更新:2024/07/31、2024/08/08 補足

長野県駅の工事説明会

 7月28日午後6時30分から、上郷公民館でリニア駅工事ついての説明会。約40名の参加。JR東海、長野県、飯田市がリニア本体工事とアクセス道路、駅前周辺整備について説明。報道非公開。約2時間55分の説明会でした。

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[ 拡大 ] 配布資料より。

 説明の対象の工事は、全長約950m(幅40m)の駅部の土曽川橋りょうを除いた部分。

 JR東海の説明は丁寧といえるものじゃないのですが、どうもその原因の一つに、説明をする職員の一般常識と専門知識について不十分さがあるのではという印象をうけました。

注:「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」の7月10日の要請についてのJR東海にの回答が29日にあって、1時間ほど懇談をしました。そのときに聞いた確認したことやJR東海側のコメントも反映しています。

ケーソン工法の必要性の説明が不十分

 長野県駅の高架部の橋脚の基礎の工事方法として、直接基礎の場合とケーソン工法の場合があります。直接基礎は基礎の一番下になる部分まで地面を掘って穴の中で基礎をつくります。ケーソン基礎は、簡単にいえば、地上でつくった基礎を、その下側を掘りながら沈めていきます。現場で出てきた残土を中詰めに使いますというのが、2022年秋のJR東海の説明でした。

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[ 拡大 ]配布資料より。土曽川橋梁の橋脚「P1」(ケーソン基礎)とその右の橋脚(直接基礎)の距離はそれほど離れていません。

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[ 拡大 ]配布資料より。土曽川橋梁の橋脚「P3」(ケーソン基礎)とその左の橋脚(直接基礎)は隣り合わせです。

 配布資料の図面を見ると、直接基礎とケーソン基礎が隣り合わせになっています。つまり地盤としてはどちらの工法でも工事はできる可能性が高いはずです。なんでケーソン工法の必要があるの?との質問に、JR側は、「P1」~「P3」は支える橋桁が長いので、強度の高い構造の基礎が必要なのでケーソン工法を採用すると説明しました。基礎の強度は基礎の大きさに関係するはずであって、工事の仕方の違いは関係ないはずです。ところがケーソン基礎のほうが強度があるという説明になっちゃってます。さらに、費用の点など勘案してって、なにそれ見たいなことまでいいましたよ。たぶんケーソン工法の方がその設備なんか見ても、作業の労働条件をみても費用はかかるはず。費用が問題になるとすれば、要対策土の処分にかかる費用を考えると安いという意味のことを、ついうっかりいってしまったのか?

 つまり、ケーソン工法を選択した理由について、納得できるような説明ができていない。要対策土を中詰め材に活用できるということ以外に理由はなさそうです。

悪意がないならバカ どっちも問題

 ゆえに、2022年の時点でも要対策土活用すると説明ができたはずなのに今年になっていいだした。誰がみても最初からいえよと思うでしょう。ところが2022年秋から要対策土の活用を考えてたにちがいないという捉え方は事実でないから訂正してねとJR東海はおっしゃる。こちら側の受け取り方や印象がそうなってしまったのは事実であるので訂正すべきとかいう問題じゃないですね。しかも、動機や状況証拠は十分だと思うのです。

 それに、JR東海は2022年以降の去年あたりだったかに思いついたと説明しているんですが、それが事実だとしたら、そういうのを世間では「マヌケ」というはず。こういう「マヌケ」なことを考えているような会社が考えているリニアそのものが「マヌケ」なんじゃないかとか、リニアのような壮大な計画をほんとにやっていけんるんだろうかと心配になるはず。

 なんか一般的なコミュニケーションが取れない、そういう世間のしきたりが理解できていない感じですね。

要対策土について気をつかってやってるんだぜ

 要対策土に関連して、多治見の処分場に持ち込まれた健全と判断された残土から基準値越えの重金属類が見つかったり、早川町の仮置き場からセレンが出たりしたことは、要対策土と健全土の分別の仕方について、不十分な点があるではないかという質問。日ごとに出てくるズリの量は違うのだから、サンプリングのし方やサンプリング検査自体に問題があるんじゃないのという指摘に、JR東海は、全量を検査機関に持ち込むことはできないのでサンプリングでやっていると回答。質問の答えになってませんね。(*)

 さらに、長野県担当部長と工事事務所長の間に座っていた、おそらく環境保全事務所長だと思うのですが、トンネル残土は土壌汚染対策法の対象になっていないなどといいだす始末。じゃあ、なんで「自然由来」の重金属類を含む要対策土が際限なく出てくるので工事を中止するトンネルがあったりするんですか?

