[ 拡大 ] 北側=県道・上飯田線側からみたところ

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ガイドウェイの部品

 野積みしてある部品が何かは分かりませんが、年数で劣化する部分だってあるはず。10年さきなのか20年さきなのか、開業時期が遅れるたびに、これらの部品はどんどん古くなっていっていきますね。世界中どこでも使ってるのでいつでも手に入る鉄のレールではあり得ないことだろうと思います。

 国内で鉄道レールを製造しているのは日本製鉄(工場は福岡県北九州市)とJFEスチール(工場は広島県福山市)。船で運んで鉄道に積み替えて、使う場所まで鉄道で運んでいます。最長150mのロングレールをそのままの形で輸送することもできるようです。飯田線では25mの長さのレールを2両編成の専用気動車で運んでいます。リニアでは、道路をトレーラーで運ぶためなんだろうと思いますが、レールにあたる、ガイドウェイのコイルを取り付けるパネルは長さは12.6mです。使う場所にできるだけ近い場所で製作することになります。

 レールとガイドウェイのパネルの体積を比べると明らかですが、保管も鉄のレールの方が少ないスペースですみます。線路わきの空き地で保管しています(参考参考)。使用済みのレールは溶かしてまたレールにすることもできますが、コンクリート製のガイドウェイはどうリサイクルするんでしょうか?

 鉄道レール1本(25m)をつくるのにかかる時間とガイドウェイのパネル2枚(12.6×2)を作る時間は、どちらがよけいにいるのか?

 やっぱり、リニアは無駄が多いです。