更新:2020/12/05、2020/12/06 でもね…

「リニア走行試験装置」の公開

 12月4日、JR東海は、小牧市の研究施設内に設置された「リニア走行試験装置」を報道陣に公開しました。

 『信毎』によれば、この日は実験線の直線区間を走る状況が再現され、約4センチ浮上した車両が細かく揺れ動いていた。

 当サイトでは、ガイドウェイと車体の左右の隙間は、3.5cm+4㎝=7.5cm ずつと指摘してきました。まあ上下は10㎝なんだろうなと思っていましたが、実験台とはいえ4センチしか浮いていないということは、ストッパー車輪の3.5cm分をはぶいたとすれば、上下方向も10㎝ではなく7.5cmということなのかも。とすれば不当表示ですね。1cm浮上の上海のリニアより、10㎝浮いてるから安全なんて言えないですね。

 そして、細かく揺れていたという記者さんの観察。『乗り物ニュース』は次のように書いています

「リニア走行試験装置」によるテストの様子を取材したところ、車両が浮き上がり(今回は約4cm)、様々に細かく揺れる姿が見られました。実車体の振動を元に、リアルタイムに計算。揺れを再現しているそうです

 実際の路線のガイドウエイには浮上用コイルが並んでいるわけです。鉄のレールのようになめらかに連続したものではなくて、規則正しい凸凹道を走るようなもので、台車は常に振動しています。時速500㎞で309ヘルツ(1秒間に309回揺れる)だそうです(*)。それを動いていない車体で再現するためには車体を揺らさなければならないわけです。つまりこの装置は振動を加える実験装置です。

* JR東海の担当者の説明では、JR東海のリニア開発本部 本部長の寺井元昭さんは「高速な超電導リニアには、新幹線にはない高周波の振動もあります。それらを減らして、東海道新幹線の乗り心地に近づけたいです」と話します。 というふうになります。

 乗り心地を改善できるとすれば、サスペンションとか座席の改良しかないということでしょうね。記事も書いています。:

まず「乗り心地向上確認試験」。磁力で車両を浮上させ、走行時の揺れを再現。車両に搭載されたクッション(空気バネ、ダンパーなど)の設定を変化させて乗り心地を確認するそうです。

 超伝導磁石がクエンチを起こす原因に振動の問題があったそうです。最近はほとんど起こしていないそうですが、超電導磁石は振動に敏感という性質もあるのでしょう。

 地震の揺れへの対応よりは、たぶんこっち、乗り心地の改善が主題の実験装置だと思います。車体に何かの改良とか変更があると、共振を起こす部分も出てくるはずで、そういう場合にもこの実験装置が役立つのだろうと思います。

 こんな装置を公開したのは、JR東海が揺れや振動の問題の解決に難渋していること、技術的にとても完成には程遠いことを、公表したいのではないかと勘繰ってしまいますね。揺れの問題は、ドイツが超電導方式の採用を止めた理由の一つです。

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追加情報

でもね・・・

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『SankeiNews』2020年12月4日(動画)より

 でもね、振動を加えるためにどうやっているのか? ガイドウェイ側のコイル(常電導、"加振コイル")に、電流を外部から流しているはずです。そして、流す電流をコントロールしてコイルに生じる磁力を変化させます。そうすれば、車体側の超電導磁石(作用は永久磁石と同じ)との間で振動を起こしながら浮上させることができるという仕組みなのだろうと推察できます。

 ということは、結局、停止状態でも浮上できる、原理的には、反発力と吸引力の違いはあっても、常電導の吸引磁気浮上方式(トランスラピッド方式)とほぼ同じ仕組み。トランスラピッドは営業路線向けの試験車両を1983年に製造しましました。基本原理は1935年に開発していました。しかも、吸引磁気浮上方式なら電流を流すコイルの相手は鉄で良いわけです。超電導磁石のようなややこしいものじゃなくても。

 常電導より優れているはずの超電導が、欠点を解決するための実験装置で常電導とほとんど類似の仕組みを使っている。50年もかけて、何をしてたのか、まったくバカみたいな話です。と思います。

 『メーテレニュース』の動画 "リニアの走行再現、試験装置を公開 試験車両が4センチほど浮上 (20/12/04 17:00)" を見ると、これは実験線の走行状況を再現しているということなんですが、かなり揺れていることがわかります。

 体験乗車した人たちが、報道関係者も含め、乗り心地は良かったとか、揺れは感じなかったという場合、座席に座って体で感じた揺れだと思うのです。それは、しかし、そのまま車体の揺れではないはず。乗り心地が良くなるように設計された座席に座った状態での印象。動画で車内の壁面など車体に固定されて部分の揺れ方を見ると大丈夫かなと思う場面がありますね。たとえば、画面の手前のほうと、奥の方の揺れ方が反対方向になることがけっこうありますが、これは車体が水平方向で左右にねじれるように揺れている(ヨーイング)している状況だと思います。ガイドウエイとの隙間は見かけ 7.5cm 実質 4㎝ しかないのですよ。

 車外で見ると、『メーテレニュース』のような状況になっているわけです。