訂正:2023/12/05 工事説明会を10日に行われたと書いていますが、間違いで11日夜行われました。
更新:2022/10/12
鳶ヶ巣沢環境対策事業工事説明会
リニアが中止になって、「仕方ない」で済む問題か?
10日夜、大鹿村交流センターで「大鹿村住民」対象に「鳶ヶ巣沢環境対策事業工事説明会」。リニアのトンネル残土を鳶ヶ巣崩壊地(* アカナギ)直下の小渋川岸に盛り土する計画の工事説明会。新聞記事になりそうな内容としては、鳶ヶ巣に村全体から出るトンネル残土約300万㎥のうちの約1割の27万㎥の残土を置くことで、小渋線を使った残土運搬について、土曜日の運行休止を拡大できるという点かなと思いました。
- 事業目的と概要(資料4ページ)
- 計画平面図(資料5ページ)
- 横断図等(資料6ページ)
- 地震で盛土が崩れた場合(資料8ページ)
- 盛土正面に計画の橋りょう位置を変更(資料9ページ)
- 流路工のえん堤(資料18ページ)
- 工事中の安全管理 資料21ページ、資料22ページ
- 残土運搬車は仮橋1を通行(資料26ページ)
- 工事工程(資料28ページ)
「リニア連絡協議会等通じて適宜ご説明します」という部分は、言葉としては「しっかり説明したします」といっていましたね。工事の完了は「2026年度」の第4四半期なので、2027年の3月です。
鳶ヶ巣崩壊地は「標高1320mの尾根から標高770mの河床まで、落差550mの斜面全体が崩落しています」(*)。「明治以前から崩壊が続いており、土砂が小渋川をせき止め、たびたび災害を引き起こし…事業開始当初は、崩壊による土砂止めなどの山腹工を試行したが、傾斜が急で乾燥した土壌のため、森林復旧は進まなかったが、現在は、表土に資材を吹き付ける工法などの新緑化技術を採り入れて復旧成果をあげている。」。対策として、現在やっているのは、崩れてくるのを遅らせ崩れてきたものはそのまま川に流す方法と言えると思います。大鹿村が主張する環境対策というのは崩れてくるものを下で受け止めるということだと思います。
* 『日経クロステック』2009年7月14日 "リニア新幹線の南アルプスルートは安全か 地質の専門家が斜面崩落の危険性を指摘" (執筆者は大鹿村中央構造線博物館学芸員・河本和朗氏)
** 国土交通省 天竜川上流河川事務所 > 人と暮らしの伊那谷遺産プロジェクト > 鳶ヶ巣大崩壊地
JR東海は大鹿には残土を処分する適当な場所がないといっていたはずで、工事の目的を副村長が説明していることからも、事業主体が大鹿村であることからしても、このアイデアは大鹿村が発案したものだろうと思います。質疑の中で、「責任問題」を住民から指摘され、JR東海が責任の度合いが一番重くなるような説明を村はしていましたが、どう考えても第一の責任は村にあると思います。将来、この盛土が原因で災害が起きた場合に責任を問われるのは第一に大鹿村だと思います(説明会資料29ページ)。
説明を聞いていて気になった点は:
- 盛り土内の水位を下げる地下排水管が、管そのものは豊丘村の本山と同じ直径1mの樹脂製の穴あきパイプなのですが、目詰まり対策が特にされない点。大鹿の残土は堆積岩主体で、豊丘村の場合は花崗岩主体のズリである点は違うのですが、本山ではパイプ周りに砕石を起きその上に不織布を設置するなどしているし、1mの管の下にやや細い補助のパイプを配置しています。奥行の違いもあるでしょうが、地中の水位の監視井戸など本山のほうが手が込んでいる印象です(資料7ページ)。
- 掘削で出て来た「蛇紋岩」を盛り土の一部に使うという点と、「蛇紋岩」を扱うので粉じん対策で散水するという点。「蛇紋岩」は水に触れると変化するはず。そんなものを盛土の中に入れてよいのかと思います(資料24ページ)。
- 目的の説明に関連して副村長は「山の後退」を防ぐためと説明しましたが、補足説明で村長が映像上で示した部分が「山」というのが地山なのか堆積物なのか、またちょうど境目なのか判然としません。不安的な堆積物を安定化させるということもいっているので、盛土全体としては、新たな盛土の背後に盛り土として何の対策もしていない不安定な部分が存在することになります。
