更新:2018/05/02

"リニア 27年開業「黄信号」" じつはアウト

 『信濃毎日新聞』(信毎)の5月1日が、2面~3面にわたって、"リニア 27年開業「黄信号」" という見出しの記事をのせました。2面は、静岡県で大井川の水量がトンネル掘削によって減少することへの対策で静岡県とJR東海との間で協定が結べずにいたのに、JR東海が大成建設と工事契約を結んだことで、静岡県が態度を硬化してることが書いてあります。静岡県はトンネル湧水の全量を大井川に戻すとJR東海がいわないかぎり協定は結べないと言っているそうです。

もう、アウト!

 3面では、長野県内、大鹿村でのトンネル掘削工事の進み具合について書いています。工事が全体的に遅れているのは、私たちが見ても明らか。例えば、トンネル掘削をしている現場の方に、進み具合を聞くと、10年あれば掘れますよと言っています。記事によれば、トンネルの本坑の掘削は2024年までには済んでいるはずです。4年間、工事が長引く可能性があります。『信毎』は「黄信号」と書いていますが、実際にはもうアウトですね。

 小渋川斜坑口の写真がのっています。『信毎』の写真では工事ヤードの隣の残土仮置き場の様子が良く分かりません。仮置き場は将来はリニアの変電所ができる場所です。2月3日と4月11日に撮影した写真が手元にあるので紹介します。

大鹿村大河原の小渋川斜坑口そばの残土仮置き場

2月3日。残土の山に雪がつもっています。


4月11日

 このこの位置から見るかぎり、2か月間で残土の量はほとんど同じに見えます。つまり斜坑を4~500m掘ってそれ以上はほとんど進んでいないのではないかと思います。残土の置き場がなければ、掘削は出来ません。仮置き場から移動する先もいまだに確定した場所はないので、トンネル工事は急ピッチで進めることはできません。

 『信毎』は、南アルプストンネルや伊那山地トンネルの残土の最終処分先がなかなか決まらないことについて具体的なことを書いていません。工事がなかな進まないのは、JR東海の住民への説明不足が原因のような書き方になっています。しかし、伊那谷ではトンネル残土の処理が「物理的」にできないという厳しい事実について触れるのを避けているように思えます。4月12~15日の『信濃毎日』、『神奈川新聞』、『山梨日日新聞』、『岐阜新聞』の4社の連携企画「リニアのいま 残土・環境問題」にくらべるとリニアへの批判は一歩後退の感じがする記事。

「残土処理は計画段階で真っ先に考えなければいけないはずなのに、JRは安易に考えていたのではないか」、「見切り発車で工事を始めたつけが全て回ってきている」(『信毎』4月15日)

 その表れの一つなのか、「釜沢斜坑口」について、「工事説明会時点で17年春の着工を見込んでいたが、進入路となる仮設橋の設置工事の遅れなどから、JRは今春の掘削開始を予定する」と書いています。もう初夏といっても良い5月1日掲載の記事なのですから、実際に現場を確かめて、4月28日現在掘削は行われていないとか、ようやく始まったとか、書かなければ、記事として意味がないのではありませんか。大鹿の人たちに聞くと、掘削が始まる気配はないようです。

 ここで工事が中止になって、この残土はどう処分するんですか。傷が浅い今のうち工事は中止させなければなりません。ですから、こちらを是非よろしく。


補足 2018/05/02

 大鹿村の前島さんが東京で報告をした時の様子がYoutubeで見れます。その動画のなかのスライドに小渋川斜坑口そばの残土仮置き場を、反対側から撮影した写真がありました。


"2018年2月25日リニア中央新幹線を考える~今、信州・大鹿村で起きていること~" より (13分39秒)。2月17日撮影。

 4月11日にほぼ同じ場所から撮影したのが下の写真。A、B、C の記号は上の写真とそれぞれ同じ位置です。


画面クリックで拡大

 こちら側から見ても、2月以降残土の量はほとんど変化がないように見えます。

補足 2018/05/08

 5月4日に前島さんのスライドの写真とほぼ同じ角度から撮影した写真があるので紹介します。残土の山の高さが、スライドの写真の一番高い部分、これが下流側からみて変化のない部分だと思うのですが、これと同じ高さの部分が2月に比べると5月の方が増えています。しかし、4月と5月ではほとんど変化はありません。


※ このページの背景画像は残土(トンネルズリ)です