(2024/08/02 補足)* そこまで具体的には質問してないですが、たとえば掘削断面積100㎡の本坑を1日1.2m掘って180㎥の残土が出てきた場合と、4.8m掘って720㎥出てきた場合で、調べる標本の数が同じなら、ごく単純に考えても、「当たる確率=基準値越えを検出する確率」は4分の一になるはず。1日あたりに掘削した残土の量で検査の正確さに差がでます。そういう差が出ないような標本の取り方をしているのかという点を聞いたのです。JR東海の担当者であれば、「サンプリングの仕方に問題があるのでは」と聞けば、そういうことを聞いているんだと理解できるだろうと思ったのですが、理解できないのか(バカなのか)、スルーしたのか(悪意があるのか)。多治見の残土処分場に重金属類など有害物が基準値以下として持ち込まれたリニアのトンネル残土から基準の2.1倍のヒ素を含むものが見つかっていました(『赤旗』2022年3月17日)。JR東海の検査の仕方に問題があると推測できる事件です。山梨の早川町の仮置き場の排水からセレンが出たというのも似た話ですね(JR東海)。トンネル掘削が順調に進めば進むほど多量の要対策土が健全土としてなんの対策もせずに「活用」されたり「処分」されたりすることになります。

想定外に対応できない社風

 資料の地図は、JR東海以外のところが発行した地図に工事の計画を記入しているのですが、そういう図が15、6あるんですが、そのうち3つが、下地の地図が他と違っていました。この3つの下地の地図は駅や駅前広場が完成した時の姿を予想した地図を使っていました。どちらでもよいようなことですが、なぜ、下地の地図が違うんですかと聞きました。おそらく想定問答集にない質問に、JR東海の職員さんたちはどう答えるべきか相談しているようで、お答えをいただくまでにけっこう時間がかかりました。工事全体の概略を示すものなので、周辺整備ができた状況の地図を利用したとの回答。配布資料に使う図の作成意図について共通の理解ができていないことがわかった気がしました。あいては何を聞いてくるか分からないわけです。それに臨機応変に対応できなきゃダメでしょ。

 これもJR東海にすれば想定外の質問。愛知や神奈川や東京ではシールド工事は始まっていています。風越山トンネルはシールド工法なので、トンネル残土はNATM工法のような岩くずではなくて、ドロドロの粘土みたいなものです。どうやって要対策土を分別するんですかと質問しました。答えは、今後、掘削についての説明会があるのでその時に説明しますとのこと。たぶん、準備がしてないと答えれない。説明会に出てくるJR東海職員はトンネル掘削について一般的な理解がない人もいるんじゃないかと疑わざるを得ませんね。

スピード感がズレている やることが意外にトロイ

 土曽川橋りょうの工事については、保全計画の「更新」をして、飯田市や長野県に送付して、長野県環境影響評価技術委員会の審査、県知事の助言という手続きを踏んでから行うとの説明。保全計画書の更新版はまだできていないけれど、県知事の助言が出るまでに数カ月かかるという説明。9月から搬入というのは、9月以降から搬入であって、いまから数カ月先になるとの説明でした。これは、翌日29日に、「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」の7月10日の要請についての回答のとき確認しました。つい最近示した計画がもう遅れ始めてますというか…

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2月28日の配布資料。「中詰材投入開始」の時期を示す「▲」は令和6年度の「9~」となっています。

 ちゃんと「9~」となってますね。「9~」の枠の大きさも他の月より、ほんのちょっとだけ大きめになってます。JR東海の計画は場当たり的だとかいいますが、土木工事というものは、大きな規模になるほど予定通りにいかないはずで、全線の86%がトンネル工事でほかも大規模な土木工事を含むのに、「2027年開業」なんてことを打ち出したことを、そもそもおかしいと思わなかった、政治家はバカじゃないかと思いますね。で長野県や飯田市などが、開業の遅れについて、関連事業の見通しが立たないと、JR東海にケツをもって行くのは見苦しい話だと思います。

 長野県駅の予定地は、2011年に配慮書が公表された当時にマスコミは「高森町東南部~飯田市座光寺」に駅ができると報道しました(参考)。現在工事が行われている駅の位置は約2㎞南西に移動しています。私の記憶では、高森町の当時の熊谷町長は、駅がだんだん町外にずらされていく過程で「引き留めよう」とはしなかったと思います。今にして思えば、そのおかげで、高森町では移転を余儀なくされた町民はなかったのです。飯田市長たちはその逆をやったのです。当時の牧野市長は選挙で負けて、佐藤市長になったんですが、ある飯田市民は牧野市長は「はだかの王さま」になって選挙で負けたといってました(リンク先は「青空文庫」、「世界でいちばんの布で作った服」を「超電導リニア」に置き換えて読んでみてください)。

付録:土曽川橋りょう橋脚P1の工事状況

 ケーソン基礎の最下部の作業室とその上部の鉄筋を組んでいます。

ケーソン工事のやり方とかP1の構造については、「令和6年2月28日 丹保・北条地区 リニア関連事業に関する丹保・北条地区説明会」の資料1にあります。

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国道153号線から。手前が土曽川(右が下流方向)。

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鉄筋の並び方でケーソン基礎内部の空洞部分が4つできるのが分かると思います。この中に要対策土を詰め込む計画。空洞の内側には樹脂(材質は不明)を1~2㎝塗布するそうです。中詰め作業で締め固めるので、樹脂部分が作業に耐えるかどうか?

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左の奥の方の空き地にケーソン工事で空気を送る装置などが設置される予定。

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説明会資料

2024/08/08 補足

 7月28日の説明会で会場で配布された資料が飯田市のHPで公開されました。

令和6年7月23日、25日、28日 北条・座光寺・上郷地区 中央新幹線長野県駅(仮称)新設 高架橋・土構造物等に係る工事説明会

 23日が北条地区、25日が座光寺地区、28日が上郷地区対象に行われたんですが、JR東海の資料は3カ所で内容が違っているようです。

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赤丸部分のファイルサイズがちがう。どの部分が違っているのかな。

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