住民から出た質問指摘は:
- 工事完了後の責任の所在を明確にすべき ⇒ (回答)盛り土の維持管理はJR東海、流路の日常点検は村、護岸は河川管理者というような協定を結ぶ予定
- 今回の説明会の回覧文書がこなかったとの指摘に、村が回覧文書や音声広報やホームページで知らせたと答えると、音声放送も聞けなかったというと、村の音声広報を聞けばわかるはずでそれを聞くのは村民の義務だとの発言が別の参加者からありました。当方もホームページで時間や場所等確認しようと思いましたが見つけることができませんでしたね(サイト内検索もしましたが)。文書を各戸に配布すべきとの要望。
- 現場に既に堆積している「蛇紋岩」があるのではないか ⇒ 盛り土に使う場合も、搬出する場合もある
- 盛り土そのものの強度があっても、上部の鳶ヶ巣崩壊地の治山事業も完全というわけでないし、小渋川のより上流にも崩壊地があって、最近は土砂の流出も多い。下流の下市場地区などは非常に心配だ。
- 盛土が原因の災害が発生した場合、村の点検の不備を指摘される可能性もあるのではないか。(辰野町で起きた飯田線の転覆事故では辰野町の農業用水の管理に関してJR東海が賠償を求める事件があった)
- 崩壊地の下に盛土をした事例がほかにあるのか ⇒ 村は調べていないようで、治山事業の範囲でない部分について沢の河川対策として行うみたいなピントをはずした回答
- 小渋川の最高水位3.8mという数字は何年確率の豪雨によるものなのか ⇒ 直接に何年確率によるという数字ではないが、なにか他の基準から出てくるもののようなのですが、同じようなものだと思うと説明
- JR東海がなくなった後のことを協定文書に明記すべき ⇒ 文書にするのは難しい
- 自社事用地(小渋川斜坑口横の変電所予定地)で要対策土を処分するとJR東海は説明しているが、村長は新聞で要対策土は村内に置いてほしくないといっている ⇒ 無害化や不溶化など出来ないなら置いてほしくないという意味。新聞の書き方が不十分。
- 南アルプス地域の自然の在り方を示す景観で観光資源として現状のままが価値があると思う ⇒ 安全に住みたい住民のため
- 村全体のトンネル残土300万㎥のうちの約1割27万立米が処分できるなら、小渋線の残土運搬の土曜運休ができるのではないか ⇒ 現状6日を5日にすれば運搬量としては1割以上だが、繁忙期に土曜運休の拡大をできると思う
- 工事工程は2026年度第4四半期までになっている。2027年開業に間に合うのか。 ⇒ 南アルプストンネルの長野工区のトンネル工事は2026年11月まで完了させたいと考えている。
- リニア工事が中止になった場合、エコパーク、ジオパークの大鹿村に作りかけの廃墟が残ることになるが、村長はそうなった場合どう考えるか ⇒ それは仕方ないことだと思うし、それはそれで何かの利用価値があるかも知れない
- そうならないよう、工事の中止を求めるような考えはないのか ⇒ 早くても遅くても掘ったトンネルの長さに違いがあるだけ
- 費用の問題。これまでとこれからの費用はどれほど? ⇒ これまではかかっていない、これからは他の沢の日常的な点検費用と同じ程度。 ⇒ 何かあったら、JR東海に責任を負わせるというのは虫が良すぎるような気がしますね。または、住民にそれを上回るリスクを背負わせているのかも知れません。
終了は9時25分。途中で参加者から閉会動議が出て、別の参加者が聞きたくない人は帰れば良いのではとの発言に何人かが退場するという一幕も。
最後の村長の「仕方ない」は非常に正直なお言葉で、こんな発言をさせないように司会の副村長がしっかり進行をしないからとの声が、散会後きかれました。
会場入り口にも「大鹿村村民(住民だったかも)対象の説明」と貼り紙があり、司会の副村長も村民対象を強調し、住民以外の質問は受けないので別に村に出して欲しいといっていました。まあ、別に頼んだわけでもないのに、いいたいことは住民の方がいってくれたし、村長さんの「仕方ない」というお言葉が拝聴できたことが大収穫でした。
大鹿村役場は身の丈に合わないことをしようとしていると思います。