天竜川橋梁のフォトモンタージュ
この天竜川橋梁については「加々須川出口からの景観」 で触れています。リニア新幹線の天竜川橋梁について、長野県の環境影響評価の技術委員会で次のようなやり取りがありました。重複しますがふたたび引用します。
(亀山委員長・第2回追加意見) ・資料編 環13-1-7ページに掲載される図13-1-2-12の天竜川橋梁のモンタージュ写真は準備書(※)にないが、このような重要な視点場からの写真が準備書(※)に掲載されていないのは不適切である。
(事業者の説明、見解等要旨=事後回答) ・主要な眺望点の抽出範囲については、計画路線や構造物から、熟視角(対象をハッキリと視認できる角度:約1度)による距離の範囲を基本に俯瞰・仰望の別及び高さ等のスケールを考慮し視点場の選定のフロー(資料集環13-1-図、ルを、 13 1 8 13-1-2-16視点場の選定のフロー)に基づき、有識者の意見を踏まえつつ、眺望点を選定しております。
・資料編 環13-1-7ページにお示ししている天竜川橋梁のフォトモンタージュ地点は天竜川左岸堤防道路の突当りに位置しており、主要な眺望点としては選定して おりません。当該地点は主要な眺望点ではありませんが、天竜川橋りょうの全景を見渡せる視点場であり、参考として資料編に記載しました。
(資料1 第5回技術委員会(準備書第2回審議)及び追加提出の意見に対する事業者の見解 (PDF:391KB))
※ 引用者注。準備書の本編の景観の影響予測評価の部分にという意味。
資料編の「図13-1-2-12」というのは次の写真です。
写真A
水平方向の画角は約140度です。普通のカメラでは撮影できる画角ではありません。簡単な画像処理ソフトで明るさとコントラストを変化して観察すると、画面を継ぎはぎしたと思われる部分が少なくとも3箇所わかります。プリントを何枚かはぎ合わせたか、専用のパノラマカメラで撮影したかです。この写真の撮影位置は下の航空写真で A です。
写真B (画面をクリックすると別窓で拡大できます)。橋梁は赤い直線部分。オレンジが路線。
撮影位置から橋梁までの距離は約100m程度。JR東海が準備書本編の景観予測に使用したといっている35mmレンズの画角54度でみたらどうなるか。資料編のモンタージュ写真の右端から54度分を切り出して縦横の比率を1:1.33 に調整したのが次の写真です。橋梁の存在感がぐっと増したと思います。これがJRが景観の予測地点に入れなかった理由でしょう。橋梁のデザインを評価する場所としては可ですが景観としては事業者側としてはハテナな地点なのです。
写真C
準備書を読んだ方はどこかでみた記憶がある写真と思われるかもしれません。次の写真は、上の航空写真の B から「28mmレンズ」で、しかも逆光に近い条件で撮影されたものです。撮影距離は約300mです。橋梁の印象が上の写真よりは控えめになっていると思います。桁が太くなるピアー付近が河原の樹木に隠れてしまったこともいい塩梅だったと思います。
写真D 「天竜川右岸堤防」(準備書より。こちらの地点については、もう200m近づいて撮影したとしたらと逆のことも予想できるのではないでしょうか。)
JR東海は「天竜川橋梁のフォトモンタージュ地点は天竜川左岸堤防道路の突当りに位置しており・・・主要な眺望点ではありません」といっていますが、「日常的な視点場」ではあるわけです。「天竜川右岸堤防」は「日常的な視点場」として評価対象になっています。A と B は天竜川橋梁をはさんで対称に近い位置にあります。風景もよく似ています。住民による利用状況も良く似ています。
天竜川橋梁の景観に対する影響の評価を判断するフォトモンタージュとしては、写真Cがなんとか及第といえるかもしれません。もちろん評価は見た人の判断によりますから、景観として問題がないという意味ではありません。判断材料として、どうにか使えるかもしれない写真という意味です。
写真Bの航空写真の 青い矢印の区間は阿島橋で下流側に車道より一段高くなった歩道橋があって天竜川橋梁方向の眺望が非常に良い場所。そして、黄色い矢印の区間は堤防の上からやはり天竜川橋梁の全体が見渡せる場所です。たとえば、右側の青い矢印のそばの阿島橋の東詰めから見ると天竜川橋梁の幅は大体46度ですから54度の35mmレンズの画角に収めるにはちょうど良いはず。距離的は550~750mです。なぜこっちのほうの視点は採用しなかったのか。(関連ページ)
(2014/04/18)