再検討:県道18号線

JR東海の準備書で、喬木村阿島の県道18号線の景観変化の予測に使われた写真が何ミリのレンズで撮影されたか再検討します。写真A~Eはすべて最近(2014年3月)私が撮影したものです。撮影方法としては、準備書の写真をプリントアウトしたものを持参し現地で、APS-Cサイズのデジタル一眼レフに18-55mmレンズをつけファインダーの像と比較して撮影しました。正確に言えば、このズームレンズの広角側は 28.8mm ですが、28mm相当といっています。35mmについては、35mmレンズをつけた同じ視野率(95パーセント)のフィルム式の一眼レフのファインダー画面と同じになるようにズームレンズをズームして、その位置に目印をつけて35mmのときにはそこにあわせるようにして撮影しました。


35mmレンズで撮影されたといわれる準備書の写真(比較しやすいように、明るさとコントラストだけ調整しました。元の画像)


写真A。28mm相当レンズでできるだけ同じ写真になるように撮影しました。左側の木のすぐ右の電柱と後ろの家の屋根の左端の重なり具合(あ)、右の家の屋根の一番奥のひさしの先と茶色い壁の家の2階の窓のサッシの中央の枠の重なり具合(い)、手前左右の家のサッシがどこまで写っているか(う)(撮影範囲)などに注目。多少のずれがあるのは、撮影位置が路上で車の通行があるので三脚を使用できなかったためです。建物の大きさや位置関係については準備書の写真とほとんど同じに見えるはずです。


写真B。写真Aの撮影位置から1m63cm後ずさりして35mm相当レンズで撮影しました。一見、上2枚の写真と同じように見えると思います。画面右の(い)の重なり具合はほとんど同じです。しかし左側の(あ)の部分は食い違っています。


写真C。写真Aの中心部を拡大したものです。赤い矢印の部分の長さを、写真Aと写真Bについて原版で調べると、写真Aでは 338ピクセル、写真Bでは 392ピクセルです。写真Bの方が約1.16倍の大きさに写っています。逆に言えば写真Aでは約86パーセントです。


写真D。写真Aの右手前部分を拡大したものです。青い矢印の部分の長さを同様に、写真Aと写真Bについて原版で調べると、写真Aでは 966ピクセル、写真Bでは 968ピクセルです。差は0.2パーセントですから、画面の手前で同じものがほぼ同じ大きさに写っている部分があるといえます。

写真AとBで比較すると、重なり方が違う部分があるとか、見えるもの見えないものがあるなどだけでなく、遠方のものの大きさもBのほうが大きく写っている、つまり遠近感も違っているのです。

準備書に使用されている県道18号線の現況の写真は、JR東海の説明は35mmレンズを使用したということですが、そうではありません。

念のために、写真Aと同じ位置で35mm相当レンズで撮影した写真を次に示します。


写真E。当然、手前の写っている範囲が準備書の写真より狭くなっています。

まとめると、同じ絵柄になるように写すというのは撮影位置を探すということです。それは、結局のところ、画面の中の物の前後の重なりが一致した部分を2つ以上探すということです(※1)。写真Aはそのようにして撮影しています。その位置で28mm相当のレンズで撮影すると準備書と水平方向(※2)でほぼ同じ範囲が写りました。しかし35mm相当のレンズでは狭い範囲しか写りませんでした。くりかえしますが、準備書に使用されている県道18号線の現況の写真はJR東海が主張するように35mmレンズで撮影されたものではありません。

もちろんこの予測地点が選ばれた理由について納得のできる説明はありません。これが大問題です。写真Cの拡大画像の道路右側のすぐ向こうは集会所なのですからその付近の景観の変化も検討されて良いはずだったと思います。

※1 ご存知のように針穴写真もカメラも基本的な原理は同じです。被写体から直線でやってくる光線は針穴やレンズの中心で左右上下が交差します。つまり前後で重なった被写体は直線上にありますから、2つの重なり=直線は必ずカメラのレンズの中で交差します。だから撮影位置は2つ以上の重なりが同時に満足できる地点といってよいのです。

※2 水平方向についてだけ説明しています。写真を良く見るとわかりますが、縦方向では準備書の写真と写真Aで多少の差があります。それは、カメラに使われるフィルムや撮像素子(CCDなどのセンサー)の縦横の比率が機種によって異なっていること、また印刷物やプリントの縦横の比率も異なることが原因です。印刷物やプリントでは 1:1.33 が一般的です。35mmフルサイズやAPS-Cサイズのデジタル一眼レフでは、ほとんどが 1:1.5 です。コンパクトデジタルカメラでは、1:1.33が普通のようです。準備書の写真は、比率が1:1.33ですから、縦横比 1:1.5のカメラに 24mm相当などの28mm相当より広い画角のレンズで撮影して横をトリミングしたか、最初からコンパクトデジタルカメラとか645判カメラの28mm相当レンズで撮影したかのどちらかでしょう。


左=APS-C(1:1.5)の28mm相当=写真B、右=デジタルコンパクトカメラ(1:1.33)の28mm相当。準備書の写真の撮影位置では、カメラを水平に構えると右のように左側の木や右側手前の電柱のてっぺんが切れてしまいます。準備書の写真の撮影者はおそらく木と電柱の全体を入れようとしてカメラを上向きにしたのだろうと思います。