更新:2020/11/22

妙琴原の工事現場

 飯田市の妙琴原では、中央ルプストンネルを飯田側の入り口から掘削するための工事ヤードを造っています。工事が行われているのは、JR東海が景観の主要な眺望点として環境影響評価を行った場所。工事完了後の景観も橋梁が風景にマッチしてけっこういいじゃんという内容の評価をしてるんですが、工事中はこんな感じが約10年続きます。

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2018年5月:飯田市の妙琴原。吊橋の上からリニアの橋梁予定地方向を見る。[2018-0524-9336]

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2020年10月:飯田市の妙琴原。吊橋の上から。右岸(画面左)には、リニアの中央アルプストンネルの松川工区の工事ヤード。[2020-1017-9179]

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2020年10月:トンネル坑口予定地に行くための桟橋を建設中。山側の白い囲いの向こう側はマレットゴルフ場。 [2020-1017-9182]

 左岸から見えていた、昭和レトロの松川第4発電所も見えにくくなっています。


最近のニュースから

リニア乗換駅 地元負担の建設取りやめ

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『信毎』2020年10月20日

飯田市政転換 16年ぶりトップ交代
市民との「対話」やJRと向き合った先に

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『信毎』2020年10月22日

名駅巨大ビル着工延期へ

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『中日』2020年11月7日

JR東海の見通し下げ

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『中日』2020年11月7日

JR東海 初の通期赤字

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『中日』2020年10月29日

JR東日本の社長、会長を歴任した山之内秀一郎さん(1933~2008年)の言葉

鉄道においては、スピードばかりを競うような考え方はだめだし、そんな思想の技術者もだめだ
赤字経営に悩まされ続けて、ついに分割民営化した国鉄時代の苦い教訓からすると、鉄道事業において、公共事業みたいに巨額の設備投資による借金を抱えつつの経営は企業を倒産に追い込んでしまう(2000年の発言)

中間駅の位置は誰が決めたのか?

 「飯田市」は、もともと飯田線の飯田駅への併設を希望していました。

 2011年8月に、JR東海が公表した駅の位置は、「高森町東南部~飯田市座光寺」でした。ルートは3㎞幅、駅位置は5㎞直径の範囲で示していました。

 その後、9月7日に、リニア中央新幹線建設促進飯伊地区期成同盟会(会長は飯田市長)は、JR東海に水源回避とリニア駅の飯田駅併設を求めています。9月14日、飯田市長はJR飯田駅への併設断念を表明。2013年5月1日に、『南信州』は「リニア県内駅、元善光寺駅以西で調整」と報道。2013年9月18日に、環境影響評価準備書とともに公表された駅の位置は、飯田市内、上郷地区飯沼の北条でした。

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2013年11月:リニア駅のできる上郷北条。用地取得はほとんど進んでいない。[2013-1102-2604]

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2014年9月:飯田市がリニア路線を移動させたのが原因で、20数年前に飯田市が分譲した住宅団地で20戸が移転対象に。


駅周辺の北条地区の住民の方たちの声

(10月の市長選挙選挙以前の聞き取りです)

