再検討:妙琴原(みょうきんばら、飯田市)
まず、予測地点の名前について。JR東海は準備書で「風越公園」といっています。写真そのものをみれば妙琴原と風越プールの間の妙琴橋から撮られたことはすぐわかります。地元の住民は普通はこの周辺のことを妙琴原とか大休(おおやすみ)、あるいは風越プールと言っています(風越プールは松川第4発電所の貯水池)。おそらく、住民としては、「風越公園」というのは、そういわれてみればと思い出すのが、JR飯田線の桜町駅近くの飯田風越高校の以前あった場所、飯田警察署の西北、県創造館につづく公園のことです(地図) (飯田市のページ、長野県のページ)。実は googleマップ で調べて見ると、妙琴橋の東南に妙琴公園という名前が記入されています(地図)。飯田市の「平成16年度実績評価 事務事業進行管理表」(PDF)という2005年11月5日に印刷された文書に次のように書いてあります。
本公園はS48年風致公園として計画決定され、平成8年度に全体エリアの基本計画を策定、平成12年度マレットゴルフ場のトイレ整備、平成13、14年度はマレットゴルフ場の排水、路面整備、林間整備、平成15年度キャンプ場トイレの整備を行った。平成17年度までにキャンプ場施設の整備計画を作成をし、平成18年度以降に松川の清流を生かした自然公園として、キャンプ場施設及び周辺の整備をおこなう。
風越高校が現在地に移ったのは昭和51年8月。飯田創造館が完成したのが昭和54年12月。風越高校の跡地をどうするかという論議は妙琴原周辺が公園として整備される計画が決まった48年より3年あと。行政というのは何をやっていたのでしょうか。住民の間では、慣れていること、事実としてあることのほうが定着しているので問題はないといえますが、JR東海が、この場所に「風越公園」という名前を使ったのは、地元の住民とコミュニケーションを考えてこなかったあらわれだと思います。行政に受けが良かろうとも、住民は笑ってしまいます。だいたい「飯田市松川の妙琴橋」という的確で、さしさわりのない言いかたに思い当たらないとは間抜けすぎると思います。でとにかく撮影位置は下の写真です。
写真A。
位置の選択肢はほとんどありません。橋のほぼ真ん中から撮影したと推定できました。カメラの左に見える赤い金具の位置が吊橋の中央です。画面左が松川の上流です。準備書には、この場所については、実は2枚の写真が掲載されています。1枚は本編の景観の変化の予測の部分、もう一枚は資料編で橋梁や高架橋のデザインを説明した部分です。
準備書本編の現況の写真
改変後はこれ。(参考:下の写真と比べて橋梁の存在感が増しているのがわかると思います。28mmと35mmの違いです。実は、JR東海さんは、デザイン的には可なのに景観としてはちょっとねという例を示しているわけです。天竜川橋梁と逆のことをやっているわけです。)
資料編
この2枚の写真をよく比較して見ると元は同じ写真であることがわかります。水面の白い泡立ちに注目。
重要な訂正
この2枚の写真は非常によく似ています。再度検討した結果別の写真と判明しました。撮影位置はまったく同じと判断できます。しかし遠方の雲の形がわずか変化しているので撮影時刻に時間差があります。おそらく三脚に据えたカメラのレンズの焦点距離を変えて撮影されたと思います。よって、準備書本編の写真がトリミングされて作成されたという記述は間違っていました。以下、一部を書き直しました。古い記述はこちら(2014/09/04)
写真Aの場所から28mm相当レンズで撮影したのが次の写真。
写真C。28mm相当で撮影。準備書資料編の写真の左下すみの赤いものはワイヤーの金具です。資料編の写真は明らかに28mm相当レンズで撮影されたものです。本編の写真は同じ場所でレンズの焦点距離を変えて撮影されたもので、水平方向の画角は約51度になっています(35mmレンズの画角は54度)。したがって本編の写真は35mmレンズで撮影することが可能です。
この場所について、カッコつきの「飯田市民」は工事中の環境影響について考えていないように思います。松川橋梁を工事したり、木曽方面へのトンネルの工事のための仮設道路はこの写真に写っている河原の中を必ず通過するはずなのです。飯田市民の皆さんはそんなことを了解するんでしょうか。大鹿村の上蔵の斜坑口や小渋川の橋梁への工事用仮設道路とスケールは違いますが地形的によく似た状況にあると思います。
「飯田市民」だけでなく周辺の住民にとってこの周辺は昔から景色の良い場所、リクレーションの場所として有名でした。学校の遠足で訪れた人も多いはずです。写真の右手、妙琴橋を渡ったすぐ下流にある六地蔵は1931年に当時の下伊那郡松尾村(現在飯田市松尾)の松尾小学校の秋の遠足の際風越プールで遭難した児童を慰霊するものです。そして飯田市の水源地でもあるわけです。
わかりにくい部分があったので書き直しました(古い文書)。2014/04/20 ⇒ 上記の理由で大きな間違いがありますので参考になりません。(2014/09/04)
訂正前
写真Aの場所から28mm相当レンズで撮影したのが次の写真。
写真C。28mm相当で撮影。準備書資料編の写真の左下すみの赤いものはワイヤーの金具です。資料編の写真は明らかに28mm相当レンズで撮影されたもので、本編の写真は周囲をトリミングした結果、水平方向の画角は約51度になっています(35mmレンズの画角は54度)。しかし、使用したレンズは、35mmではなく28mmです。
この本編の妙琴橋からの写真のように、他のどの調査地点についても同じように28mmで撮影して仕上が35mmで撮影したのと同じになるようにトリミングして調整したなら、「35mmの画角になるようにした」という意味において「35mmレンズを使用しました」ということも可能ですが、ほとんどの場所は28mmレンズで撮影したそのままで使っていたのです。35mmでも撮影できると確認した3地点も実はこういう操作がなされていた可能性がないとはいえないはずです。
長野県の環境影響評価の技術委員会に対して「35mmレンズを使用しました」と報告しているJR東海の環境保全部門の担当者は実際にアセスメント業者がどうのような過程で作業を行ったのか把握していなかったのではないかと思います。乗客の安全を担うべき企業の環境保全という「重要な役割の職員」が意外に事実というものに対して真摯でない姿勢でいることについて疑問を感じます。