更新:2022/09/18
731部隊の証言展示について
『信毎』17日35面 "飯田市平和祈念館 731部隊証言展示見送り 市教委「真摯に意見受け止める」 全体の展示の在り方検討へ"。 --- 続きはここから --
飯田市教育委員会の松下徹参与への取材をもとにした記事です。
松下参与によると、開館前に行った市内小中学校の社会科教員や女性団体との意見交換会では「(全体の展示が)教科書の内容を超え、学習を組み立てる上で難しい」「生々しい記載は見直してほしい」といった声が寄せられた。一方で、表現を配慮した上で戦争の残酷さを伝える内容を展示した方がいいとの意見もあり、「市民の間にいろいろな意見があると認識し、十分な検討が必要と判断した」という。(下線は引用者)
こまかいことですが、下線部に注目すると、人が集まって行った一つの会で出て来た意見について、一方は「声が寄せられた」、また一方は「意見もあり」となっています。意見がどういういきさつで出てきたのかという点でいうと、「寄せる」は「意見・情報などを送り届ける。手紙・文章などを送る。提供する。」という意味になります。つまり、展示に否定的な意見は記事にある開館前の「意見交換会」でてきたものではない可能性もある。一方、「表現を配慮した上で…展示した方がいい」という意見は「意見交換会」の場でだされたものでしょう。参与が思わずおこなった言葉の使い分けを記者さんが正確に書き留めたとしたらそうなると思います。とすれば、教委は「外野」の意見を聞いた可能性もある。
他の公共施設では展示の前例が見当たらず、部隊の具体的な活動の事実認定について松下参与は「高度な判断が求められ、開館当初での判断は難しかった」とも。今後の展示の在り方については「(専門家らから)幅広く意見を聞き、協議し、検討していきたい」とした。
「他の公共施設では展示の前例が見当たら」なくても「部隊の具体的な活動の事実認定」ができないという理由にはならないはず。飯田市図書館にも731部隊について書いた本や、逆にそういう事実はなかったとする本もあるはず。それらを読んで判断するのことは専門家でなくてもできることです。松下参与や教育委員会に判断能力がないといっていることになります。
飯田中央、上郷、鼎、駅前の飯田市中心部にある図書館の蔵書から「731部隊」で検索すると、常石敬一著『731部隊全史 石井機関と軍学官共同体』、シェルダン・H・ハリス著『死の工場 隠蔽された731部隊』、森村誠一著『友よ、白い花を 21世紀へのカンタータ 『悪魔の飽食』』、松村高夫著『≪論争≫ 731部隊 増補版』など16点の本があることが分かります。「自虐史観」で藤岡信勝著『「自虐史観」の病理』など11点。教育委員会の皆さんの読解力であれば判断できるとは思うのですが。
『レイバーネット』のこのページ(*)によれば、飯田市は「関東軍防疫給水部等が細菌戦を行ったことを示す資料は現 時点では確認されていない」という国会での政府答弁を根拠にしています。これは地元紙でも報道されています。
* "長野県飯田市の平和祈念館で起きていること/拒否された「元731部隊員の証言パネル」展示" (2022-09-07)
展示内容は、731部隊(関東軍防疫給水部)が細菌戦の研究などのために現地の民間人や捕虜に対して生体実験をしていたことに関するところが主で、実戦で細菌戦を行ったという資料がないことで、生体実験がなかったという根拠にはならないです。飯田市の説明は見当はずれです。
『レイバーネット』の記事は、飯田市の対応の背景には、恐らく過去の日本の戦争を美化し加害の事実を見ようとしない日本の政権と政治勢力の圧力や、それへの地方行政の忖度があると感じている。
といってますが、リニア問題に対するリニア推進部の姿勢をみても、JR東海への忖度がみえます。牧野市政16年間で上層部の市職員のモラルが低下したのではと思います。