○ 自分の土地が計画にかかると知った時召集令状がきたようなものと思った。駅の位置がだんだん北条の方へ来た経緯のなかで、住民に何の相談もなかった。父親と叔父が応召して戦死している。そんな点を考えるとこういう公共事業は戦争のようなものだという感じがして仕方がない。
○ 重点区域は将来計画が描けない。場所が狭い。具体的に計画もあったが誰ものってこなかった。何もやろうとしないので、地主さんは、業を煮やして、しかたなく、マンションを建てることにしたんだろうと思う。
○ 駅周辺整備の範囲に、自宅、田畑、3棟のマンションの全部が入っている。行き場がない。私のマンション3つ全部をひっかけて道路にするという一方で重点協議区域にマンションができるという。誰がそんなことに賛成できるだろうか。
○ 以前の公共事業での土地の収用価格より安い。同じような条件の代替地の値段が現在坪9~13万。ところが、手放す土地の価格は坪9~10万円。これでは、借金するか、貯金を取り崩すか、アパート暮らしとか古屋を探すしかない。あるいは、土地の安い地域へ移転するかだ。あきらめている人が多いのではないか。飯田市の部長によれば、JR東海の指導がそうとうはいっているらしい。
○ 県道拡幅関連の移転対象の高齢者で飯田市や県と交渉を続けてきた人がいる。土地を買ったときより、今回手放す価格の方が安い。早く話を進めて欲しいと望んでいるが、担当者は予算がないという。それでは困ると言うと、他地域で県道の予算が余るので、それまで待ってほしいという。そんなことで事業ができるのか。もう少し腰を据えてやるべきと思う。移転したくてもできない。
○ 県道の拡幅はリニア以前から懸案だった。関連で移転対象だが、80過ぎて体も衰えてきている。工事をやるなら、健康なうちに早くやってほしい。移転したとしても建てた家にいく年住めるか分からない。
○ 覚悟を決め立ち退きを始めた人もいる。その人たちが途中で放り出されるようなことにならないよう、飯田市は、手を付けたところはちゃんとやってほしい。土地の値段や立ち退きの条件について当事者の声をしっかり聞いてほしい。
○ 駅前整備に6.5ヘクタールが必要とは思えない。もっとコンパクトで良いはずというが飯田市は必要だという。国の補助があるのかどうなのか、質問状をだしたが、そういう説明もはっきりしてくれない。6.5ヘクタール使っても、広場を5つも造るという。広場って結局は空き地だ。東京からの急ぎの客が広場で交流したりしているはずがない。降りたらすぐにどこかに飛んでいくというのがリニアの客だ。考え方がおかしい。
○ 1日の利用者6800人の根拠を示せといっても、説明できていない。駐車場の台数も750台から500台に減らしている。根拠が示せない駅周辺整備計画のために一生懸命生きて来た住民を追い出そうとしている。この計画そのものを止めてもらいたい。どこでも駅前計画は破綻している。市財政が悪化したところがそこらにある。駅周辺整備の費用は飯田市が出す。JR東海ではない。リニアができなければ飯田市は破産だ。
(参考’:別のある推測の方法では1日の利用客は約3400人。他地域で地域独自の推測とこの推測方法とで倍も差があったところはない。)
○ 飯田線の乗換新駅で1500人の利用があると想定しているが、そんなことはあり得ないと思うし。高校生の通学利用以外は乗車は非常に少ない。また専門家は、河川の上の勾配部分で安全上問題があると指摘している。
○ 長野県の建設事務所は中央高速のスマートインターからリニア駅までの道路を造る関連で、長野県の建設事務所は、私の所有する林のヒノキに無断で調査のためのカメラを取り付けた。抗議をしても、電話で申し訳ないという程度。また、県道拡幅で測量もさせたが、所有する不動産物件の評価について、その結果を出してこない。これでは協力などできない。
○ 静岡のことが随分新聞で報道されている。信濃毎日もしばしば取材にきてくれるが、駅周辺整備の問題もしっかり報道して欲しい。
○ 世界や日本の経済がコロナウイルスの感染拡大で大変な状況になっているし、人口減少社会に向かっている。株主総会でも批判があったようだが、この時期に、リニア新幹線を進めることに、不安や疑問を感じる。すでに上海のリニアは最高速度を引き下げて運転しているという。速いだけが取り柄のコンコルドも経済的に失敗した。いまでは海外ともスカイプなどで顔をみながら対話ができる。これからの時代にリニアが本当にいるのか。
○ リニア計画は少なくとも数年延びるだろうし、中止の可能性もある。この話が始まって8年、生活が脅かされてオドオドして暮らしてきた。飯田市長はどんどん進めようとしているが、まだやるのか、もうやらないのか、このあたりで住民が納得するような方針を出してもらいたい。協力しかけて中途半端になっている移転者の面倒を最後まで見ること。嫌だという人には、きちんとした説明をして、今後どうするかということについて、きちんとした方針を示すべきだというのが皆の意見だ。
○ 風越山トンネルの坑口付近は、急傾斜危険区域で、工事による災害が心配。新戸川は、飯田線の築堤の暗渠を流れている。この沢の防災対策はまだ不十分。JR東海でも長野県でもよい、とにかく対策をしないと、大きな災害がおきないか心配だ。シールド工法へ変更で、残土を運ぶベルトコンベア用のトンネルを崩壊の危険のある山に掘るという。風越山トンネルだって本当に掘れるのかどうか。

 駅周辺で必ず聞かされる話は、飯田市長は説明会に2度きたが、1度は、30秒だか3分いただけで、会議があるからと中座したと。この時は、全国市長会議が東京であって、その日は東京から戻ってきて、ちょっと顔を出して、またすぐに、東京へ戻ったと。その市長が、移転者の最後の一人まで寄り添うという。

 当初の予定では、駅部や路線の用地取得は2019年度の第2四半期に完了していたはず。しかし、用地取得はほとんど進んでいないし、工事は2018年度の第3四半期から始まっていたはずが、何も行われていません。


リニア駅の利用客 1日6800人はおかしい?

 中間駅の周辺整備計画について、利用客が1日6800人という数字が、多すぎるのではという声があります。飯田市は、「一般財団法人 計量計画研究所」の推計を基にしています。「地方公共団体における地球温暖化対策実行計画等の実施に伴う環境・経済・社会への影響分析(神戸大学・小池淳司)」は「交通モデルを用いたリニア新幹線各駅の乗降客数の予測値」として、3418人という数字を出しています。図のように、各県の推測した数字を比較すると、飯田駅だけが極端に数字が違っており、6800人という数字はやはりあてにならないといえます。

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風越山トンネル。市街地の地下を通過、陥没や地盤沈下の心配は?

 風越山トンネルは中間駅の西の端から松川までの間、市街地の地下を走ります。もともと座光寺唐沢地区の土曽川斜坑と、黒田斜坑口からNATM工法で掘削の予定でした。しかし、東側3300mについて水資源への影響の少ないといわれるシールド工法に変更になりました。シールド工法では本坑口から残土が出てくるので、その搬出が問題。ダンプカーで運び出すルートがありません。そこで口径の小さなトンネルを本坑口付近から土曽川斜坑ヤードの位置まで掘って、ベルトコンベアを設置して搬出する予定。しかし、このトンネルを掘る山の斜面は崩壊の危険があるとされています。

 シールドでもNATMでも人の住んでいる地域の地下の工事で地盤沈下や陥没事故は起きています。風越山トンネルを担当する運輸機構は、中野市でおきた北陸新幹線の高丘トンネルによる地盤沈下について「トンネル工事で建物に影響が及ぶのは珍しいことではない。」といっています。ならば、市街地に掘るのですから、黒田地区の住民に丁寧な説明と個別の地主さんの了解を得ることが必要なはず。とくに北条側の入り口付近については心配する声が。

2027年開業に間に合わない

 この風越山トンネルについて、鉄道運輸機構の2020年度発注見通しにのっています。それによれば、「入札予定あるいは契約予定時期」は20年度の第4四半期。工期は80か月(6年と8か月)です。2021年4月から工事を始めたとして、工期のお終いは2027年年末になってしまいます。


そもそも無理だった超電導リニア

現実は空想より現実的

 ドイツが開発したトランスラピッド(上海のリニアモータカー)は、運行最高速度が時速500㎞。高速性能はJR東海のリニアとほぼ同じです。さらにカーブに強く、乗客の乗降りも簡単。実用化したのが1980年代後半、上海の開業が2004年。磁気浮上式鉄道の開発競争で国鉄・JR東海が負けたのは明らか。しかし、磁気浮上鉄道として優れた特徴のあるトランスラピッドもドイツ国内ではついに採用されず、ドイツは開発も止めました。

 磁気浮上式鉄道には昔から、重い列車を持ち上げて走らせるのはエネルギーが余計にいるとか、分岐装置が複雑で高価なため複数の列車を効率よく運行するのに向いていない、ネットワークを広げられないなどの批判がありました。建設コストが鉄道より大という点も。浮上式鉄道は超高速以外に利点はなく、大量輸送機関としては欠点の方が多い。

 とくに、超電導リニアでは、鉄道の車輪の役割をする超電導磁石の信頼性が、鉄の車輪と比べて非常に劣るのです。例えば、希少な液体ヘリウムがなければ走れません。また突然磁力が無くなるクエンチ現象、冷凍機の故障でアウトなど、鉄の車輪ではあり得ないことです。強力な磁界の影響をさけるための複雑な乗降装置や、磁気シールドが必要。ほとんど直線しか走れない。補助車輪が必要など多くの欠点があります。

 温暖化対策が重要な課題の今、スピードよりは省エネルギーが最優先という現実的な考えが広がっています。ヨーロッパではすでにリニアモーターカーは「過去の人」。現実は想像の世界より現実的です。ヨーロッパの最新の高速鉄道車両は最高速度は時速250㎞どまり。もう超電導リニアに出る幕はない

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『日経』2018年9月22日

イノトランスの開幕イベントでは仏アルストムのアンリ・プパール=ラファルジェ最高経営責任者(CEO)が「もはや最高速度などは誰も口にしない。どれほどクリーンな電車を出せるかが重要だ」と強調した。(『日本経済新聞』2018年9月22日 "鉄道車両も環境シフト 独シーメンスや仏アルストム 蓄電池駆動や水素燃料")

注:イノトランスは偶数年に、ベルリンで開催される世界最大の国際鉄道技術見本市。仏アルストムは鉄道車両製造会社。


第二の中津川線?

リニアの構造物

駅はできたけれど、電車(リニア)は来ないなんてことになったらどうする

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(「飯田・リニア駅前空間デザインノート」よりコラージュ)。「大事な土地を提供するのに何ができるのかと思ったら空き地ばっかじゃないか」

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環境影響評価書で示された喬木村阿島付近のリニアの高架橋のフォトモンタージュ。視点は喬木村の「アルプスの丘公園」。

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環境影響評価書で示された天竜川の橋梁のフォトモンタージュ。視点は天竜川右岸堤防の高森と座光寺の境界付近

コロナ禍
気候温暖化
社会のありようが変化

アットいうまにJR東海は赤字
7月豪雨被災で工事中断の南アトンネル
大井川の水問題は決着できない
技術的な信頼性がない超電導リニア

成功する可能性はゼロ

さて、頓挫したらどうする

伊那谷の悲願、千載一遇のチャンスと煽ってきた人たちどうするのか
煽られてきた私たちは・・・

高架橋、トンネル、橋りょう、
駅、駅前開発、
中電のリニア用変電所や送電線
残土の山 ・・・

のこされた数々の構造物をどうするの

第二の中津川線

頓挫するまで待つのか、止めさせるのか

※ 若い方のために:中津川線は飯田駅と中央線の中津川駅を結ぶ約36kmの路線。飯田・下呂線とも。1966年に工事実施計画が承認。1973年に事実上工事が中断、1980年に凍結。飯田市山本の二ツ山付近にトンネル、橋梁の橋台・橋脚、路盤などが残されています(下の写真)。

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